№279
――布川さんはハロウィンが苦手だそうだ。
何年前かな、友達主催のハロウィンパーティー呼ばれたんです。今ほど浸透してなかったけど、知識としてはあった感じですね。だから「面白そう」と思いつつも仮装はちょっと抵抗がありました。それを友達に言うと、簡単な小道具を準備しておくからそれを身につけていいと言われました。
31日に友達の一人暮らししているマンションに行くと、友達はキッチンで料理の盛り付けをしていました。
「もうすぐ他の人が来るから、それまでに仮装しておいて」
と隣の部屋を指しました。そこに小道具を準備してあると。
私は何度かその部屋に遊びに来ていたので、間取りは把握していました。特に疑問を抱かずに引き戸を開けました。
その瞬間部屋中の電気は消え、ぽっと青い光が現れうつろな顔をした5人がうっすらと浮かび上がりました。白い顔に額から流れる血が流れています。真ん中にいた老婆がずずっと私に近づいたと思うと、白い髪を振り乱し、ねじ切るように首が落ちました。
そこで悲鳴を上げたところまでは覚えています。
気がついたら友達の部屋のベッドで寝かされていて、友達が泣き、周りに気まずそうな男女が見えました。
何があったのかというと、つまり、私はドッキリを掛けられていたそうなんです。友達の友達、バイト仲間だったそうで私も話で聞いたことがある程度、の人たちがお化けメイクをして暗闇に現れて驚かそうと待機していたそうです。でも私が想定していたよりも驚き失神してしまったため驚かした側もパニックに。幸い私は数分で目を覚ましました。
友達は何度も謝ってきましたが、怒りよりも失神してしまった恥ずかしさで早々に帰ることにしました。友達にお詫びのケーキを持たされ、男性の一人に付き添われて駅に向かいました。
気まずくて黙って歩いていましたが、ふと気になることがあり男性に聞きました。
「あのお婆さんはどうやったんですか? 人形ですか?」
マンションにいた友達の友達は4人。私が見た老婆役の人はいなかったように思えました。また、首が取れた仕掛けも分かりません。
「お婆さん?」
男性は真剣な表情になりました。見たものを話すと男性は
「あの時老婆のコスプレをした人はいないし、誰も君に近づかなかった。もちろん人形も無い」
と言うんです。不思議に思っているうちに駅に着きました。男性は
「やっぱりあそこの部屋は駄目だね」
とぼそっと言うと何故か友達の部屋に戻らず、私とは逆方向の電車に乗って行ってしまいました。
後で知ったんですが、友達のマンション、事故物件という噂がありました。私が見たものは本物だったのかもしれません。友達ですか? その後会うこともなく、そのマンションで首を吊ってしまいました。だからあの後パーティーがどうなったのかいまだに知りません。
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