№115

 私が高校生の時、同じ高校の子が通り魔に襲われました。その子は下校中、最寄り駅に向かっているところを背後から鈍器のようなもので殴られたそうです。意識不明の重体で、犯人は逃亡中。次の日から通学路に先生が何人か見張りで立つようになりました。事件から数日後、私は友達と下校していました。突然鈍器のようなもので殴られるような衝撃が頭部を襲い、私は地面に倒れました。地面に落ちてから気が付くまで一瞬だったように感じましたが、私はいつの間にか見張りに立っていた先生に抱きかかえられ、友達や同じ制服の子たちに囲まれていました。なんだか恥ずかしかったのを覚えています。

「比村さん、何を言ってるの?」先生が引きつった顔で言うので、何かおかしいと感じました。周りの表情も心配しているというより戸惑っているようです。

「何も……頭を殴られて……倒れただけで……」と、言いながらも私が誰かに襲われたのなら、皆集まるわけないんですよね。逃げるはずですよ。頭の痛みもまったくなくなっていました。一緒に居た友達がその場の人を代表するように言いました。

「あなた、『○○先輩、やめて!』って叫びながら倒れたんだよ?」○○先輩って言うのは私たちの学校の男子サッカーのキャプテンでの有名人でした。とても珍しい名前をしていたので私が叫んだ名前は間違いなくその人を指していました。といっても私は覚えておらず、倒れたときに軽く怪我もしていたのでそこで救急車をよんで解散となりました。

 その後、被害者の子は回復し、彼女の証言からその○○先輩が逮捕されました。そこから私の周りの人がおかしくなったんです。私のあだ名は「霊能力者」や「陰陽師」になって、友達だけじゃなく知らない人からも幽霊とかの相談をされるようになりました。あの時先輩の名前を叫んだことが噂になって広まっていたんです。私が「わからない」「知らない」というと今度はペテン師呼ばわりです。さらに友達からは「どうして今まで秘密にしてたの」と迫られて喧嘩になりました。その時突き飛ばされて、私は気を失い、再度病院のお世話になりました。ここまでならコントみたいですけど、次に登校したら、もっと校内の様子がおかしくなっていて……。喧嘩した友達が私に縋りついていうんです。嘘だよね?って。何のことか聞き返すと可哀そうなくらい真っ青になって、とぼとぼと教室を出て行きました。後で聞いた話によると、私は昏倒したとき倒れたまま友達を含めた数人の名前を上げたそうです。私が目を覚まさない数日の間にそのうちの一人が事故にあって、呪いだと騒ぎになっていたとか。友達はその後不登校になり、自殺しました。私は家族とすぐに引っ越しして縁もゆかりもない土地に行きました。今でも怖いんです。事故があった場所とかにいくと、また何か自分でも思いもよらないことをしてしまうんじゃないかって……。

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