№188
これは俺の大学の友達の話です。仮に久谷とします。こいつは結構考えなしというか、悪ふざけが過ぎるというか・・・・・・。普通に付き合う分には楽しいやつなんですけどね。
ある日、久谷に呼び出されて行ってみると知らない男が一緒に居ました。誰かと聞くと、霊感があると大学で有名な学生だと。とりあえず玖木としますね。これから3人で心霊スポットに行こうと久谷は言いました。久谷のようすから玖木を試そうと思っていることが分かりました。多分彼を知っている人なら気づいたと思います。でも玖木は無表情でわかっているのかいないのか読み取れなかったから、俺も付いていくことにしました。
久谷はマンションの一室に俺たちを案内しました。
「ここは先週死んだ親戚の部屋だ。まだ片付けてないんだ」と言っていました。玖木はじっと部屋を見回り、俺も久谷が嘘をついていると思っていろいろ見てみました。冷蔵庫の中も水くらいしか入ってなかったし、風呂や洗面所は乾いていました。10分くらいして、俺たちの様子をニヤニヤしながら見ていた久谷が
「何か見える?」と聞いてきました。
たぶん玖木に聞いたんだと思うけど、俺は一応首を横に振っときました。玖木はちょっと考えてから
「死んだ場所はこの部屋じゃない。遠いところ。車にひかれた。しばらく生きてたけど、実家から遠いから誰にも看取られずに死んだ」
ゆっくりそう言うと玖木は黙って、そのまま玄関から出て行った。ぽかんとしていた久谷は玖木が帰ってこないと分かると笑い出しました。
「あれ、嘘だぜ?」
実はその部屋、久谷の従兄が借りている所で、従兄は生きていて、仕事で長期出張に行っていたそうです。
「種明かしする前に帰るなよ。なぁ?」
久谷は俺に同意を求めてきたけど、なんか感じが悪くて俺もすぐに帰りました。でもその夜、久谷から電話がかかってきました。ショックを受けて震えた声をしていました。久谷の従兄が同じ日の夕方、出張先のマンスリーマンションの前で車にひかれたんだそうです。すぐに救急車に運ばれ、最初は意識はあったけど自分が誰かもしゃべれず、身分証も持ってなかったから会社にも実家にも連絡が行かず、搬送先で亡くなったそうです。
久谷はその日から大学にあんまり来なくなって、いつの間にか退学していました。退学前に久谷に会った同級生は「玖木のことすごく怖がってた」と言っていました。玖木とは一度だけ話す機会がありました。久谷の従兄のことどうして分かったのかと聞くと、すごく不快な顔をされました。
「ああいう嘘は、ダメだろ。引き寄せる」
最初は意味わからなかったけど多分、呪いとかそういうのじゃなくて、久谷が引き寄せたのを玖木がキャッチしてしまった、と言う意味じゃないかなって。どう思います?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます