№380
高校生の時にカッターレターが流行ったんですよ。
知ってます?
可愛い封筒を標的の机とか靴箱に入れるんですよ。ラブレターみたいに。それで開けたら中にカッターの刃が仕込んであって指を切るって言うトラップ。今思うとかなりヤバいけど、誰がしてるのか毎日のように誰かがもらっていました。
どこかで見ている犯人を煽るようにハサミで切っちゃう人もいれば、度胸試しに手で開ける人もいました。私ももらったことがあります。きっちり手で開けてやりましたよ。ちゃんと刃が入っている場所を手で確認して。
あんまり犯人捜しとかした記憶はないですね。教師に言いつける人もいなかったし。いつ始まったのか、なんで誰も怖がらないのか。でも、ブームが終わった瞬間は知っています。私はその場に立ち会いました。
クラスメイトの真北さんの机に、綺麗なピンク色の封筒が入っていました。真北さんは始めてもらったらしく
「もう、誰よ、入れたの!」
と口調は怒っていても顔はニコニコ笑っていました。笑顔だったものの、やっぱり怪我はしたくないのか、ハサミで封を切りました。
周りに
「逃げるなー」
とはやし立てられ
「犯人その中にいるだろー」
って返しながら、和気藹々と、ハサミを入れた瞬間、彼女の手から赤い血が滝のように流れてきたんです。一瞬で教室中阿鼻叫喚。しっかりした子が真北さんの手を高く上げて、救急車呼んで! って叫んでた。
私は血が苦手で、そのあたりで気を失ってました。
最後に見た真北さんは真っ白な顔で呆然としていた。
結局真北さんは怪我をしたわけじゃなかった。どこにも傷はなくて、近くにいた子も誰も怪我してなくて、だから一体どこから血が出てきたのか分からない。信じてもらえないかも知れないけど、手紙から出たとしか思えない。
真北さんとは特に仲が良かったわけじゃないけど、笑ってる顔が印象的な明るい子。だけど事件からしばらくして、手首を切って自殺しちゃった。幸い、一命は取り留めたけど学校に戻ってくることはなくていつの間にか転校していた。
それからもカッターレターは配られたけど、誰も開けずに捨てるようになったから、そのうち無くなった。
実は私、一回だけ嫌いな奴の机にカッターレター入れたことがある。私がもらったことあるから分かるんだけど、結構傷つくんだよね。多分皆も、真北さんももらったら傷つくけど傷ついてないふりをする。そして押し殺した気持ちを発散させるために誰かに同じ物をおくる。
不幸の手紙と同じだよね。
でも結局何でそんなのが流行ったのか分からない。
一時、真北さんがカッターレターの始まりだって噂も流れたけど、一瞬で消えた。ただの噂だし、誰が信じてるのって感じだったな。
そういえば、誰が流した噂だったんだろ。私、誰から聞いたんだっけ?
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