022
カフェを出た俺たちはカラオケへと行き、散々騒いで騒いで、とても充実した時間を過ごしていた。そのカラオケも終わり、そろそろ帰ろうかといったところだ。
「ねぇ、3人でプリクラ撮りたいな。」
「ああ、いいね!いこういこう。」
木下は随分と乗り気だ。少しは俺に譲るっていう気はないのだろうか。俺たちは近くのゲーセンに入ってプリクラの機械を探す。俺は少し疲れたのでプリクラの機械を探すのは二人に任せて、少し休ませてもらうことにした。実の所、昨日はあまり寝ていないのだ。昼間っから長い時間寝たもんだから夜はばっちりと目が冴えていて眠りについたのは明るくなってからだった。そのせいか、当然夢なんかみることもなかったし、寝たのは一瞬のできごとのようで、体感的には寝てないんじゃないかっていう感じだ。あくびをしながらぼーっとしていると俺の向かいのほうにクレーンゲームがある。俺はなんとなく気になったので近くに寄って中の賞品を見てみると、可愛らしい魔法少女の人形が転がっていた。アニメかなんかのキャラクターだろうか?見たことないな・・・。
もちろん別に欲しいわけではない・・・だけど、何かが引っかかる。
「おい、なにしてんだよ。プリクラの機械あったから早くこっちに・・・」
木下が俺を呼びに来たようだ。だけど、俺はその魔法少女の人形から目が離せないでいる。。
「相沢!?・・・お前、なんで泣いてんの?」
自分でも気が付かなかった。頬をつたう涙。わからない、わからないけど、悲しいのか嬉しいのか。なんで俺は涙を流しているんだろう。頭の中がモヤモヤとする。
こんな感覚ってどこかで・・・どこかで・・・。
チャリン。ひなたがお金を入れてクレーンゲームをやり始めた。なかなかうまいもので人形をうまいこと引っかけて一発でゲットした。それを取り出して、俺に渡してきた。
「はい。優太君にプレゼントだよ。欲しかったんでしょ?」
「・・・あ、いや、俺は・・・。」
涙を拭き拒否するような素振りをみせる。
「相沢、もらっとけ!何に使うんだかは知らないがな。ははっ。」
「・・・私は、別に・・・そういう趣味は・・・嫌いじゃ、ない・・・かも?」
ひなた・・・それはどういうフォローなんだい?
「あ、ああ。じゃあ、せっかくだから。もらっておく・・・。」
ひなたが店員に袋をもらってきてくれて、それに人形をいれてくれた。そのまま持っているのはさすがに恥ずかしいだろうと思ったのだろう。その後、俺たちはプリクラを数枚撮って解散することになった。本当に不本意なのだが、ひなたは木下に自宅まで送るのを任せて俺はタクシーで先に帰らせてもらうことにした。異常な眠気が俺を襲っていたのだ。分けてもらった写真の後半は半分寝ているようでとても滑稽な仕上がりになっている。でも、楽しかった。本当に楽しかった。この3人でいられたら、どれだけ楽しい毎日を過ごせるんだろうかと心の底から思っていた。タクシーが自宅について俺はフラフラになりながらもベットへ直行していき、そのまま眠りについたのだった。
「御霊様!!あなたはファム様の御霊様ですよね!?早く!!早く起きてください!!」
体を揺さぶられるように振られ、俺は目を覚ます。なんだなんだ?今回は揺さぶられるパターンのやつか!?促されるように目を開けると、そこはいつもの丘から見下ろす綺麗な景色ではなく、人と魔物が殺しあう戦場だった。
「うわあぁぁあぁ!!!」
俺はその光景の凄まじさに後ずさりをする。
「静かに!!御霊様。私のことがわかりますか?」
そう言って語りかける女性は見知らぬ人だった。いや、人ではない。エルフなのか?尖がった耳に端整な顔立ち。多分、エルフ、だろう。
「えっと、わかりま、せん。」
「そうですか、私はアウレウスの神殿で神官をしております。御霊様とファム様の賜物の儀にも立ち会っていたのですが、覚えてはいないようですね。」
俺はその綺麗な顔をもう一度よく見てみる。
「あ!!わかった。係りの神官、様じゃない?」
「係りの・・・?。こほん。そうです。私は何度もお見かけしていたのですが、まあ、無理もないですね。随分と緊張されていましたので。」
「あ、はぁ・・・なんか、すいません。」
キシャーーー!!!
半漁人みたいなのがエルフ神官の背後から飛びかかってきた。すかさず、エルフ神官は指で文様を刻み、魔法を放つ。現れた炎に包まれて半漁人は倒れていった。
「いま、背中に羽が、生えた!?」
「私は魔法を使う時にはエルフ族の象徴でもある6枚の羽が具現化されます。まぁ、それも使い終わると消えてしまうのですが。・・・どうです?かっこいいでしょう。」
「ああ、カッコいい。」
エルフ神官はこちらを向いて、ニコっと笑う。
「ふふっ。こんな戦場で冗談が言えるのであれば大丈夫ですね。」
「どうなってるの?展開が急すぎてついていけないんだけど・・・。」
「はい、簡単ではありますが、説明します。とにかくここを少し離れましょう。」
俺はエルフ神官と戦場から離れ、結界を張ってから話しを聞くことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます