№318
高校生の時、謎の手紙が学校の私の机に入れられてる事がありました。週に1、2回、パソコンで打ち込んだA4の手紙が小さいくたたまれて、教科書の間に押し込められていました。内容は忠告めいた物で、予言っぽくもありました。
例えば「裏門の近くに行かない方が良い」と書いてあれば、裏門から野良犬が入ってきたり、「窓を閉めて」と書いてあるときは、蜂が入ってきたときがありました。もっと個人的なこともあり、「早く寝て」の四文字しか書いてなかったときは次の日風邪を引いて40度近く熱が上がりました。
怖くなって友達に相談したところ、放課後と早朝に見張ろう、と言うことになりました。教室は隠れるところがないので、校舎の外で教室と昇降口が見えるところの木の陰に隠れることにしました。教室は残念ながら外から見たら人がいるかいないか、外からはよく分からなかったんですが、幸い数日後の早朝、委員会で一緒の後輩が、昇降口から階段を上がっていくのをみました。後輩の教室は1階なので不自然な行動でした。
私と友達がこっそり後を付けると、ちょうど私達の教室から出てくる後輩と鉢合わせ、後輩が犯人と分かりました。
問い詰めると後輩は不思議な話を始めました。後輩の夢の中に良く私が出てくるそうです。最初に出てきたとき、私は指に包帯を巻いて泣いていたそうです。そして数日後、委員会の会議に出席したとき私は同じように包帯を巻いていました。どうしたのかと聞くと、夢を見た次の日に、私は図工で指を深めに切って怪我をしていました。
他にもそういう夢が何度かあったそうです。後輩は夢の話だし、信じてもらえるかわからないけど、また怪我をしたらなんか申し訳ないのでこっそり忠告することにした、と話しました。話し終わった頃には、肩の荷が降りたと感じたのかスッキリした表情をしていました。そして「今日の分です」と手紙を渡されました。
体の大きい人に近づかないで
と書かれていました。どういう意味か聞くと、私が体の大きな人に殴られる夢を見たそうです。
その日の掃除の時間、黒板を消していた長身の男子の振り下ろした手が、ちょうど黒板の下を掃き掃除している私の頭に当たりました。お互いの不注意で起きた事故です。が、これのことか、と私は後輩の予知夢の精度に驚いていました。
それから2週間ほど後輩から連絡はなくなりました。委員会の会議の日に会ったので聞くと、私の夢を見なくなったと。相談したのが良かったかもしれない、と後輩は嬉しそうでした。それが、後輩と話した最後です。
後輩はその日の放課後、交通事故で他界しました。
死ぬから私の夢を見なくなったのかな。
――津井さんは卒業して10年経った今でも、後輩のお墓に手を合わせに行っているそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます