023

「ここならひとまず安心でしょう。」

俺はエルフ神官に連れられて小屋みたいなところまで来た。着いたら早々、エルフ神官はまた、指で文様を刻み念を込める。すると、一瞬だが光に包まれたような気がした。エルフ神官も安心したようにペタっと座り込む。エルフ神官の格好は神殿で見かけたときのような神官服ではなく、軽装備とでもいうのか・・・堅そうな胸当てとか腕・足周りにガンレットっていうのかな?そんな防具を付けていて。他には頑丈な防具らしきものは付けていない。着ている中の服も割と動きやすそうな布だし、エルフっていうようなイメージ通りのデザインになっている。こんなんじゃ、さっきの半漁人とかの爪で攻撃されてしまったらすぐに怪我をするんじゃないのかな?一応、ここって戦場っぽいし・・・。

「・・・結界を張りました。守りの強度はそんなに強くはないのですが、この結界は中のモノを結界の外へ見せないという効果があります。だから・・・ここにいれば、先ほどのようにいきなり襲われるということもないでしょう。」

「あ、そうなんだ。なんか凄い便利な魔法だね。」

俺がそう言うと照れるように笑うエルフ神官。

「名前・・・名乗っていませんでしたね。私はエリス・・・。エルフ族の系統の生まれです。・・・あなたはたしか・・・。いや!止しておきましょう。御霊様でよろしいですよね?」

「え?ああ、うん。・・・まあ、好きなように呼んでくれたらいいよ。」

「ふふっ。今度の御霊様は随分と気さくでいらっしゃる。あのファム様が惚れるわけですね。」

惚れるとかって、他の人から言われるのは照れくさいものなんだな。

「今度の御霊、か。そういえば、俺さー、まだあんまりこの世界のことを知らないんだよねぇ。みんなが所々で言っているのを聞いて、なんとなくだけど。俺みたいなのが御霊って呼ばれていて、・・・俺以外にも御霊はいるんだろ?」

「え!?ファム様から聞いていないんですか??・・・何かお考えがあってのことでしょうか・・・。」

エリスはうーんと考えるような素振りを見せている。教えてはくれなさそうだな。

「あ、そうそう。エリス、なんで俺って戦場にいるんだろう?ていうか、なんでみんなは今、戦ってるの?」

「あ、そうですね・・・。その辺の説明はさせて頂きますね。御霊様がここにいらしたのはなぜかは私にもわかりません。私が敵から距離を取って離れてきたら御霊様があそこで倒れていたんです。」

「・・・うっそ!まじかよ。それって一歩間違えたら・・・」

「はい。サクっと殺されていたか、拘束されて今頃は奴隷か肉ですね。」

エリスは怖いことをサラっと言う。でも、本当に冗談では済まない事態になっていたのかもしれない。ここは素直に感謝しなきゃな・・・。

「それで、今、戦闘となっているのは・・・いっつ・・・。」

「ん?エリス?どうした!?」

エリスは立ち上がって説明をしようとした途端、片膝をついてをついて痛みを我慢しているようだ。俺はふとエリスの背中を見てみると、切り傷・・・いや、爪痕だろうか。3本の切れ跡が服に入っていてそこから血が滲んできていることに気づく。ここに移動してくるまではそんな傷があったようには見えなかったのだが・・・。

「ちょ・・・エリス!?怪我してんじゃん!!うわわわ、どうしよ。」

「バレてしまいましたね。実は私は先の戦闘で怪我を負ってしまったので、あの場から離れて治療に行こうとしていたところだったのです。つッ!・・・。」

エリスは俺に余計な心配をさせまいと傷を隠していたんだろうか。そんなの別に言ってくれればいのに。

「治療薬は持っているので・・・申し訳ないのですが、そこの治療薬を塗ってもらってもよろしいでしょうか?」

「え?もちろんやるやる。俺の命を救ってくれたんだから。それくらいなんでもやりますよ。」

「助かります・・・。」

そういって、エリスは胸当て・腕の装備を外している。その間も痛そうだ。傷口に触れている服はどんどんと血で染まっていっている。

「なんか出血量増えてきてるんじゃない?ちょっと、ちょっと!!」

「結界に力を使ってしまったために治癒に回る力が減っているのでしょう。毒素を含んでいるのでこのまま放置すると腐って危ないかもしれませんね。」

こらこらこら、物騒なことを言うんじゃないよ。エリスって冷静に分析をするけど、こういうときは感情が追い付いていないんじゃないか?自分のことまでそんなにサラッと言うかね。

