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生まれつきだと言い張る、明らかに染めたであろう長い茶髪にきらりと光るピアス。綺麗に化粧された顔は、幼さの残る同級生から一つも二つも飛び抜けて見える。

 可愛いけれど近寄りがたい。というか出来れば関わりたくない。変ないちゃもんとかつけられたくない。っていうかむしろ相手にもされないかもしれない。

そんな誰よりも距離のある同級生がそこにいた。

 なんでこんな時間に、こんな場所で。

 そんなこと僕も同じようなもんだけれど、なんて思いながら無意識に存在を消す。

 別に悪いことをしているわけじゃないし、ただ自分の教室、自分の机で放課後に本を読んでいるだけなのだからどうってことない筈なのに、なぜだろう、ここに居ることがばれない様にと息をひそめてしまう。僕は小心者なのだ。

 ちらり。

 横目で三木さんを見てみる。幸い僕の事には気づいていないようだ。ぼうっとした顔で手すりに肘をついて外を眺めている。

三木さん、スカート短いな。外、何見てるんだろう。

 っていうか、僕どうやって帰ろうかな。このまま席を立つのもなぁ。

 ん~、と横目で三木さんを警戒しながら帰宅方法を思案する。

 やっぱり無言で席を立った方がいいのかな。それとも声を掛けた方がいいかな。でもなぁ、声かけて無視されるのも辛いし、でも無言で帰るのはなんだかなぁ~。でも居たことに気付いてないって感じで席を立つのならありかも…。

 よし、これで行こうと腰を浮かした瞬間、ゴウッ、と一際強い風が吹いた。カーテンが大きく靡く、それから

「あ」

 とたんにガタンゴトンと大きな音。僕が持っていた本とスマホ、それから鞄を落とした音らしいが、それがそうなのだと分からなかった。

 僕の頭の中はそんなことの入る隙間などなかったから。

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