№260

 江野さんは趣味でよく幼馴染みとアウトドア出かけていた。

 僕たちは特に植物や生き物を見るのが好きで、花を見つけたり蝶が飛んでいたら写真を撮るなどしてのんびり山や森を歩いていました。

 その日もいつもの雑木林で二人でうろうろしていました。

 ふと茂みに子供の靴を見つけました。見つけたのは僕です。つまんで持ち上げ、幼馴染みに見せました。新品の小さなスニーカーです。ピンク色でキラキラと角度を変えると光を反射するようなデザインでした。

「かわいそうに」

 と幼馴染みは笑いました。確かに虫取りに来た子供連れの落とし物をよく見ました。でも僕はなんか嫌な気分がして、それをそっと元の場所に戻しました。

 次に帽子が落ちていました。小さな可愛らしいデザインの子供用の帽子でした。見つけたのは幼馴染みです。これもまた新品のようで奇妙でした。幼馴染みは手に取って見、何も言わずに元の場所に戻しました。

 歩いて行くと、木に子供のジャンパースカートが引っかかっていました。僕らは目を合わせ、今度は一切それには触れず、神経を研ぎ澄ましました。

「あ」

 と幼馴染みは声を上げ、口元を押さえました。その目線の先には女児の下着が落ちていたんです。幼馴染みは真っ青になっていました。僕も吐き気がこみ上げてきて、同じような顔になっていたと思います。

 その先は川という事を僕らは知っていました。恐る恐る草木をかき分けて進み、それを見つけたんです。川の対岸に布団が敷いてあるんです。日光を照り返すほど白い敷き布団は誰かが入っていて盛り上がっていました。肩まですっぽりと布団を掛け、向こう側を向いている頭は小さく子供のようでした。

 すると寝返りをうつでもなく首だけがぐるっとこちらを向いたんです。真っ赤な目を見開き、それはにたっと笑っていました。

「あははははははは」

 その甲高い笑い声が聞こえた瞬間僕らは走り出しました。それまで見つけたいろんな物も目に入りましたが無視して来た道を一目散に。

 バス停について、僕らはようやく足を止めました。服は破れ、木の枝や葉っぱがひっついていました。顔も擦り傷だらけでしたが、それより頭痛が酷かったです。

 帰りのバスの中で幼馴染みは熱中症で幻覚を見たんだと言いだし、僕もそれに賛同しました。その方が良いと思ったから。

 それから何年も会わず、アウトドアもしてませんでした。昨年共通の友人から幼馴染みが捕まったと聞きました。仕事先に来た女児に手を出そうとして・・・・・・。その友人はそんな奴とは縁を切ると言っていました。

 僕は、先日妻のお腹の中の子が女の子と発覚し離婚を申し出しました。最低なことだと分かっています。でも僕は幼馴染みの気持ちが分かるんです。あれを見てから僕の中にあったもともとの性質なのか、それとも埋め込まれたのか、どっちにしろ小さな女の子を見ているとどす黒い気持ちがわき上がってくるんです。

 今、妻を説得中です。全部話していますが、納得できないようです。

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