第8話 お風呂
「オネェサマ、本編でも、やっと復調されまシタね。
小鹿の件以来、幼児退行されてマシタので、心配でシタ。
精神まで体に引きずられたのカト・・・」
べるでは、ザパーっとお湯をアンの頭に掛けながら言った。
微妙な言い回しに無視するアン。
「熱っ・熱っ・熱っっっ、ちょっとべるで、上の熱いところだけ掛けるんじゃないわよっ!」
対流式の風呂はかき混ぜないと上だけ熱いのである。
泡が流れると、アンの濃い紫色の髪が現れる。
毛先まであと10センチ位か。
最早、先端だけ脱色したみたいである。
手桶で風呂をかき混ぜながら、アンにザブザブと掛けて行く。
良く泡が流されたら後ろから脇を抱えて、浴槽に放り込む。
ザブン、と音を立ててアンが風呂に沈む。
「オネェサマ、少し・・・重く成りマシタ?」
ザバッと浮かび上がると
「し、失礼ねっ、育ったのよっ そーだーったーのっ!」
「そ・そ・そうデスね。身長は変わりませんが、育ちマシタね。」
「重ね重ね失礼ねっ、5センチも伸びたのよ 5センチよ 2インチよ 2寸よっ」
・・・だんだんサバを読むアン。
自分に掛った補正が戻ってしまわないか不安になったべるでが自分を見る。
・・・描写はしない。
べるでは安心したように言う。
「オネェサマ、もうすぐ元にもどられマスね。」
そう言って自分もお風呂に勢いよく浸かると、お湯が揺れてアンはフワフワと揺らぐ
それに合わせるかのように、べるでもフヨフヨと揺らいでいた。
微妙な違いは気にしないで貰いたい。
風呂から上がると入れ替わりで八尾が入りに行った。
八尾は大抵後から入る。二人が出たらすぐに入る。
別にそう言った趣向がある訳でもない。
出汁が出ているわけでもない。
薪代の節約である。
薪だから切ってくれば、値段的にはタダである。
しかし切って来ると言う労働的な価値を考えると薪は節約した方が良い。
お風呂はべるでが沸かしている。
蛇口をひねればお湯が出るわけでもない。水さえ出ないのだ。
水は井戸からつるべで汲む。
ガラガラガラと桶を入れ、定滑車で引き揚げる。
そこに力学の応用は・・・余りない。力の向きが変わるだけである。
うんしょ、うんしょ、と綱を引き、井戸から水を汲む。
風呂と井戸は離れている。
近くにあると井戸が汚染されるかもしれないのだ。
桶からバケツに移して風呂まで運ぶ。
水を一杯貯めたら薪を入れて火を付け、風呂を沸かしていく。
もうもうと上がる煙、火吹竹でフーフー吹いて風呂を沸かす。
良い湯加減に成ったら自動で止まる訳でもない。
薪の入れ具合を調整し、丁度良い温度にしていく。
つまりその位、重労働なのだ。
八尾は感謝のつもりで風呂を洗ってから出ることにしている。
風呂掃除は八尾の当番となった。
風呂を洗い、流し場を洗い、風呂釜の灰を捨てる。
良く温まったとは言え、冬場では結構な労働である。
だが、八尾は知らない。 べるでの風呂の沸かし方を・・・
井戸より川は遠い。遠いと言っても家から下って2分と15秒。登りは3分だ。
川の水は井戸と同じぐらい綺麗だ。
川の水をストレージに入れる。一回500リットル位入れる。
風呂が一回200リットルなので足し湯を入れても2回分はある。
そして、取り出して風呂に入れる際に、ストレージの出口で2.45GHzの電磁波を掛ける。
お湯の温度は40度位になる。
風呂釜に薪を入れてちょっと火を入れれば直ぐに沸く。
意外と楽して沸かしておりマス。
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