可愛すぎかよ
ケイは、家が近いため
すこし日が
町は、あまり大きくない。高い
ほかの場所とは違い、緑がすくなく灰色が目立つ。
駅前のゲームセンター。中は銀色だった。いや、違う。
ロボットのコックピットをイメージしたような(横向きの
それは、レトロファイトのアーケード
ゲームセンターは広い。対戦用のゲーム以外も
場所ごとに色分けされていた。フリースペースは白い。
なにやら、ぶつぶつと言いながらプレイする、長い黒髪の少女がいた。
マスクをしていて、表情はよく分からない。背が低く、服はお
「グリップをしっかり握らなくても、自由に動かせて、左右5本の指でボタンを押すのか」
あっさりと、相手を倒した。
「簡単すぎる」
ケイは南東へ歩き、自宅に戻っていく。
ケイの部屋には
マスクを外し、ゲーム機の電源に手を伸ばした。スイッチは入れず、机に向かって
おもむろに台所へと歩く。
テーブルの上には二人分の料理。昨日と違って、ぶつぶつと
「夜更かししていると、背が伸びないわよ」
「うん。気を付ける」
二人は、ほぼ同時に食事を終えた。
「お父さん、今日も遅いみたい」
「風呂入る」
母親に入浴する意思を伝えた眠そうな少女は、自室でゲームを30分ほどプレイする。そのあと、
お風呂から出て、髪を
ゲーム機の電源を入れた。一人用モードをプレイする。
まぶたが閉じそうになり、コントローラーを持ちながら始まるスクワット。ケイの手にはすこし大きい入力装置が、迷いなく操作されていた。
座ったり立ったりと落ち着きがない様子で、プレイする。
ついに耐えきれなくなったようで、
大きな窓にある、白いレースのカーテンは
窓の外には小さな庭がある。
テーブルの上には和食が並ぶ。香りを楽しむこともなく、ケイは無表情で牛乳を飲んでいる。窓から大通りを
三人での朝食中。三十代の父親が、嬉しそうに言う。
「リョウコの作る
「なに言っているの、ツネハル。家族みんなで食べているから、でしょ」
母親の言葉を聞いても何も言わず、ケイは食べ続ける。
「みんなで食べたら美味い、っていうのは、言わなくても分かるだろ?」
「言わないと分かりませんよ」
聞きながら、ほぼ食べ終わった地味な服の少女。
「もう食べ終わるのか、ケイ。話したいことがあったんだが」
「ごちそうさまでした」
自室の
ケイは、アニメを
「
いつものように、
レトロファイトのオンライン対戦には、大きく分けて三つのモードがある。
勝敗で所持ポイントが変動し、一定値を超えるとランクアップ。ランクの近い者同士がマッチングしやすくなるモード。
ポイントが変動しないモード。
個人が部屋を作って
とはいえ、まだ発売直後。みんな
ケイは、ポイントが変動しないモードを選択した。
ランダムに選ばれた対戦相手。プレイヤー名はサツキ。
対戦前に、相手の装備は分からない。その代わり、戦闘中に
ステージは、すこしだけ
試合が始まると、お互いにライトタイプで武器も同じ。色も同じ灰色。
つまり、どちらも
一人用のモードをある程度進めると、ほとんどの装備を見ることができる。
ライトタイプ以外を使うためには、対戦で専用のポイントを
「初心者か?」
言葉とは
敵のロボットに動きがあった。
「ロマン、求めすぎだろ」
「楽しませてくれるんだろうな?」
攻撃せず相手の出方を
足元に向けてミサイルを
「……」
それでも様子を見る。
「はっはっは」
何かがツボに入ったケイが笑い出した。
直後、相手がミサイルを
2試合目も、相手の動きはひどいものだった。
「一人用モードをクリアしてから、オンに来いよ」
対戦が終わると相手のアバターが表示され、文章を送ることができる。
当然ながら、
画面を見つめ何か操作しようとしたとき。
「お父さんが、
母親が部屋のドアを開けた。
「ノックしてから入って、って言ってるでしょ。全く」
「
ご
椅子に座った三人が食卓を囲む。食べ終わると二人が家を出た。
ケイは右に進む。父親は逆方向に歩いていった。
まだ、
右に曲がり、門を抜ける。普段より早く学校に着いた。
マスクを外すケイ。教室には、人がほとんどいない。
席について荷物を
隣の席から、ミドルヘアの少女が声をかけてきた。
「ケイさんって、ゲーム詳しいよね?」
「お、おう」
「実は昨日、ゲームをやっていたら、すごく
少女は身を乗り出して、真剣な顔を向けた。
ケイは、
「ゲームっていっても、色々あるし。とりあえず詳しく」
「えーっと、レトロフィット? か何かなんだけど、まだ全然操作ができてないわたしを、じっと見守ってくれた人がいて」
「まあ、普通ならボッコボコだよな」
レトロファイトだろ、とはあえて言いませんでした。
「それで、何か変な操作しちゃって。自分で、こう、ぼかーん、って」
「ああ、多分、十字のボタンを移動と間違えて押しまくって、
「すごいね。今ので、分かるなんて」
「お前、サツキだろ。戦ったのは、
「え? でも、終わったあとの画面――」
「だから
信じられない様子の、ぱっちりとした目の少女。
ケイは
「2試合目は移動できてたけど、いきなりナイフはないな。エネルギー
笑顔になる、目の前の少女。
「
「そこまで、正確に覚えてる自信はないけど。というか、言いたいことあるなら言えよ」
眉を八の字にして考え込む、ミドルヘアの少女。
「えーっと。驚いて忘れちゃった」
いつの間にか教室には生徒が
少女は、あとで話をしようねと言う。ケイは同意したあとで
「そういえば、まだ名前、聞いてなかったな」
廊下側の席の少女と、隣の席のケイ。二人は座って話している。
「サツキって本名で、あのアバターの見た目はまずいだろ。
ケイが
「なるほどぉ」
「せめて、名前か見た目かどっちかを、リアルに結びつかないよう別物にしないと」
「それで、その。……ご指導のほうは、どうでしょうか」
ぱっちりとした目のサツキが、もじもじしながら見つめる。
「別にいいけど。学校終わったら、来るか? 家」
「やったー! ありがとう、ケイさん」
力一杯ケイの両手を握って、上下に振るサツキ。
「同級生なんだから、さん、とか変な
「了解であります!」
「だからさあ……」
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