032

俺はルイスの館へと向かっている。リーナが案内をするといって一緒についてきてくれている。俺は一人で良いと言ったのだが、リーナは聞かなかった。リーナはフィリアさんと館の前までという約束でなんとか俺についてくることを許してもらった状態だ。

「おにいちゃん、ルイスさまのところにいってなにをするの?」

「なにって決まってるじゃん。ファムのことを聞きにいくんだよ。」

「・・・やっぱり・・・おにいちゃんは、ファムちゃんが、いいの?」

「ん?やっぱりって・・・。」

リーナを見るととても悲しそうな顔をしている。

「リーナじゃ・・・だめかな?リーナはまだこどもかもしれないけど、もうすこしすればきっと、おねえちゃんみたくびじんになるよ?ねえ、・・・だめ、かな?」

「・・・・・・。」

ちゃんと応えなきゃいけない。こんな可愛くて素直な子に誤魔化しや冗談で茶化すなんてことはしちゃいけないよな。俺は、ちゃんと考えてリーナの目を見て言う。

「俺さ・・・やっぱり、ファムのことが好きなんだと思う。きっと、嫌われたってそれは変わらない。もう、変わらないんだ。だから、リーナの気持ちには応えてあげられないんだ。ごめんな。」

「・・・・・・。」

リーナはなにも言わない。

「リーナは俺にとっては大事な妹だよ。もう家族だとも思ってる。だけど、恋人にはなれない。俺が好きなのは・・・俺が愛しているのはファムだけだから。」

「・・・・ファムちゃんも、きっとおなじじだよ。おにいちゃん。」

「・・・ん?」

「おにいちゃん、ファムちゃんのこと。もっとしんじてあげて・・・ね?」

リーナは涙を浮かべながらもそれでも笑顔を俺に向けてくれる。本当に良い子だ。

「ああ、わかってる。ありがとう、リーナ。」

リーナは背伸びをしながら先へとまわり、俺を見る。

「あーあぁ!フラれちゃったなぁ。リーナがもっとおむねがおおきかったらファムちゃんにも、かてたかもしれないのに。・・・おにいちゃん?これいじょうファムちゃんをなかせたらリーナ、ゆるさないからね。」

「はは、お胸だけの話じゃないんだけどね。まあ、泣かせないように頑張るよ。」

そう言うとリーナは不思議そうな顔をして首を傾げている。

「ファムちゃんのおむねがだいすきな、おにいちゃんでしょ。だって、まえに、ファムちゃんのおむねにてをいれて、へんなかおしてたよね?リーナはあんなふうに、はさんであげられないから。・・・どうやったらおおきくなるんだろう。」

リーナはそう言いながら、自分の胸を寄せたり揺らしたりしてみている。チラッと見てみるが、子供らしい小さい胸で当然谷間があるわけではない。そんなことより・・・。

「りりり、リーナさま?その話は、ちょっと、ね、その、本当にすいません。お願いします。忘れてください。」

俺は全力でリーナに土下座をした。

「えへへ。おにいちゃんとリーナのひみつだね。じゃあー、おにいちゃん。あとはがんばってね。」

リーナは元来た道を戻ろうとする。

「あ、そうだ。おにいちゃん?」

「ん?」

「リーナはずっとずっとかわらないよ。リーナはずーっとおにいちゃんのリーナだから。ファムちゃんにほんとうにきらわれちゃったらいつでもきてね。・・・だいすき!!」

リーナはそう言って走って帰ってしまった。ふぅ、本当に頑張らないとな。俺。


俺はやっとルイスの館にたどり着いた。外観は住宅街とは違い高級そうな館で貴族ですか?と言わんばかりの装飾が施されている。

「こりゃ、大変そうだ・・・。」

玄関へと行くと、妙な視線を感じる。またか・・・。リーナと歩いているときからずっと感じていた強い視線。俺の方にずっとついてきているならひとまずリーナは安心だ。視線が消えた?と思ったら玄関の扉が勝手に開く。扉の向こうにはあの超美形神官のルイス・シーザーが立っていたのだった。

「いらっしゃいませ、御霊様。そろそろ来るころだと思っていましたよ。・・・さあ、こちらへどうぞ。」

さっきの視線はこいつだろうか。魔法かなんかで見てやがったのか!?てことはリーナとのやりとりも聞かれていないだろうな・・・。お胸の件がバレるとより不利になってしまうな。

「どうしました?さ、中へどうぞ。」

俺は促されるままルイスの館へと入って行った。

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