№23
――沼田さんは不思議な体験をしたという。
俺は1DKのマンションに一人暮らししてます。だから大学の友達が気軽に遊びに来てくれるんです。普通にインターホン鳴らしてもらって、俺が鍵を開けて部屋にあげてます。親から戸締まりとかセキュリティに関しては耳にタコができるくらい言われてたので、めんどくさいけど、友達が来たときはこんなふうに俺が開けてました。
その日は休みで寝てたんですが、突然大学の同級生がやって来ました。インターホンはカメラがついていて、そいつが一人で手を振ってるのが映ってます。イラッとしつつ対応してドアを開けにいきました。ところが誰もいません。隠れているのかと周囲を探しましたがいません。首をかしげながら部屋に戻るとまだインターホンのカメラが動いていてそいつが映っていました。「どこに隠れてたんだ」「何? 早く開けてよ」ふざけやがってと再びドアを開けるがやはり誰もいない。「おい、どこにいるんだ?」と少し怒鳴ってみたが出てこない。部屋に戻るとカメラにはそいつが映ってそわそわしている。「早く開けてくれ」若干イラついるようでした。「ドアの前にいろよ?」と念を押してドアを開けにいくと、やっぱりいない。一応ドアを閉めてドアスコープでのぞいてみたけど友達は現れない。何が起こっているのかわからず「ドアの前にいないけど」とインターホンで伝えてみました。でもあっちからしたら俺がドアを開けないだけなんですよね。とうとう怒りだして、俺も売り言葉に買い言葉で言い返して喧嘩になりました。喧嘩の最中にそいつの後ろに人影が現れたんですよ。それは黒いパーカーを着ていてフードを深くかぶって顔が見えませんでした。すっと友達の後ろに立ち、そして手に持っていた包丁を振りかざしたんです。その時「やめろ」とか「にげろ」とかそんな感じのことを叫んだと思います。でも喧嘩している相手がそんなこと言っても聞く奴なんていませんよね。包丁が友達の肩に突き刺さりました。血しぶきが飛びカメラにかかります。パーカーの男は何度も友達の肩や首を刺し、友人は呻きながらカメラ越しに俺に助けを求めるよう手を伸ばします。何故か次は俺だと思い包丁をつかみました。今考えると馬鹿ですが、包丁には包丁で応戦しようとしてたんですね。後まな板もつかみました。プラスチックの。そしてドアを蹴り開けました。
友達がぽかんとした顔で立っていました。ちょうど俺の部屋の前でインターホンを押すところだったそうです。部屋に戻るとカメラは映っていませんでした。確認のため友達に押してもらいましたが通常に起動しました。「外で料理でもする予定だったのか?」と友達は笑いましたが俺は全然笑えなかった。友人ですか? 生きてますよ。普通に。
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