二人で競争だよ!
東には海が見える。道に近い場所のベンチに座る、長い黒髪の少女。マスクはしていない。
近付いていく、赤いチェックのスカートをはいた少女。
リボンの付いた上着を
「どうしたの?」
ぱっちりとした目のサツキが、ベンチの隣に座った。
ケイは一瞬サツキのほうを見た。すぐに海のほうを向く。
「ごめん。急に呼び出して」
「……」
ケイが口を開く。
「話しておきたかったんだ。早いほうがいいと思って。政府は公表してないけど、小さな
サツキが何かを言う前に、ケイが続ける。
「普通の人には
ケイは、
「普通の人には問題なくても、ケイは、ケイには大問題じゃない!」
サツキが叫んだ。ケイの手を
手を見ながら呟く少女。
「だから、サツキに聞いてもらったんだよ。
「やめてよ。そんなこと言うの。ケイは
いまにも泣きそうな声。ケイの表情が変わる。
「確かに、ちょっと呼吸がつらいからって、心までつらくなってたら
途中からサツキの顔を見て、笑顔で宣言した。
サツキは、目に
「じゃぁ、わたしはケイを超える! ケイより早く何とかする!」
「
ケイが困ったような顔で口元を
「やりたいから、やるって決めたから。二人で競争だよ!」
目から
マスクをして家に戻ってきたケイは、マスクを外して台所に行く。
母親が料理を作る様子を、ただ見ていた。
仮眠をしていた父親が二階から下りてきて、いい匂いで目が覚めたと言った。
ケイが、あんまり無理しちゃ駄目だ、と言う。ツネハルは感動した様子で、リョウコに意見を求める。
母親は笑った。それを見た娘も笑って、みんなで笑った。
食事が終わっても、家族は話をしていた。いつものような、幸せな時間だった。
歯磨きと入浴が
飾り気のない、パジャマ姿のケイ。自室でレトロファイトを起動。
オンライン対戦開始。世界でポイントを
「
しばらくして、ランク19の相手が現れた。プレイヤー名はエリシャ。
ケイのロボットはミドル一式。ステージは荒野を選択。
試合開始。
相手の
「お手並み拝見だな」
ドリルを警戒するケイ。
ケイはトラップを要所で使い、相手との
「やっぱドリルはムズいだろ。
2戦目。ケイはトラップを使わなかった。
エリシャが左腕を
赤茶色の相手がビームシールドを使い、
「しまった!」
相手の左腕がヘヴィに
「なんてね」
相手の得意な
「ドリルじゃなかったらヤバかったな」
試合後の画面で、相手のアバターを見る。名前はエリシャ。ウェーブした髪の、色っぽい女性。
【ドリルすごいですね。フレンドになってください】
フレンド申請のメッセージには、何のひねりもなかった。
承認される。
【ありがとう! 当たらないけど、やめられないんだ】
メッセージを見て、ケイは声を出して笑った。フレンドは七人になった。
ジョフロワとフリードリヒに
もうすこしでランクが上がる、というところまで貯まったポイント。
現れた、ランク20の相手。プレイヤー名はダニオ。
ロボットをミドル一式に決定した、ケイ。ステージ選択は、荒野。
ダニオの
見慣れない
「冗談だろ」
相手の狙いが分かったケイ。あえて邪魔をせず、ブーストでうしろに下がった。
着地と同時に
「ゲーセンじゃないと、安定しないだろ、普通。ラグもあるっていうのに」
ケイは、何かを
邪魔をしてこないダニオ。
ケイの機体は、着地と同時に
「
心底楽しそうにケイは言った。
「相手がジャンプしてくるなんてこと、ないからな。いい練習になる」
ジャンプの合間に戦う。お
2戦目。ケイは、ダニオの着地を狙った。
攻撃がヒットすると、ヒットストップ(一瞬動きが止まる演出)がある。着地を含めた
レトロファイトでは、体感できないほど止まっている時間が短い。さらに、そのあいだもスローモーションで動く、という
ダニオは、着地のあとに
「あらかじめ攻撃を予測して、タイミングをずらしたのか」
「これも結局、読み合いだな」
ケイは嬉しそうに笑って、
あえて
戦闘終了後の画面。ダニオのアバターは、整えた
ケイは、フレンド申請のメッセージを考えている。
【すごい
すぐに
【ぼくは、いつもノリで戦っているんだ。気楽にいこう】
軽い内容に吹き出しそうになるケイ。フレンドは八人になった。
そして、ランク19になった。
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