「すみません。服を脱がしてもらえますか?痛みが酷くなってきててもう腕をうまく動かせないんです。グッ・・・あぁ。」

「え!??ぬぬぬがすって、その服を!?」

「お願、い・・・します。」

エリスの状態がどんどんと悪くなっているようだ。これは緊急事態なんだ!!決して浮気ではない!!人命救助なんだ!!!・・・俺は何に言い訳をしているんだろうか。

「じゃ・・・失礼して・・・。」

両肩に掛かっている服の布をそのまま下へと下げる。エリスの服はこう・・・肩から腰までクロスするような感じで布を纏っている。なので必然的に肩の布を下げれば上半身は裸の状態になってしまうんだが・・・。一刻を争う事態だから一気におろしたいところなんだけど、さすがにそうもいかない。俺には悪意はないんだがどうしても迷いからか焦らすようにゆっくりと下げてしまう。もう少しで胸がはだけてしまう。いいんだよな、いいって言ってたし、俺はなんにも変なことはしていない・・・はず。

俺は服が胸の膨らみまできたのでそれを超える為にグッと力を入れて一気に下げた・・・。

「あ・・・御霊様・・・。あぁ。」

エリスは慌てて胸を手で隠している。うん、当然だ。片手は地面についているため、隠すのは右腕1本になる。片手では隠しきれないその胸はファムほどではないが、それなりのサイズだ。

「ぐっぅ、はぁはぁ・・・」

エリスは胸を隠している腕がつらいのか、表情はだいぶ辛そうだ。早く治療薬を塗ってやらないと・・・。

「御霊、様。できれば、私の後ろに回ってはもらえないか?さすがに、殿方にこんな痴態を見られるのは・・・恥ずかしいんだが。」

「あ!!ごめんごめん。すぐに!すぐに行くよ。」

そりゃそうだ。ていうか、最初から後ろに回って服を脱がせば良かったのに、俺は堂々と真正面からやっていた。これは、治療後になにか文句のひとつでも言われるかもしれないな。やっちまったなぁ。俺は治療薬を持ってエリスの後ろに回る。それを確認してから、エリスは胸を隠していた腕を下して四つん這いのような状態で踏ん張っている。様子は相当苦しそうだ。俺は急いで治療薬の栓を取り、手に取ってエリスの傷口に塗りこむ。傷口に反応するように治療薬の液体がほのかに光り始めていた。

「エリス!?これはどれくらい塗りこめばいいの?」

「はぁ、はぁ・・・ああぁ。はぁ・はぁはぁ。」

・・・なんかエロいぞ。ファムには絶対にない、大人のエロさだ。荒々しく呼吸をするたびに体が揺れてもちろん見えはしないのだが、エリスの胸も連動するかのように揺れている、と思われる。神に誓って見えてはいない。だがひとつ正直に言わせてもらうと、少しだけ俺はモンモンとしている。

「もう少し・・・もう少し、塗りこんで貰えるか?」

「お、おう。」

治療薬をさらに手に取り、エリスの背中・・・全体に塗っていく。あまり言いたくはないのだがこの治療薬は少しヌルヌルしていてとっても良くない気分にさせられる。この場にリーナやファムがいたら俺、終わるな。背中だけではなく腰のほうまで塗り幅を広げていく。毒素がどこまで回っているかはわからないからな。・・・さすがに前にまで手を伸ばすわけにはいかないだろうから、側面・・・いわゆる横乳辺りまでは塗りこんでいく。胸にはできるだけ触らないように配慮はしている。

「はぁはぁはぁ、御霊様・・・だいぶ回復、してきたみたいです。」

たしかにそのようだ。エリスの口調も敬語に戻ってきている。さっきはよっぼどやばかったんだろう。

「御霊様、申し訳ありません。殿方にこんな恥ずかしい真似をさせてしまい、ファム様になんて言えばいいのか・・・。」

「いやいやいや!!言わなくていい、言わなくていいんじゃないか?非常時だったんだからこれは、俺とエリスの二人だけの中で終わらせておこうか。・・・それに無理に敬語なんて使う必要はないよ。話しやすいようにしゃべってくれ。」

「私と御霊様の中での秘密・・・。あ、ああ。そうですね。いや、そうだな・・」

なんだなんだ?返事が曖昧だぞ?大丈夫か!?念を押したいところだが回復したとはいえ、今だ、治療薬と出血が拮抗している状態だ。エリスにはこのあとも休養が必要だろう。俺は着ていた服を一枚脱いで、エリスに渡す。

「これを下に引いて横になったらいい。傷は治りかけが一番大事なんだから少し寝ろよ。」

「あ、ありがとう。今度の御霊様は本当に優しいんだな。」

親密度とでもいうのか信頼されているのか、どこかよそよそしい敬語はなくなり普段使っているような口調になっている。エリスは俺の服をそのまま下に敷き、うつ伏せになった。こうすれば胸を隠さずとも見えないから一石二鳥というものだ。

「御霊様。一つ聞いてもいいだろうか?」

「ん?なに?」

隠れているとはいえ、いうなれば横乳は見えているのでエリスのほうはできるだけ見ないようにして、返事をする。

「殿方は・・・なぜ、こんなにも、乳房が好きなのだ?」

「・・・さっさと、寝ろ!!」

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