№264
女子高校生の時、グレていました。一言で言うとそうなりますが、周りにはかなり迷惑を掛けたと思います。
当時の友達は皆似たような子ばかりで、おじさんにおごってもらってデートしたり万引きしたり。お酒も飲んでましたね。美人局みたいな事をしている子もいたな。
葛野さんはそんな友達―久美―に紹介されました。どちらも仮名です。羽振りの良いお兄さんがいるって。女の子連れて来たら一人3万円って聞いて、私と他2人で会いに行きました。変人かと想像してたんですが葛野さんはイケメンで紳士でした。
バーのVIPルームに通されて、カラオケやダーツで私たちを遊ばせました。葛野さんはそれをお酒を飲みながら見ているだけ。終電の時間が来る頃に、約束通り3万円それぞれ渡されました。そして
「これを飲んでくれたら後3万円あげるよ」
と小さなジップロックに入れた小さな木片みたいな物を見せられました。私たち3人は顔を見合わせ「あれだよね?」というように目配せしました。見たことがない形態でしたが、ドラッグの類いだと思ったんです。
お金に吊られたのか好奇心からか私以外の2人が飲みました。
飲んだ2人は体調の変化なんかを観察するでもなく、一緒に帰されました。
次の日は気になってサボりがちだった学校に行くと、飲んだ子は2人とも来ていました。でもなんだかぼーっとしていて話しかけても反応が薄いというか。心配しながら午前中、授業を受けて過ごしました。同じクラスだったのでチラチラと気にしていると2人ともどんどん元気がなくなってきて、なんとういうか、しぼんできたというか・・・・・・見た目も透けてきて、いつの間にか消えていたんです。
信じてもらえますか? 当時は困惑しすぎてすぐに反応できませんでした。授業が終わってすぐに隣の席の子に聞きました。あの2人いなくなったけどって。そしたら「それ、誰?」って。見た目とか説明しても分かってくれなくて、空いた席に行って「ここ!」と言っても「もともと空いた席だったよ」って。それを聞いていた他のクラスメイトも同じ事を言って、私がちょっと変になったように思われているのがわかりました。
そこに久美が現れて、廊下に引っ張り出されました。
「アレを飲んだら全部消えるから」
意味が分からないと抗議すると、久美が怒り出して
「アンタだってアヤとキョウコがいなくなったの気付いてないじゃん!」
と怒鳴ったんです。もちろんこれも仮名です。私が改めて教室を見ると、歯抜けのように数カ所、誰もいない席がありました。不自然な空席は他の教室にもいくつかありました。
その後葛野さんから教えてもないのに連絡があって、誰か連れてきてくれたら・・・・・・って私の時と同じようなことを言われました。他校の友達を数人連れて行き、1人だけ飲みました。それ以降は葛野さんから連絡ありません。
だって怖いじゃないですか。誘いを無視したら、殺されるんじゃないかって。もう学校卒業してスマホも変えました。それでもまだ怖いです。
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