アバターと違うね
中も茶色。建物が木造というわけではない。部分的に木で飾り付けされている。
「つまみ出されないで、よかった」
ケイの言葉に、サツキが微笑んだ。
十代前半の少女二人は、エレベーターに乗り込み、上へ向かう。
扉が開く。広いホテルだった。フロアを丸ごと貸し切っているようだ。
フロア全体が和風。少人数で泊まる部屋のほかに、大部屋がいくつもある。そのうちの一つに、ゲーム機と
靴を
「いいのか、外国から来てるのに。まあいいのか」
紫色の
ケイはフレンドを探したが、そもそも顔を知らなかった。
おろおろしているサツキ。
「ど、どうしよう」
「戦えば分かるだろ」
近くでコントローラーを握っているのは、金髪ミドルヘアのかわいい少女。
おかっぱに近い髪型。ゆったりとした服を着ている。歳は同じくらい。
「対戦しようぜ」
「うん、いいよ」
レトロファイトは、一台のゲーム機による
隣のディスプレイに映る、相手のロボット。
横目で見る。腕がミドルで、胴と
ケイは同じ
荒野に決定した。
デコイを使い、距離を取る相手。ケイは、デコイを
トラップを設置したあと、
ケイはトラップを
相手は、なぜか自分でデコイを
表情が緩むケイ。左に移動しつつデコイを使う。姿の見えない銀色の相手に、
お互いに
2戦続いた、読み合いと差し合い。かろうじてケイが
「マジかよ。こんな子だったなんてな」
ケイの読みは外れていたようだ。自分の名前を告げる前に、相手が言う。
「アバターと違うね」
「ナイナ。
ケイは
「そっちの子は?」
「わたしは、
緊張した様子でサツキが答えた。
近くで見ていた
「おれとも戦おうぜ」
髪はかなり短い。体格も相まって、スポーツ選手のような
「いや。お前、フリードリヒだろ。イケメン的に考えて」
ケイが
「何で気付かれるかな。アバターはあんまり似てない、と思うがな」
「す、すごかったです。マントみたいなのを、びゅーん、ってかわして。最後当たっちゃったけど、すごいです!」
サツキがよく分からない言葉で、フリードリヒを
「ああ、ケイの隣でおれの戦いを見ていたのか。格好悪いな」
男性は
ウェーブした髪の色っぽい女性が、部屋に入ってきた。薄着で肌の露出が多い。
「ケイがいるって聞いたけど。どこ?」
「ここだよ」
ナイナが答えた。指差してはいない。
「
ウェーブした髪の女性は悩んだ。黙っているケイとサツキ。
悩んだあとで、色っぽい女性が選択する。
「こっち!」
「ちょ、ちょっと」
いきなり抱きしめられたケイは、全力で照れた。
「この反応。当たったみたいね。私はエリシャ。ドリルを使っている、って言ったほうが分かりやすいかな?」
「ど、どうも。ケイです。よろしく」
ケイは、たじろいでいた。優しい表情のフリードリヒが
「もう、全員集まったのか?」
「まだだよ」
ナイナが
実は、他のフレンド同士を
みんな実力者なので、元々知っている者同士の場合も多々あったが。
「ダニオは、のんきに観光しているみたいよ。せっかくケイが来てくれたのに。もう」
エリシャは、言ったあとで
「わたしは
サツキは緊張していた。そして、エリシャに抱きしめられた。
レトロファイトの対戦がおこなわれた。
ナイナとエリシャが戦っている後ろで、ケイたちは好き勝手なことを話して、笑った。
気付けば、部屋に誰かが入ってきていた。
金髪ロングヘアで、つり目の少女。
おたがいに歳が近い。近付くケイ。
「対戦しようぜ」
金髪ロングヘアの少女は、もじもじしながら頷いた。
隣のディスプレイに映る相手の
腕がミドルで、胴と
ケイは、同じ装備を選択した。
試合開始。平原。
ケイが間合いを詰めた。相手も一気に接近してきた。
相手のナイフ
お互いに、
かろうじて、白い相手を
2戦目。
ノーガードの殴り合いになり、
「こんな可愛い子が、何でこんな戦いかたしてるんだよ。キャロルか。また読み間違えた」
ケイは、勝負に負けたような
「……ありがとう」
つり目の少女は、
「今、着いたのか? おれのライバルが、こんなに
フリードリヒが、
対戦が終わり、全員が、キャロルに自己紹介。
それから、キャロルとフリードリヒが対戦する、みんなで見ながら騒いだ。
ほかの人同士でも対戦を重ねる。
お昼になり、ホテル内のレストランで昼食をとることになった。
エレベーターで下に向かう。
テーブルと椅子がありながらも、和風な装いの場所に着いた。
六人とも和風の食事を選ぶ。
ゲームの話で盛り上がっていると、
背はあまり高くない。すこしふっくらとしている。
「残念だよ。桜の季節は、もう過ぎていたんだね」
「ちょっとダニオ。どこまで行っていたのよ。もうお昼よ」
エリシャが言った。
ダニオは、お
エリシャはそれをスルー。ケイとサツキと、キャロルが紹介される。
昼食が終わり、ケイは歯磨きをした。
和風の大部屋に戻った
細身でスーツ姿。
「おや。ケイさんというのは、もしかして、そこのお
「それが違うのさ。驚くなよ?」
フリードリヒは
「冗談ですよ。長い黒髪の、あなたですね。私はジョフロワです。よろしくお願いします」
ジョフロワは、微笑んで軽く
初対面の人同士で
サツキも対戦に参加。
元気のいい声を出して、かわいがられることになる。
ケイは、対戦を見ながら楽しそうに表情を
「もう、みんな集まってたんだね。いい盛り上がりじゃないか」
部屋に入ってきた金髪ショートヘアの女性が、嬉しそうな声を上げた。美しい笑顔。
きっちりとした服では、しなやかな肢体を隠しきれない。
自己紹介して、ケイのライバル達が集結した。
「面白いよね、見てるだけでもさ」
さきほど到着したボニーが言った。対戦を眺めるケイは、素直に答える。
「うん。
「でもさ、この
その言葉に、ケイは
部屋の窓から、
日は大分傾いている。
対戦は終わる気配がない。切り上げることにしたケイ。
「明日は、
「ありがとうございました」
二人は、茶色の
薄い水色の建物は、地元の駅よりも大きい。列車で
「すごかったね」
「いやあ。面白かった」
マスク姿のケイは、心の底から楽しそうだ。
「明日早いから、今日は早めに寝よう」
サツキは、自分に言い聞かせるように言った。
「ああ、明日か。写真とか撮られるのかな。やっぱり」
「そうだ。もう、アバターをケイに似せてもいいんじゃない? 優勝したら、変えても意味ないでしょ」
「だから、変なフラグ建てるのやめろって。一回戦で負けたら恥ずかしいだろ」
駅を出て手を振り、お互いの帰路につく。
マスクを外して、台所に行くケイ。母親に料理の作りかたを聞く。手伝うことはなかった。
完成して、父親が戻ってきた。夕食の時間になる。
食事のあとで
歯磨きをして、お風呂に入る。出て、パジャマに着替えて、髪を乾かして。
そして、すこし背の低い少女は、ゲーム機の電源を入れなかった。
友人と通話。恥ずかしそうにしたあとで笑う。心からの笑顔だった。
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