№272
地元に結構大きな川があります。大雨とかになると氾濫する恐れがありますが、僕が生まれてからは一度もありません。
その川の河川敷は一時期ホームレスが住んでいて親や学校からは近づくなと言われていました。何年か前に行政の指導が入ったとかで現在はちょっとした公園になっています。でも「ちょっと治安が悪い場所」っていうイメージがあるので高校生になった今でもあんまり近づきません。
それが先週、友達が「あの川で変な匂いがする」っていうので同級生何人かで行ってみました。ただの異臭なら僕らも行こうとは思わなかったんですが、その友達が「良い匂い」って言うのでちょっと興味がわいて6人くらいでぞろぞろ友達が匂いをかいだ所に行ってみました。
何か草とか、逆に除草剤の匂いかと思っていたんです。でも河原でふんふんと皆で嗅いでいたら、なんとも甘い匂いが流れてきたんです。
「なんだこれ?」
鼻の穴を膨らませて嗅いでいたら一人が
「川上から流れてこないか」
と、言い出したんです。それで全員川上の方を見ました。その瞬間匂いが濃くなったんです。そして
「うわぁ!」
と一人が叫びました。そいつは真っ青な顔で川を見下ろしていました。視線を追うと、川の中から赤ん坊が這い出てきたんです。事故じゃありません。だって何人も出てくるんです。ぞろぞろと。真っ白の体でハイハイしているのにすごい早さで近づいてきました。僕たちは叫びながら走って川から離れました。
僕たちは、一番近い友達の家に向かいました。とりあえず落ち着こうと。よく遊びに行く家なので勝手を知っていて、入ってそいつの母親に挨拶して部屋に向かおうとしました。するときつい声で母親に呼び止められたんです。
驚いて全員振り返ると、何故か母親も驚いた顔をしていました。
「今、田島君、背中に赤ちゃん背負ってるように見えて・・・・・・」
もちろん田島は何も背負っていません。誰もゾッとして何も言えませんでした。
田島はその後から行方不明です。友達の一人が。田島が山の方に行くのを見たと言っていますがそれが最後です。
川下の方で何も無くても川上の方で雨が降り水位が急に上がって事故が起こることがあるそうです。あの赤ん坊は川上の方から流れてきたのかもしれません。それで田島を捕まえて、また川上・・・・・・山の方に戻ったのかもしれない。
川上の方で何があってんでしょうか?。
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