学院編
第27話 アトリア学院入学試験①
今日はこれから通うことになる『アトリア学院』の入学式。
学院には家から通うか寮に入るか選べるのだが、リヒトは通学組だ。
本人は寮が良かったのだが、エミリアとノアの猛反対のあげく、どうしても寮に入るなら私達も制服を着て学院に入学すると言い張るので慌てて撤回した次第である。
新入生達はまず保護者達とは別会場に案内され、クラス分けの試験があるらしい。
初々しい学生達に混じってリヒトの姿もあった。
――クラス分けって何をやるんだろうか? 喋る帽子でも被るのかな?
くだらない事を考えつつ、指示があるまで待つ。
周りを見てみると元々の友達なのだろうか、すでにいくつかのグループが出来ているようだ。
――どうせ俺はぼっちですよ。寂しくないですよ。
と少しイジけていると、フラフラした女の子が目に入る。
――ん? あの子……大丈夫か?
次の瞬間その子が膝から崩れ落ちてしまった。
周囲がざわめく中、リヒトは素早く駆け寄ると座り込んだ女の子を支えながら
「君。大丈夫? 怪我はない?」
「は、はい! あの、えっと……」
慌てて立ち上がろうとする女の子を制すると、ちょっとごめんね。と言いながら顔を近づける。
――熱は……なさそう。眼瞼結膜が少し白いな。緊張からきた貧血か?
「少し休めば大丈夫そうだね。あんまり無理しないで深呼吸してね。」
そう言いながら離れると、女の子の顔が真っ赤だった。
「あの、その、御迷惑お掛けしました!」
勢いよく頭を下げる女の子に笑いかけながら、
「そんなに気にしないで。僕はリヒト。君の名前を聞いてもいい?」
「……リヒト……君。……私はソフィアです」
「ソフィアか。いい名前だね。新入生同士よろしくね」
そう言って手を出すと一瞬迷ったようだが、おずおずと手を握ってくれた。
「みんなと違って僕は友達がいなくて。良かったら仲良くしてくれると嬉しいな」
「はい。……私こそよろしくお願いします」
そう言ってはにかみながら笑うソフィアは華のような可愛らしさだった。
そうこうしているうちに教師と思われる人がやってきて1人ずつ名前を呼んで行く。
呼ばれた生徒は水晶のような物に手をかざし、色で属性適性、光の強さで魔力量を見ていくそうだ。
ちなみにソフィアは青色に光っていたため水属性だったらしい。
「リヒト・フォン・パイシーズ。前へ」
「はい!」
その瞬間、周囲の生徒達からざわめきが起こった。
「おい。あいつパイシーズって」「ああ。十二宮爵かよ」「この間、聖双魚勲章を貰っていたあの?」
「しかもさっき倒れた女の子を助けていたぞ」「いやーん。かっこいいー」「ねー。顔もカッコイイし。狙っちゃおうかなー」
――なんか俺って有名人? まさかな。 十二宮爵が珍しいだけだろう。
「ここに来て水晶に魔力を籠めるように」
「はい。……ちなみにどのくらいの力でですか?」
その質問に教官は笑いながら
「思いっきりでいいぞ。その方が色がはっきり出る」
「わかりました」
水晶に手をかざしながら魔力を籠めていく
――本当に思いっきりやっていいのだろうか
伺うように教官を見るとこちらを見て頷いている
――まぁいい。思いっきりやれって言われたんだ。
掌から水晶に勢いよく魔力を籠めると
「な……虹色の光だと?! しかもこの眩しさ……こんなの見たこと……」
次の瞬間、ピシッ という音と共に水晶が粉々に砕け散ってしまった。
一瞬で静かになった会場に
「……あのー。申し訳ございませんでした……まさか砕けるとは」
「いや。気にすることはない。何年かに一度はあることだ。現魔術師団長のクララ様も入学時に割っていたよ」
教官は笑いながら慰めてくれた
「それにしても凄い魔力量だな! 君の本気はクララ様並だということだぞ!」
「あの……」
「ん? どうした」
「本気を出す前に割れちゃったんですが……」
「……は?」
会場全体の沈黙が耳に痛かった。
拝啓。お母様、女神様。あなた達との特訓の日々で僕は人間を辞めていたみたいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます