020

ガチャ!!扉が開く音で俺は目を覚ました・・。

「あら?起こしちゃった?もう、洋服のまま寝ないでよね!シワになっちゃうじゃない。」

早々に母さんが小言をいう。

「優太!あなたは何時から寝てるのよ。もう。せっかくの休みをうちでだらだらと過ごしていたの?」

何時から・・・寝てたんだろう。確か・・・昼ぐらいっだったような気がするんだけど・・・。なんだろう、体が物凄くだるい。あと、筋肉痛なのか?体のいたるところが痛いな。まあ、動けないほどではないんだけど、なんか怪我するようなことしたっけ??起き上がって、居間へと行く。母さんが夕食の準備をしているようだ。

「あれ?今、何時だ??」

時計を見ると・・・。20時!?えっと、寝たのって昼ぐらいだから・・・8時間とか9時間くらい寝てたってこと?うわぁ、なんか休み損したーー。

「ごめんなさいねぇ、母さん、今日は残業で今帰ったところだから夕食が遅くなっちゃうわ。お父さんも今日は遅いみたいでよかったわぁ。」

「ああ、そう・・・なの?」

寝る子は育つとはいうけど、こんなに寝たのにまったく疲れが取れていない気がする。むしろ、寝すぎて疲れた。体は痛てーし。

「あら??優太!?あんた怪我でもしたの?」

母さんが俺の肩を指差して言う。

「んー?」

俺は痛くて首が回らないから手さぐりで肩を触る。なんか付いてるな。なんだ??包帯か!?あれ!?包帯を巻くような怪我なんてしたっけか・・・。確か木下と話して、街頭でテレビを見て・・・。帰ってきただけだと思うんだけど・・・。んー、まぁいいか。俺は包帯を外してゴミ箱へ捨てる。絆創膏なんかも貼ってあったから一緒に剥がして捨てた。

ガチャ・・・。父さんが帰ってきたようだ。

「おぅ、ただいまぁ。なんだまだ飯できてないのか・・・。」

「ごめんなさいね!私も残業だったのよ。今、準備してるから先にお風呂にでも入ってて。」

「あー、はいはい・・・。」

両親はいつも通りの会話を交わす。うちの両親は特別仲が良いというわけではないが悪いというわけでもない。まあ、だいたいの親なんてこんなもんだろう。母さんが手際よく夕食を作っているなか、特にやることのない俺はぼけーっと録画されているビデオをチェックする。なんてことのない日常・・・。当たり前の生活。様々な番組で俺よりはるかに不幸な境遇の人々を見る。普通に暮らせていること。普通といえる日常を送れること。これはきっととても幸せなことなんだろう。・・・だけど、その日常に慣れてしまっている俺はいつもどこか物足りなさを感じているんだ。夕食を済ませると、部屋へと戻って、明日の学校で使うものを準備をする。俺の通っている学校は一応、進学校で勉学が第一、部活動は第二という方針の所だ。なのに俺は勉強よりも部活動に重点を置いている。部活動は刺激が多くて楽しいからな。親も良い顔はしていないんだが、勉強で遅れを取らないことを条件に文句は言わず、好きにやらせてもらえることにしてもらっているんだ。会社でサラリーマンをやっている父さんを説得するのには骨が折れたが、今の所は警告は受けずになんとかやり過ごしている状態だ。

「一応、予習でもしておくか・・・。なにせ、寝すぎたせいで、今日はすぐには寝れなそうだ。ふぅ・・・」

ガリガリと勉学に勤しむ。俺って、結構真面目なんだよな・・・。

「あら!勉強してるの?えらいえらい。」

母さんが勝手に部屋へ入ってきて俺を覗き込む。

「おいおい、ノックぐらいしろよ。一応、俺、高校生なんだからさ!プライバシーってもんくらいあるだろ。」

「はいはいはいはい。わかったわかった。優太、肩はなんでもないみたいね。特に傷もないみたいだし、なんで包帯なんて巻いてたの?」

「・・・さあ?忘れた・・・。」

「ふーん、そう?じゃあ、邪魔しちゃ悪いから退散するわ。・・・あ、携帯!なんだかピコピコ光ってるわよ。」

そう言って、母さんは居間へと戻って行った。まあ、包帯をしている姿をみたもんだから母さんなりに心配したのかもしれないな。・・・もう少し、普通に言えば良かったか?・・・あ!!そうだ。携帯携帯っと。俺は母さんに言われたのを思い出して、携帯を手に取り、チェックする。

「うわぁ・・・最悪・・・。」

ひなたからメールが着ていた。内容は時間が空いたから花火大会のお礼がしたいということだった。メールがきたのが16時頃か・・・。今は21時ぐらいだから5時間前か・・・。だめだーーー。なんだろう?花火大会の日からうまくタイミングが合わない。なんで俺、寝ちまったんだろう。ていうか、寝すぎだから!!そんなことを自分に言い聞かせても意味がないことは重々承知している。だけど、思わずにはいられない。ちょっと待て、そんなそんなことより、メールを返さなきゃ。なんて送ろう・・・。うーん、ヘタな話を作るくらいなら、正直に寝てたって入れるか。俺はすごい長い時間眠っていたこととその時に見ていた夢がすごいものだったことを入れて送信した。もちろん、夢の内容を覚えているわけではないのだが、木下にも伝えようとしていたくらい夢っぽい夢だったことくらいは覚えている。たしか、誰かと会っていたんだよなぁ・・・。

「はは、実は夢の相手はひなただったりしてな。」

すぐに返信がきた。おお!?ほうほう、ほう・・・。これはいいかも・・・。

俺に起死回生のチャンスが巡ってきたようだ。

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