№275
大学生の時の体験です。
その日は朝から体が重く、風邪を引いたのかと思ったんですけど熱もないし吐き気とか頭痛とかもないし、とにかく高速バスに乗らないと行けなかったのでビタミン剤を飲んでしのいでいました。
その日は遠距離恋愛中の彼氏に会いに行くため夜行の高速バスを予約していたんです。席は結構埋まっていて、私の隣には同い年くらいの女性がいました。特に気になることも無い普通の人で、バスが出発し消灯したらスマホを見るでもなく寝てしまったようでした。私も少しでも寝て体調を回復しようと目を閉じました。
でも体がだるいしバスのシートで寝返りも打てずモヤモヤしていると、頭上の灯りがポッとつきました。サービスエリアに着いたのかと思いましたが、走行している振動は続いていました。うっすら目を開けてみると、私と隣の女性が操作できるライトだけついていたんです。
横を見ると隣の女性もライトを見つめていました。ただ起きているというか、私と一緒でライトが付いたから目が開いて、まだ完全に覚醒していない感じでした。なんでここだけ灯りが付いたんだろうとボンヤリ考えていると、突然隣の女性が
「うっ」
と呻き始めたんです。寝てたのに車酔いしたのかと焦りました。女性は首を上下に動かし、のけぞって白い首がライトに照らされ・・・・・・太い血管が浮き出たと思ったらミミズのような物が、首の皮を破って出てきたんです。
悪夢を見ているのかと思いました。うねうねと首を飛び出すミミズは彼女にも見えているようで叫ぶように口を開きガクガクと震えていました。私も声が出ずそれを見ていることしか出来ず、そこでライトが消えました。
暗闇の中で「うっ」とか「ああ」とか小さなうめき声が聞こえ、しばらくしたらバスが減速していき、サービスエリアに停まったと車内放送が入りました。車内が明るくなり再度隣を見ると彼女は目を見開いたまま固まっていました。ミミズはもういません。
その後、彼女はバスを降り戻ってきませんでした。気分が悪くなって引き返しただけと思いたいですが・・・・・・。
まあ、これだけなら夢として忘れることも出来たんですけど、私はあのミミズをまた見たんです。それが遠距離恋愛中の彼氏の家に泊まったとき。横で寝ていた彼の首から・・・・・・。
その後地元に帰ってから、私はメールで彼と別れました。もともと遠い距離を私だけが会いに行って彼から来てくれないのも不満でした。それに、彼、あの女性のようにミミズに全然気付かず、いびきをかいて寝ていたんですよね。なんか、そこに冷めちゃって。
――彼氏と別れた後、出野さんの体調不良は治ったという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます