ほめて、ほめて
ゲーム機の電源を切ったケイは、久しぶりに
SF(サイエンスフィクション)でバッドエンドの多い
そして、また次の世界が目の前に広がった。
いつのまにか、夕食の時間が
手伝わなかった。母親が料理を作るのを
両親は、微笑みながら娘を見ていた。
完成したメニューは、白菜のクリーム煮と、ポークソテー。トマトスープ。
お
「お待たせ」
「待ってないよ。たまたま早く用事が終わった、っていうか」
ケイは、言い訳をしているような口ぶりだ。
「今日も外出して疲れただろう。しっかり食べて力をつけよう」
父親は、食事を待ちきれない様子だ。母親と娘は、お互いの顔を見て
料理が盛りつけられ、ご
ケイは、自分のコップに牛乳を注ぐ。
「いただきます』
全員で言って、夕食の時間が始まる。
「サツキさんが選んだ服、可愛いわよね」
母親の言葉に、ケイは牛乳を吹き出しそうになった。
短い髪がすこし伸びている父親は、
「可愛いのは分かるんだが、
「何これ。ずっと言われる感じ? 恥ずかしいなあ」
ケイは顔を赤くしながら、食事を口に運ぶ。
「私が買ってきても着ないでしょう? また一緒にいってらっしゃい。今日の分も含めて、あとでお金を渡しておくから」
「そうだな。リョウコが選んでも
納得した様子の父親。
「あら。私はいいと思うわ。ツネハルの趣味」
母親が食いついた。
「分かったから。もう服の話は、なし。なし」
言ったあと、眉を八の字にしたケイはもぐもぐしていた。
「ごちそうさまでした」
服の話題が終わり、機嫌が直った様子のケイ。先に食べ終わった。
両親の食事を見守る。
ケイが部屋に戻ろうとしたところで、母親から服のお金を渡される。
それを受け、部屋から
歯磨きと入浴を終え、長い髪も乾かした。
ケイは、パジャマ姿でいつでも眠れる
いつもと同じく、すぐには寝ない。ゲームをプレイし始める。いつもとは違って、たまに
レトロファイトのオンライン対戦を続ける、ケイ。
ひたすら世界の相手を
アサトとマユミが、それぞれ、部屋でフレンドと戦っている表示になっている。
「追ってこい。待っているぞ」
負け続けるとポイントが減り、ランクも下がる。ランクが高くなるにつれて相手も強くなるのは必然。ちなみに、ランクは20まで。
なおも、ポイントを
寝るにはすこし早い。
いつものように起きたケイは、
台所で、朝の
いただきますと家族で
ごちそうさまのあと、
雨が降っていた。だが、ケイの心は
教室へ向かう途中で、マスクを外した。長い髪が揺れる。
「おはよう」
サツキの姿を見つけて、先に
まだ、教室の中に生徒はすくない。
ケイが席につく前に、笑顔で話を始めるサツキ。
「やったよ。ついに、ランク10になったよ。ほめて、ほめて」
ミドルヘアの少女は、すでに
「おめでとう。でも、簡単に勝てただろ?」
「頭の回転を上げると、ゲームでも有利だね」
サツキは、遠回しに
「知らないということは、それだけで、
ケイが、もっともらしいことを言った。
サツキは、ぱっちりとした目を
「できないのと、そもそも知らない、っていうのは違うってことだね。何か、いいこと言ってる」
「でも、ランクは、10あればいいって感じの
「ゲームは、全員が全部をやり込むわけじゃないから。一般的なプレイヤー用のある
「分かりやすい説明、ありがとう」
「一人用で色変えられるようになるとかも、そういうことだろうな。ランクで
ケイが話し続け、サツキは
「ふふっ」
「あれ? 何か変なこと言った?」
長い髪の少女は、困ったような顔をしていた。
「あのとき、勇気を出して話しかけてよかったなって」
サツキが告白した。
「普通に話してるように見えたけど、そうだったのか。まあ、話しかけづらいだろうからな、
ケイは
「そうだよね。話さなかったら、こんなに優しいって分からなかった」
サツキは
ケイは、お前のほうが優しいだろ、とは言わなかった。
「
雨はあがっていた。
マスクをして、サツキと一緒に門へ向かう。二人を虹が見守っていた。
「じゃあ、また明日ね」
「今日は勉強いいのか?」
「大丈夫。分からなくなったらお願い」
「分からなくならないように、分かりやすく
ケイがツッコミを入れた。
またね、と言い合う。笑顔の二人は、別の道を進んだ。
レトロファイトを起動したケイ。アサトがオンライン。ジョフロワが部屋を開いている。入室を希望し、待った。
左腕のみミドルで、他がヘヴィ。右肩に
ロボットは、いつものように灰色。ステージは平原を選択。
試合開始。ステージは荒野になった。
相手は紺色。左腕を
開幕。下がる相手。ケイは、その場でビームスナイパーライフルを構える。
ジョフロワは、すぐに
ケイがデコイを使い、
今度は、ジョフロワがビームスナイパーライフルを
ケイの操作なら
「おいおい。実戦で初めて食らったぞ」
お互いに動いているため、実戦で当てられるのは
「やっぱり、同じ
自然と笑みがこぼれる。
ジョフロワがデコイを使った。
見えない相手に向けて、ビームスナイパーライフルを
「当たれ!」
ビームはデコイを突き抜け、紺色の相手に迫る。そして、左腕に命中して
「まあ、そう簡単にはいかないな」
お互いほぼ同時に、
2戦目。ケイは、相手が動くのを待った。
相手は
直後にジョフロワがデコイを使い、
「この辺かな?」
デコイを突き抜けて、相手に迫るビーム。
「うわ。なんで、微妙なこと言ったときに当たるかな」
与えているダメージはケイのほうが上。
お
「あー、面白かった」
試合終了後の画面で、すぐにメッセージを入力する。
【十本勝負してもらってもいいですか?】
すぐにメッセージが届く。
【私でよければ、ぜひお願いします】
ケイは、戦いのあとでテンションが上がっている。
【世界にヤバイ
送ったあとに、よく分からない内容だと
【まさか、負けちゃった?】
サツキが意味を理解してくれていて、ほっとした表情になる。
【勝っちゃった。ほめて、ほめて】
ちょっと調子に乗ったケイ。
【えらい、えらい】
サツキもノリノリだったので安心した。満足そうな表情を浮かべ、ベッドに倒れ込んだ。
今日もケイは、母親が料理を作る様子を途中から見ていた。
そして、夕食の時間になった。父親はまだ戻ってきていない。
ケイと母親は夕食を食べる。合間に話して、
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