助手席の君

車が止まって君が飲み干したアイスティー

苦労が過ぎて転がった僕は到底

横顔を見ることもしないで

ミラーを睨む程度のものだ


手を伸ばした先の缶コーヒーに

気を挫くように吐き出た君のため息

誤魔化しの効かないシートベルトで

よじれた襟元少し直した


あの時見えたファミリーレストランを

通り過ぎたあたりから

今まで重ねた二人の時間が

風に煽られ形を変えた


天にも昇る僕のハートが

地に足ついた君の鼓動に

よそ見をしながら着地して

そこにぴったり収まった


今更気づいた新しいピアスと

誰も気に留めない歩道の子供

如何にもな僕の態度とセリフで

ピアスよ動けと祈り続けた


あの時なびいた悲しい目線を

心に留めたあたりまで

今から戻って二人の時間を

止められたらと静かに思った


あそこで止まって君の頬に

こっそり口をつけたなら

今の空気が少しでも

前に流れると僕は信じた


ピアスよ動けと祈り続けた

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