№8

 録音はしないでください。

――と、国木さんは言った。ではメモを取るのは、と聞くとしぶしぶうなずいた。

 あまり信用できないんです。誰かに漏らされるんじゃないかって。でも私自身誰かに話さずにはいられない。怪談ってそう言うものなんでしょうか?

 私のクラスで虐めがありました。……ありがちなことだと思いましたか? ええ、ありがちな虐めでした。複数人で、虐められっ子の悪口を言ったり、持ち物を隠したり、軽く叩いたり蹴ったり。ありがちだけどリアルで見ていて気分のいいものではありません。でも下手に止めると、これもありがちですが私が虐められっ子になってしまいます。だから私は傍観者に徹していました。

 ある時担任の先生がある告発文を読み上げました。それは名前を伏せて私たちのクラスには虐めがあると訴えるものでした。そして先生は「これは本当か」と教壇の上から問いただしたのです。もちろんその場で「あの人が虐めっ子で、この人が虐められっ子です」なんて言う人は出てきませんでした。でも虐めっ子達は「このクラスに裏切者がいる」と犯人探しを始め、結果的に私が制裁を加えられました。……とりあえずチクったらこうなるぞっていう見せしめだったと思います。怪我をして、持ち物も壊されました。私は怖くて次の日学校に行けませんでした。

 しかしその次の日に行ってみるとクラスが騒然としていました。どうも誰かが教室の掲示板に間違った制裁があったという告発文が貼ってあったらしいのです。もちろん私は休んでいたので違います。また虐めっ子は適当に犯人を捜して制裁したようでしたが、その日の朝、黒板にまた新しい告発文が貼ってあったのです。さすがに気持ち悪くて虐めっ子達は犯人捜しをやめました。が、今度は虐めっ子の一人が「絶対真犯人あいつだ」と鍵付きのSNSで愚痴を漏らしていたという告発文が学級日誌に挟んでありました。これにより虐めっ子達は自分たちの中に裏切者がいるのではと険悪になり、そして毎日虐めっ子がお互いを陰で罵る内容の告発文が教室のどこかで見つかりました。彼らは目に見えてやつれていきました。

 数日後虐めっ子達がそろって学校を休みました。朝のHRで先生が配ったプリントの説明をしていると誰かが「裏!」と叫びました。私たちがプリントの裏側を見ると「虐めっ子達は死にました」と書いてありました。ちょうどその時間に、虐めっ子達がほぼ同時に自殺したらしいんですよ。いったい誰の告発だったんでしょうね。

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