033
応接間・・・みたいな所に連れてこられて、高級そうなソファーに座らされた。この部屋は何畳あるんだよ!?っていうくらいに広い部屋だ。ルイスって良いとこのおぼっちゃんなのか。ルイスは俺と向かい合うようにテーブルを挟んで随分と偉そうな椅子に座っている。
「それで・・・御霊様の御用を聞きましょうか?なにかありましたか?」
ニヤっと笑う。・・・こいつ、感じが悪いな、なんか。
「ファムのことを聞きにきました。ルイス、さんはファムと婚約式を行うそうですね。偶然ですが、俺も近々ファムと式を行う予定なんです。」
「・・・ほう。それは・・・。」
「婚約式というのは重複できるものなのですかね?あとから申し込まれたのであればまず俺に挨拶をするべきでしょう。」
ルイスはニヤニヤと笑みをこぼす。
「そうですね。それはそれは失礼をしました。確かに重複はできませんので、御霊様に先にお断りするべきでしたね。・・・ですが、あなたはよくいなくなるそうですしお話しようにもいないのではどうしようもないのでは?」
「それは・・・。まあ、いるときに、いってくれれば・・・いいのでは?」
こいつ、俺が召喚されてこの世界に来ていることをわかってて言ってやがるな。負けてたまるか。
「御霊様。僕はあなたの都合に合わせていられるほど、暇ではないのですよ。それに儀式・・・いや、恋愛というのは取り合うものでしょう?なぜ、あなたに・・・たかが他人のあなたに!僕がファムさんと儀式を行うことを前もって報告する必要がありますか?いえ、ないでしょう。」
「・・・・・・それは・・・。」
ルイスは俺が言葉に詰まるのを見て笑い出した。
「ふふふ、ふははは・・・。あっはっはっはぁーー。」
「・・・なんだよ?」
「すみません。余計な雑談は止しましょう。本当はそんなことを言いに来たのではないのでしょう?」
「ああ、単刀直入に言おう。ルイス!!ファムとの儀式を取り下げろ!」
「お断りします。そもそもあなたに命令される筋合いはありません。」
「筋合いならある。俺はファムと婚約式を行うと約束をしている。お前みたいなぽっと出の輩が出てきていい場面じゃないんだよ!」
「・・・ぽっと出・・・だと!?」
みるみるルイスの表情が変わっていく。さっきまでの穏やかでどこか人を見下していた余裕の表情が一変。憎しみに満ちた恐ろしい顔へと変わっている。
「貴様!俺のことなどなにも知らぬくせに・・・。ぽっと出だと!?貴様ら御霊と呼ばれる存在こそ、この世界においてはそうじゃないのか!?」
ルイスは右手を俺に翳すと、俺は何かに首を掴まれたように宙へと浮かぶ。
「・・・あ、なん、だ?」
首を掴む力はどんどんと増していき、呼吸ができない。ルイスの顔を見ると憎しみが喜びに変わる様に歪んだ表情をしている。
「おっと・・・。失礼した。」
翳す手を下すと俺の首を掴んでいる力が消えて、地面に落ちる、俺はゴボゴホと急き込んで慌てて呼吸をする。
「僕たち神官は御霊を殺すことは最大の禁忌とされているのを忘れていました。」
ルイスは近づいてきて、俺の髪を掴み、顔を上げる。
「よかったですね。ひ弱な純血種。お前らは僕たちの加護の元、その命が保障されているんだ。・・・だから、僕に生意気な口を利くんじゃないぞ!!」
ルイスの拳が俺の顔に思いきりヒットする。俺はその尋常じゃない力に体が吹き飛んで壁へと打ちつけられた。
「があはぅ・・・。」
「ひ弱で無力な人間よ。どうあがいてもお前はなにもできない。クズはクズらしく生きていけばいいんだよ!!」
ルイスは右手に杖を持って俺に叩きつける。腕や足などあえて顔は狙わずに、攻撃をしてくる。
「はぁはぁはぁ・・・そうだ、良いことを教えてやるよ。ファムさんとの儀式は当然、彼女も了承済みだよ。いや、むしろ彼女のほうから申し込んできたんだよ。ははは、あーはっはっは。」
「俺、には・・・わかる・・・。本当のファムはそんなこと、望んでいない。」
「ああ?貴様になにがわかるっていうんだ!!」
ルイスはまた手を翳して首を掴む。そして、ググっと力を込めてくる。だがやはり殺すことはできないのか、最後まで力を込めてはこない。
「俺は、ファム、を信じ・・・てる。」
そうだ。俺はファムを信じているんだ。絶対になにか理由があるはずなんだ。こんな奴のいうことになんて動揺すらしない。ルイスは俺の様子を見て、舌打ちをする。そして、翳している手を振って俺を投げ飛ばす。俺は抵抗できずにゴロゴロと転がり、仰向けになっている。
「・・・そうか。・・・ふふっ、わかったぞ。御霊よ。僕と・・・決闘をしようか?ファムさんとの婚約式をかけてだ。どうする?ひ弱な人間。」
決闘??なるほど。随分と古風なことを考えるものだな。ルイスはニヤニヤと歪む表情がさらに険しくなる。それはまるで目の前の獲物をじわじわと殺そうとその状況に酔っている異常者のようだった。俺は、この決闘・・・断る理由なんてない。
「ふふ・・・それでお前に、勝てば・・・諦めるん・・・だな?」
「・・・・・・フッ。」
ルイスはニヤリと笑う。
「そうだな・・・次に貴様がこの世界に召喚された日の夜にしよう。それまで、儀式は猶予を与えてやる。・・・逃げるなよ、人間!!」
ルイスは以前俺がエリスに塗った治療薬みたいのを手に取り俺の顔に直接掛けてきた。顔についた傷を治しているのか?そして、治療薬の瓶を投げ捨てて、治癒の状態を確認する。俺の顔、ルイスに殴られて腫れ上がっていた顔が治っていく。それを見て、今度は顔以外の箇所。腹や腕や足を杖で殴りつけたり、蹴ったりとリンチを始めた。
「はは、ああ、良い運動になるなぁ。顔はバレてしまうから治してやったんだよ。だが・・・。こんなものじゃ、ない!こんなものでは足りない!!」
俺はされるがままにルイスの攻撃を受けている。それでも致命傷にはならないようにガードはしているつもりだ。ルイスは俺の胸を踏みつけて力を込める。
「そうだ、御霊よ。知っているか?お前ら召喚されし者共は一定レベルの苦痛を味わうと強制的にあちらの世界に送還されてしまうんだ。・・・ほら?見てみろ。」
俺は自分の体に目をやると、光の玉が俺の体から浮かんですーっと消えていくのに気が付く。だんだんと増える光の玉で俺の体はうっすらと透けてきているようだ。
「消える直前まで痛めつけてやろう。おら!!おらぁ!!!」
ルイスは容赦なくリンチを加えてくる。俺は抵抗できずに、ただ痛みにあえぐことしかできなかった。だけど・・・。
「ふふ・・・があ、はっ。はは・・・はははっ」
「なんだ?」
「もっとしっかりと、やってくれよ。・・・ルイス!、シーザー!!俺が忘れて、しまわないようにな。この痛み、を、この想いを、心に、刻んで・・・がはっ。」
次の瞬間、俺は弾けるように光の玉となって消えていった。
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