第5話 純粋な心


2人は同じ小中一貫校に通い、出会ったときは千代が小2、榛は中1だった。もうまもなく、夏休みを迎えようとする7月の中旬であった。




学校の敷地内に小さな山があり、二人はいつもそこにいた。夏の厳しい日差しから逃げるにはちょうどよかったのだ。




昼下がり、榛は学校の午後の始業のチャイムと同時に現れた。

「あれー?サボりじゃん!!」

ちよは木にもたれながら読んでいた本から目を話した。




「ばーか。テストだから午前で学校は終わり。」と笑いながら言った。




「あれー?そっちこそサボりかな???」

「まあ、そんな感じ。行けない遠足の班決めなんてやってらんない。居ても、虚しくなるだけ。」

家事都合で行けなくなった遠足は意外としんどかった。




「寂しいの?」少しうつむき気味だったちよに榛は顔をのぞかせた。ちょっと待って、ち、近い。15センチぐらい?自分の顔、赤くなってる。恥ずかしい。見られたくない。

「かわいいな。妹にしたい。」

そう言って榛は、ちよの頭をなでた。




「もう行く!」

顔を見られなくなかったから、背を向けて歩いた。




妹にしたいって家族になりたいってことだよね?告白なのかな?そんなわけ無いと思っていても、どうしても期待していたかった。

その頃は、純粋過ぎるぐらい純粋だった。

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