027

先生は保健室の扉の外に外出中という表示を下げてきたようだ。なんだかこんな展開ってアダルトビデオで見るような展開なんだけど、俺は至って真剣だ。正直、学校が終わったら、精神関係の病院へ本気で行くつもりだったくらいだからな。

「はい、いいわよ。あ、鍵は閉めないからね。えっちなこと想像したらだめよ。」

「・・・・・・。」

「フフッ。ごめんなさい。」

ニコっと笑う先生は歳の割にかなり可愛い。年齢は30代くらいだっただろうか。結婚はしているのか?薬指にはリングが付いている。子供までいるのかは、知らないな。そんな大人だからなのか、男子の扱いにも長けていてちょっかいを出す男子にもうまく対応しているようだ。ちょっかいを出すっていうのはやっぱりその豊満な体があるからだろう。幼めの顔からはちょっと想像できない胸の大きさ。保健室の先生というだけあって長めのタイトスカートに白衣でメガネとくればほとんどセクシー系のAV女優を想像してしまう。思春期の男子には堪らない存在だ。だけど、それでもうまく対応できているというのはこの先生はとても強いらしいのだ。格闘術なのか合気道なのかはわからないが、一番有名なのは学校帰りの痴漢を一撃で仕留めたという逸話がある。その強さに女子は憧れ、男子は恐怖している部分でもある。そのときの痴漢の有様はニュースにこそならなかったがとても酷いものだったからだ。

「唇を噛み切るっていうのはね。精神的なストレスが原因であることが多いの。なにか最近あったんじゃない?相沢君は怪我こそするけど、そんなストレスを抱えるようには見えなかったから。」

「はい・・・先生は・・・夢はみるほうですか?」

「夢?ユメって寝てみるほうの夢?」

「・・・はい。」

「そうね、見たり見なかったり・・・かな?」

「俺、最近すごい、夢を見るんです。どんな内容なのかは覚えていないんですが、最後に見た夢は・・・とても、とても!!怖くて、怖くて・・・。」

「え?フフッ。怖い夢をみたの。相沢君も可愛いのね。」

「いや、そんな簡単なものじゃないんです。覚えているのはリアルな恐怖心だけ。あとは何とも言えない喪失感。そういうのって・・・いつまでも頭に残るものなんですか?」

先生は俺の真剣な話に真面目な顔をして考えてくれる。

「・・・そうね。はっきり言ってしまうと、人それぞれね。世の中にはリアルな夢をみたせいで精神疾患に掛かってしまう人もいるわ。だけど、それは全ての人じゃないの。様々な要因があると言われているけど、それも未解明だし。」

「そう・・・ですか。」

「だいたいの場合は時間とともに忘れていくものよ。それでも忘れられないということは、きっと相沢君が忘れたくないって思っているんじゃないのかしら。」

「・・・俺が・・・ですか?」

「そう。どんな夢を見たのかはわからないのだけど、きっとその夢で強い後悔や無念な気持ちがあったのかもしれないわね。それを忘れたくないっていう気持ちが潜在的に残っているんじゃないかな。」

忘れたくない、か。楽しい夢や嬉しい体験の夢なら忘れたくないって思う気持ちは理解できるんだけど、今回は・・・。

「俺は、こんな思いをしてまで忘れたくない、なんて思うとは・・・。」

「まあ、そこは内容がわからない以上、本当はどうなのかは言い合ってもしかたのないことなの。大事なのはこれからどうするかだと、私は思うの。」

「これから・・・?」

「相沢君、昨日、寝てないんでしょ?」

「・・・・・・・・・。」

俺は急に自分のことを言い当てられたことに驚き返事につまる。先生はやはりと言わんばかりに俺の目の下、目のくまを触る。

「夢っていうのはね。私は書き換えていくものだと思うの。今、相沢君は怖い夢を見て、その夢を引きずっているけど、それに負けちゃだめよ。」

「え・・・と、どういう。」

「寝てみなさい。きっと良い夢を見れれば、今胸に引っかかっているものもきっと綺麗になくなるわ。なんだったら、そこのベットで寝てもいいのよ。」

「・・・いや、でも。」

「大丈夫。お昼には起こしてあげるわ。女子がいるなかで寝ているのはさすがに恥ずかしいでしょう?だから、安心して寝なさい。」

先生は俺の頭を撫でる。そういえば、前にもこんな風に誰かに頭を撫でられたことがあったような気がする。母さんだったろうか・・・。俺は先生に手を引かれてベットまで行き、入るように促された。俺はベットには入ったがまだ今は枕を背に座っている状態になっている。先生はベットの横に椅子を置いてそこに座る。先生のその姿になにかが・・・。あれ・・・なんだっけ?この感じ。

「どうしたの?本当は眠いんでしょ。さ、早く布団を被りなさい。あ・・・一緒に寝てっていうのは無しよ。そういうのは一切ありませんからね。」

そんなことを言うつもりはさらさらない。だけど・・・。

「・・・怖い・・・って思うのは情けない、かな?」

俺は子供みたいなことを言って恥ずかしさで死にたいと思いつつも本音を漏らす。先生はニコっと笑い俺に近づいてくる。

「情けなくなんてないよ。そんな風に思うのは相沢君だけじゃないんだから。そうね・・・。大丈夫。私が守ってあげるから。相沢君が夢で怖い目に遭わないように私が必ず守ってあげる。・・・どう?」

「守るって・・・ハハッ・・・なに、言ってるんだか・・・。」

俺はとても安心した気持ちになっていた。なぜかはわからないけど、先生にそう言われると心が落ち着く。安心できる。信用できる。俺は泣きそうになる顔を隠すように布団へと潜る。そして、ばれないように涙を拭いて顔を出す。

「あ、先生。お願いがあるんだけど・・・。」

「・・・一緒には寝ないわよ。」

先生は少し厳しい顔で俺を見る。こんなことを言っていいのだろうか。少し迷いながら、でもどうしても言わずにはいられない。

「先生の、胸、少しだけ触らせてもらえない?」

「だめです。」

「・・・・・・だよね。」

俺はいやらしい気持ちがあったわけじゃない。変なことをしようと思っているわけじゃない。ただ、確かめたかったのだ。・・・先生は誰かに似ているんだ。それを確かめるのに胸を触るっていうのは理解しがたいかもしれない。だけど、これが一番だという確信がなぜかあったんだ。そんな俺を見かねてか先生は一つため息をつく。

「・・・・・・いいわよ。」

「え!?」

「ただし、条件があります。一つ、この服の上から触るだけ。一つ、私が終わりというまで。そして、最後の一つは・・・。」

「・・・・・・。」

「誰にも言わないこと。」

そういってウィンクをする。ちょっと時代がかっている気がするが、その姿に胸が高鳴るのを感じていた。この先生に人気が出るのがよくわかるな。

「・・・ありがと。」

先生は俺のすぐ傍に立って優しい笑顔で白衣を軽く開く。俺は緊張からか震える手で先生の胸を触った。

「・・・あ・・・。」

先生から声が漏れる。少し顔を赤くして恥ずかしそうだ。そんな姿を見て俺は興奮しているわけではなく、ただ、本当に懐かしさ。みたいなものを感じていた。先生の胸を軽く揉むように触る。このサイズ感や弾力にやっぱり覚えがある。記憶がなくっても感覚が覚えている。それは恐怖が脳裏に焼き付くようにとても幸せで嬉しい幸福感も同様に俺の頭のどこかに残っているかのようだった。先生はすぐに終わりと言うことはなく、ただ、終始笑顔で俺を見つめていた。その姿に俺は誰かを重ねて見ているようで、心からの安心感でそのまま眠りについてしまった。

「相沢君?・・・ふふっ。泣くことないのに・・・可愛い子。・・・おやすみなさい。」

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