怪談レポート

№２７７

「幽霊がいる部屋」って知っていますか？　SNSでちょっと話題になってたんですが。

　それはごく普通のマンションの一室で、地縛霊がいて心霊現象が起こる部屋だそうです。そこを１時間１，０００円で貸出ししているサービスが「霊がいる部屋」。私は友達と３時間借りて肝試しすることにしたんです。

　昼の１２時に指定のマンションに行くと、黒いスーツの女性が入り口で待っていました。彼女に案内されて部屋に行き、最初に間取りや備品の説明をされました。電気は使えるけど、ガスは使えない。水は出るけどお湯は出ない。家具家電は一切無い。ただ持ち込みはOK。最長で２４時間まで借りられるそうです。

　説明を聞いた後、料金を払った時点から貸出時間がスタートしました。私たちは途中で買ったお弁当を食べながら「何か出るかな」とおしゃべりしたり、写真を撮ったりして過ごしました。何も起こらず穏やかに過ごしました。一通り楽しんでおしゃべりしていたら、残り３０分くらいの頃に友人のスマホに着信がありました。

「あれ？　あんたからかかってきてるけど？」

　もちろん目の前にいる相手に私が電話を掛けるはずがありません。友達がニヤニヤしていたんで、私は友達の嘘だと思いました。つまり私を驚かせようと一芝居打ったと。

　後から聞いたんですが、友達もまた、私が何らかの方法を使ってスマホを手に持たずに電話を掛けて驚かそうと仕込んでいたと思っていたそうです。

　私が自分のスマホを手に取った途端、ぼわぼわとした変な耳鳴りがし、目眩がしました。友達もまたふらふらとしていました。

　一瞬、目をつむり、開くとそこは真っ暗でした。

「お疲れ様でした」

　女性の声がし、パチッと言う音とともに部屋の電気がつきました。女性は最初に私たちを案内してくれた人でした。

　窓の外は真っ暗でした。いつの間に寝ていたんだろう。友達を見て私はぎょっとしました。頭はボサボサで体にはさっきまで無かった擦り傷や痣だらけ、体中に泥が付いていました。友達も私を見て呆然としていました。痛みを覚え口元に手をやると、指に血が付きました。その指も泥で汚れ腕には新しい痣が出来ていました。

　そんな私たちを気にもとめず、案内の女性は私たちを部屋から追い出しました。そういえばどう考えても３時間以上使っていたのに追加料金は取られませんでしたね。

　しばらくマンションの前で立ち尽くしていた私たちでしたが、次第に正気に戻り、怒りがわいてきました。なんで私たちはこんなにボロボロなんだって。理由は分からないけどきっとあの女のせいだと。で、部屋に戻ったんですよ。女がまだいるなら文句を言ってやろうって。

　そうしたら、全然違う人が出てきて、しかもその人、ずっと住んでいたみたいでドアの隙間から見えた部屋は例の部屋とは全然違う生活感がありました。

　結局私たちは何が起こったか分からないまま泣き寝入りです。どこに相談したらいいんでしょうね。友達はSNSとかで「霊のいる部屋」の危険性を訴えようとしましたが、話題に便乗した創作と思われているようです。

――長喜田さん曰く、「霊のいる部屋」は名前や業態を変えて今もSNSに出回っているそうだ。