№9

 その、怖い話したら金もらえるって話だが……?

――欅さんはこちらを伺うようにじっとりとしためで見てきた。私は内容によると答える。

 ふーん。まぁいいか。俺の体験した話はな、今も続いている。まずは俺の友人の話をしないとな。そいつは気が弱いやつで学生のときから何かと俺が面倒を見てやっていた。卒業して、そいつが結婚しても変わらなかったよ。よくあいつの家であいつとあいつの嫁さんを交えて晩酌していた。その嫁さんがなかなか美人で、あの女も俺のこと悪く思ってないみたいだったから、うっかり男と女の仲になっちまってさ……ははは、あいつには悪いことしたね。あいつ、知った途端、突然いなくなっちまった。女は半狂乱で俺を責めて、こっちも今は音信不通。まぁ、風の噂ではこいつは実家に帰ったみたいだけどな。そう言うごたごたがあったのが1年位前かな。

で、ここからが怖い話だ。あの日、友人が失踪した日から毎月、同じ日にその友人から手紙が届くんだよ。内容は決まって女をとられた恨みだけ。うらめしやーって手紙で届くんだよ。女々しいやつだよほんとに。え? 何で死んだことになってるかって? だって大の大人が何もかも放り出して失踪したら自殺しかないだろ? 手紙? 気持ち悪いから捨てたよ。女にも見せてない。だから音信不通だって。

 ……本当に手紙かって……何でそんなこと聞くんだよ……。いや、うん。そうだよ、人間の指とか耳とか目玉とか、あいつの名前で送られてくる……。指には特徴的なペンダコがあったし、耳も昔の手術の跡があったから間違いなくあいつのだよ。だから捨てたって! は? 警察? 関係ないだろ! 何でもかんでも警察に頼ってるんじゃねえよ! あの女だって良い思いしたくせに強姦だ警察だうるさいから先に旦那にばらしてやったんだよ! 案の定それどころじゃなってざまあねぇ! でも結局あいつは女の言い分を信じやがったよ! 俺に対してえらそうに文句も行ってきやがって! 今まで誰が面倒見てやったと思ってんだよ! あぁ? だから! 毎月あいつの名前であいつの身体の一部が送られてくるの! わかったから金寄越せよ!

――欅さんは私から謝礼の入った封筒を受けとると足早に去っていった。 

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