椅子

僕に椅子を用意してくれた

いつかのヒーローを追いはしない

ここに傷のついた背もたれが

誰かの背中を待っている

昔は僕の背があった


心に隙間ができた時

この空白の椅子に座ってた

隣の部屋から昔の歌手がゆっくりと

遠い海の歌を歌っている

そこにはまだ行ったことがない


両手が塞がってしまう時

よく荷物を置いて腰掛けた

とめどなく流れる血が目を覚まさせ

誰の荷物だったかを

忘れた頃に思い出させた


僕に椅子を用意してくれた

いつかのヒーローを思い出して

今日はこのまま歩いていく

いつか心を埋めてくれる

優しいあなたのために


僕が用意した椅子には

今は誰も座っていない

あなたが僕に追いついて

海辺のベンチに座るまで

今は誰も座っていない

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