№383
私たちは何もしてないんです。だから、何でこんなことになったのか・・・・・・。
――そう話す目尾さんには娘が一人いるという。
10年前くらい前、その頃娘は小学生の3,4年生だったと思います。その日は休みで、朝から娘は居間で宿題をしていました。私それを横目に家事をしていました。数日雨が続いていたのでようやく晴れたこの日に溜まった洗濯物を洗いきってしまおうと張り切っていました。
洗濯物を選別していたら娘のスカートに目が行きました。汚れている。何の汚れだろうとじっと目をこらしました。それが血液だと分かると怒りでめまいを起こしそうになりました。すぐに娘のところに行き、問い詰めました。
でも娘は否定するばかりで、生理になったことを白状しませんでした。私の中では完全に娘が嘘をついていると思ったので、きつい口調で服と下着を脱ぐように命令しました。娘は泣きながら従いました。
結局娘が生理になった証拠は見つかりませんでした。本当にまだだったんです。
夜勤だった夫が帰ってきたとき、服を着直して泣いている娘をみて驚いていましたが、私から話を聞いて微笑ましそうに笑っていました。
「まだだったから良いじゃないか。子供はずっと子供のままが良いよ」
なんて言ったんです。
私だってそうですよ。娘はずっと娘のままでいてほしい。でもいずれ大人の女になるなら、隠してほしくないって気持ちも分かるでしょう? その変化にブレーキを掛けることしか親には出来ないんですよ。
不思議なのは、そこから何度も家の中で服やカーテン、カーペットに血の跡を見つけるんです。私が見つけることも、夫が見つけることもあります。そのたびに娘を確認しますし、自分たちに怪我がないかも調べるんですが、何もないんです。
10年間、そう、10年間ずっとそうです。引っ越ししても、家をまるごとクリーニングしても、改装してもずっと。
一度夫が霊媒師という怪しいおばさんを連れてきたんです。私は不信感しかなかったんですが、霊媒師は家や部屋ではなく、まっすぐ娘を見て、話しかけました。
「あなたは、いつから、その姿なの?」
って。信じてもらえないかも知れませんが、娘がずっと小学生の姿だということに私も夫もその時初めて気付いたんです。
娘は10年前と同じように人見知りして、私の後ろに隠れおばさんから身を隠そうとしていました。
いまだに生理もありません。それどころか成長というものがまったく起こらないんです。
私たちが何を言っても、娘は分からないと泣くだけです。
一体何を間違えたんでしょうか?
可愛い可愛い女の子のままでいてほしかっただけなのに。
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