情けは無用です
まだ早かったようだ。
銀色の、レトロファイトの
ケイがマスクを外しながら、
番号は、2番と3番だった。
「もう、誰かエントリーしてるのか」
まだ、人はあまりいない。
白いフリースペースに向かう。
「きっと、すごく強い人だよ」
なぜか
「わざわざ、こんなところに遠くから来るとも思えないし。あんまり期待しないほうが」
ケイはすこし眉を下げていた。
横から、落ち着いた声の少女が話しかけてくる。きっちりとした、
「ひょっとして、サツキさんですか?」
「はい?」
と言って振り向こうとしたサツキ。かばうように、長い黒髪の少女が前に出た。
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るものだ」
もっともらしいことを言ったケイ。つり
「そうですね。私はマユミです。よろしく、サツキさん」
ケイの
「よろしくお願いします」
「あれ? 前の方がサツキさんですよね?」
マユミは、すこし首を
目の前にいるのは、長い黒髪で
「わたしでーす」
サツキはその
「あのアバター、
ケイが
「えへへ。ばれちゃった」
いたずらっ子のような表情を浮かべた、サツキ。
黙って聞いている、ショートヘアのマユミに向かって、話しかける。
「マユミさんも、変える前のアバターに似てるね。すぐ分かったよ」
「そうですか。いえ、私のことは気にせず、話を続けてください」
ケイが話に割って入る。
「何だよ。
「普段からなので、あまり気にしないでください」
目の大きさを変えることなく、マユミが答えた。
ケイは黙っている。考え込んでいたサツキが、明るい表情になって言う。
「そうだ! ケイはね、すっごく強いんだよ」
「何だよ、急に」
突然言われて、すこし
「サツキさんも強いですよね。おそらく私より。それ以上ですか」
サツキは
「きっと、一番強いよ! この大会も、すごいことになっちゃう」
「どんな戦いをするのか、ぜひ見てみたいですね」
マユミは、
ハードルを上げられたケイは、よく分からないことを話し始める。
「変なフラグ建てるのやめろよ! 相手がすごい強くて、一回戦で負けたら恥ずかしいだろ!」
すぐにサツキが大笑いして、ケイとマユミも笑顔になった。
開始10分前。
人がすくない場合は、時間ギリギリまでエントリー可能。だったが、すでに参加者が集まっていた。
ゲームセンター内にいるか確認するため、番号の呼び出しがおこなわれる。
大会内容は、八人でのトーナメント。表の左から番号順に
申し
「シャッフルなしかよ」
口を尖らせたケイに、1番のマユミが話しかける。
「よろしくお願いします」
何かを考えたあと、2番のケイは言う。
「マユミは、手加減とか嫌いなタイプだろ? って
「はい。
ショートヘアの少女は微笑んだ。
時間になり、
アーケード版で、色にこだわっている人は少ない。二人とも
ステージは荒野。マユミが選択したロボットは、全身へヴィ。ケイは全身ライト。
ヘヴィタイプの
相手が左背中のデコイを射出する。ケイは
近付こうとすると、デコイの向こうから
すでに移動していたため、細身のロボットには当たらない。
「さすが、サツキと互角っていうだけはある」
両腕の
パージにより、わずかに移動力が上がった。ブーストで、相手の
ミドル左腕の
けん制で、
マユミは操作をミスしたのか命中。右腕の
相手は攻撃できる場面にせず、
ルールは家庭用と同じ。先に二本取ったほうが勝ち。
続いて2戦目。相手の動きにミスが見られ、ケイが
「手も足も出ないとは、まさにこのことですね」
対戦後。目を
「いや、単に、操作に
ケイは、普段と変わらない様子だ。
別の
「やったよー。なんとか勝てたよ」
「当然だろ。サツキはランク12以上確実の強さだからな。と言いたいけど、ゲーセンの操作に慣れてないのによく勝ったな」
「まだ5だよ。そんなに強くないよ」
「単に、プレイ時間が少なくてポイント稼いでないだけで、ランク12相当の強さなのは間違いない。
断言して笑うケイと、一緒に笑うサツキ。それを見ていたマユミが口を開く。
「次の戦いも、楽しみですね」
ケイに向かって、ぱっちりとした目にすこし力の入る少女。
「
「へっへっへ。
長い黒髪の少女は、
表の一段上からは、順番に試合をおこなっていく。
つまり、他の選手の戦いを見ることができる。
もちろん、それ以上に、対応できるだけの実力も必要になる。
ケイとサツキが、横向きの
ステージは市街地。まばらにビルディングが建つ。中心部の開けた部分以外では、
巨大ロボットという設定なので、全長は、
サツキが選択したロボットは、全身ミドル。ケイは全身ライト。
どちらも色はグレー。
ケイは、すこし下がった相手を見て、いきなり
建物のうしろに隠れる相手。その上を直撃し、ビルディングの上部分がワイヤーフレーム状になったあとで、消えた。
レトロファイトでは、
背の高い建物の
相手が
お互いに、すこし
サツキが
ケイは見逃さない。
ケイの機体が、その上をジャンプした。すこし右に回転しながら
直後に、ミドルへと
2戦目が始まると、サツキは最初から
ケイは笑みを浮かべ、
化け物かよ。人間じゃねぇ! などと周りから声が聞こえてくる。
二人は笑顔で
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