№262
小学生の時、近所に同い年の仲良しの子がいました。仮にカナちゃんとします。私はよく、カナちゃんの家にお泊まりしていましたし、カナちゃんも私の家に泊まりに来ることがありました。
でもある日、カナちゃんの家に泊まりに行くと、カナちゃんのお母さんが迎えに出てくれて、
「今日で最後にしてね」
と言いました。びっくりしてカナちゃんを見ましたが、カナちゃんも驚いた顔をしています。
「なんで?」
カナちゃんが当然聞きましたが、おばさんは
「ケーキを用意しているからおいで」
と何も無かったように居間に招かれました。そのただならぬ様子に、カナちゃんも私も何も言えずに従うしかありませんでした。
いつも楽しいお泊まりが最後だと思うと私もカナちゃんも悲しくてどんよりした気分でした。夕食の時何故かカナちゃんの両親がテンション高かったのは覚えています。
夜、なかなか寝付けないでいると、お布団の中でカナちゃんがシクシク泣き始めました。
「最後なんて嫌だよう」
「私も」
私たちは二人で泣きました。
「私の家にはお泊まりにおいでね」
泣きながら提案すると
「良いのかなぁ」
と不安そうに言うので
「いいよ!」
と無責任にカナちゃんを元気づけようと答えました。
結局その3日後にカナちゃんは亡くなりました。一家心中です。理由はよく分かりません。でもきっとお泊まりに行ったときには計画していたんだと思います。
それから私は1週間寝込んで、さらに引きこもりになりました。本当にカナちゃんと仲が良かったのでショックは相当なものでした。
父は海外赴任を早め、私をその土地どころか日本から引き剥がしました。もともと祖父母がその国にいたので、両親や祖父母に助けられながら徐々に悲しみは薄れていきました。
引きこもっていたときにずっと見ていたカナちゃんと遊ぶ夢も見なくなっていました。
4年前に成人してからようやく日本に戻ってきました。その頃の友達と会う機会があって、当時私が住んでいた家のことを聞きました。引っ越すときに売ってしまってもう誰か別の人の家なんですが、現在は廃墟になって放置されているそうです。持ち主も見つからないと。
そして地元の子供の間では「女の子の幽霊が出る」と噂されていると聞きました。気になって、見に行ったんです。その友達と。家はボロボロでしたが確かに思い出にある一軒家でした。
「懐かしいね」
何て言って見てると窓に人影が映りました。でも見えたのは私だけで友達は気付きません。なんとなく怖くなって友達を促し家に背を向けました。すると私を呼ぶ声が聞こえるんです。必死で助けを求めるように呼ぶ、カナちゃんの声が。
これも友達は気付きませんでした。私は聞かないふりをして立ち去りました。
カナちゃんは昔の私の家に泊まりに来ているんでしょうか。それとも家に取り憑いてしまったんでしょうか。
今はただ怖いんです。友達だったのに。
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