041

ルイスって魔法が使えないんだよな・・・。俺は必死に空気弾を避けながら考える。確か、フィリアさんがそんなことを言っていたはずなんだけど・・・。それ以外にも?まあ、いいか。なにがなんでもとりあえずこいつをブッ飛ばすんだからな。ルイスが連続して打ってくる空気弾はルイスの頭上から真っ直ぐに発射されているのだから、避けるのは簡単だ。もちろん、速度は結構あるんだけど、発射ポイントを見ていれば軌道は簡単に読めるのだ。

「フフフ・・・これくらいは簡単に避けますか・・・。御霊様よ。」

「はあ、はあ・・・楽勝・・・楽勝。」

息が切れる。正直楽勝ではない。避け続けるにはいくらなんでも限界がある。ここは負傷覚悟で仕掛けるしかないな。俺は発射のタイミングをみてルイスまで一気に距離を詰める。宝刀を構えて首筋に打ち込む。

「おらぁ!!」

「フッ・・・。」

ルイスが左手・・・杖を持っていないほうの手を俺の打ち筋に合わせて翳すと首に当たる前に何かに遮られて止まっている。感触は手で掴まれているような感じだ。たぶん、これはルイスの館で俺の首を掴んだあれだろう。俺はそのままルイスの顔に向けて上段蹴りを入れるが、それも同様に何かに阻まれている。宝刀が掴まれている感覚が消えていたので俺は慌てて距離を取る。

「おにいちゃん!!距離を開けたらだめーーー!!」

リーナの声で俺も気づく。ルイスが杖を翳して再度、空気弾を打ってくる。

「おおっと!?」

1発、2発となんとか避けるが3発目にはうまく対応できない。態勢が悪く、夢中で俺は宝刀を盾にする。

パァーーン・・・。宝刀に当たった空気弾は弾かれて消えてしまった。

「な・・・。お、おお。すげーー。」

俺は自分自身でやっておきながら驚いている。あの速度で打たれた空気弾ならまともに受ければその衝撃もなかなかだとは思うのだけど、この宝刀はその衝撃すらも感じさせない。さすが、護神の宝刀と呼ばれるだけがあるな。

「御霊・・・簡単にはいかないようだな・・・。」

ルイスはさっきよりも長い詠唱を始める。俺はその隙にと走って近づき、真正面から宝刀を振りかぶって頭に叩き込む。が、それもルイスが手を翳すと見えない何かに阻まれて通らない。俺は連続で打ち込むがそれをすべてルイスは受け止める。なんていうんだろうか、こいつ、気功の使い手なのか?打ち込むところに手を翳すと手に直接当たるわけじゃなくその間になにかがあるんだ。

「ちくしょう、なんなんだ!?」

ルイスはニヤリと笑い、詠唱を終える。そして飛び跳ねるように俺から離れる。

「こっちの準備は万端ですよ!?」

杖を翳すと、ルイスの上に再度文様が出現して空気弾が現れる。無駄だ。それはもうこの宝刀で簡単に弾けることがわかってるんだよ!!

俺は宝刀を盾に空気弾を弾く。

「おにいちゃーーーん、うしろーーーー!!!」

その声が聞こえた時にはすでに遅かった。俺の背後にも同様の文様が出現していたのだった。俺はそこから発射される空気弾を背後からまともに受けてしまった。

「ああぁがあぅ。」

後ろからの空気弾で俺は前方に転がるように倒れる。背中が・・・。異常な激痛に動けない。骨は折れて・・・いないな。そんな確認もする間もなくルイスが俺の目の前に立っている。

「無力な純血種・・・結局は同じこと。貴様がこの僕に勝てるとでも思っていたのか?」

ルイスは俺の顔を思いきり蹴飛ばす。・・・なんていう威力だ。俺は首が折れてしまうのではないかというくらいの衝撃で飛ばされる。意識が飛びそうだ。それでも俺は宝刀だけは離さない。これが無くなっては勝機もなくなってしまう。だが、そんなことも考えていられない。追い打ちをかけるように2つの文様から空気弾が飛んできた。腕や足・腹に命中して体がおかしくなりそうだ。これは、まずいぞ・・・。

破壊された床から上がる煙で俺の姿を確認できないのか、ルイスは攻撃を一旦止める。会場は静まり返る。きっと誰もが俺の死を想像したと思う。だが、俺は死んでなんかいない。なぜかはわからないが、痛みがゆっくりとだが消えていくのだ。まるであの治療薬でも掛けられているかのような感覚。どうなってるんだ!?

煙が収まるころには俺は立ち上がって構える。

「ば、ばかな・・・。」

俺の姿を確認したルイスが声を漏らす。観客もザワザワとしている。その中でもフィリアさんとアスタさん、そしてファムだけはわかっているかのように頷いているようだ。

「ルイス、俺もよくわからないんだが、平気みたいだ。さあ、どうする?」

ルイスはギリギリと歯ぎしりを立てて、顔を歪ませている。もう、美形でもなんでもないな。俺は攻撃に移りたいところなんだが、どうにも普通にやっても俺の攻撃は通らなそうなのでまずは考えてみる。ルイスは魔法は使えない・・・。これはフィリアさんが言っていたことだ。そして、ファムもその場にいて否定はしなかった。ということはこれは事実だろう。なのにルイスは魔法みたいなものを使ってきているし、現にあの見えないなにか、はやっぱり魔法なんだろう。だめだ、考えてもまとまらない。とにかくやってみるしかないだろう。この謎の回復力もいつまで続くかわからないし、がむしゃらにやってやる。俺は決心してルイスへと突っ込んでいった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る