第9話 ポチからみた順位

「それにしても危なかったわねぇ 大体あのバカ調子に乗りすぎなのよっ

普段口酸っぱくして安全確認って言ってる割に、与作に良いとこ見せようって

あほなのよっ、間抜けなのよっ」

50話の件である。いや、「最後の猪」の話である。


「危ないとこデシタね。ポチは良くやってくれました。」


「それにしても、べるで、あんた何時ポチをあんなに仕込んだのよ?」


「大したことはしてないのデスが、ポチは賢いのでなんでも言う事ききマスよ?」


「あたしが「お手」って言っても全然手を出さないのよ、あいつ。」


ポチから見ると・・・ 

べるでが筆頭、群れの親分である。

ついで八尾 ご飯係である。

ミラ・・・ お友達、もしくは子分である。

アン・・・ 同等、もしくはお友達・・・である。


オオカミの世界では群れの順位で物事が決まる。

当然自分と同等はライバルである。自分より下は子分である。

強く出たほうが勝ちなのであるが、アンはバカっ可愛がりしたおかげで

上と見てはもらえなかったのである。

まぁ当面、順位の入れ替えは無いと思われる。


「オネェサマ・・・・お手っ」

思わず手を出してしまうノリの良いアン。


はっと気が付き、手をひっこめるアン。


「あんたねぇ、いい加減にしなさいよ。だいたいこの間の調査はどうなったのよっ」

顔が赤くなったアンは話題を逸らそうと必死。


「調査・・・と申しマスと?」


「あれよ、アレ ア~レっ あの件よっ」


「アレと申されマスと?」


「スリングショットよ アレに訊けって言ったでしょっ」

大声で怒鳴るアン。


「あの件はNGです、オネェサマ。ブロックは外したくありまセンです

未読メッセージが山ほどありそうナノで」


「なに~っあたしの言うことが聞けないってーの?

もう怒った こうしてくれる えいっ」


「きゃぁ 何をされるんデスか えいっ」

ドボンっ アンは足払いをされて風呂に沈む。

そこから大乱闘である。


暫くしてユデダコみたいに赤くなった二人がお風呂から出てきた。

囲炉裏から離れた所でだらしなくタレる二人・・・

のぼせたらしい・・・

冷たい床が気持ちよさそうである。


やれやれ・・・と八尾は風呂に入りに行った。


風呂場は家の軒先を伸ばして囲ってある。

家の壁は安普請で薄い・・・

つまり・・まる聞こえなのだ。

聞き耳立てる必要はない。

筒抜けなのだ。田舎の家にプライバシーと言う言葉は存在しない。

いや、都会の一戸建ても似たようなもんだ。


「スリングショットかぁ そんなものもあったなぁ・・・

あれなら弓より楽かもしれないな・・・」


遠い目をして、暗い山を見つめる八尾だった。


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