011
「美味しかったなぁ。あのステーキは最高だった。なんの肉なのかはわからないけど、とにかく美味しかった。」
「御霊さまのお口にあったみたいで、よかったです。」
俺たちはお店で心行くまで食事を楽しんだ。リーナが薦めるだけあるのか俺は本当に初めて食べたっていうくらいの衝撃を受ける料理ばかりで驚いた。どれも本当に美味しくてやみつきになりそうだ。ただ、食材がなんなのかはわからないし、聞かないほうが良いことは間違いないだろう。ちなみにあの後は順番で呼ばれる前にファムも落ち着きを取り戻した状態で戻ってきてくれた。食事中も、もういつものファムで和やかに楽しく食事ができたのだ。若干、テンション高めだったような気もするが・・・。
「おにいちゃんはこれからどうするの?ファムちゃんのおうちにとまるの?」
「あー、どうするんだろう。特に考えてないけど・・・。まだ、暗くないし、もう少ししたら考えるかなぁ。」
「あはは、のんきだねー。」
のん気と言われても泊まる宿を探すにはちょっと早いよな?ていうか、考えてみれば宿?ホテル?みたいなところってあるんだろうか。そもそもそこに泊まる金とかって持ってないような・・・。さっきの食事代はファムがすべて払ってくれたのだ。その時出しているお金はあまりみたことないような貨幣だったな。円ではなさそうだから、俺がもしお金を持っていても払えないか・・・。まぁ、持ってないからそんな考えも意味はないんだけど。
「御霊さま、しばらくは私の家に来てください。部屋もたくさんありますし、その今はまだ、えーと、物騒ですし?・・・お話も、ありますし。」
「あ、うん。ありがとう、ファム。」
お話?・・・なんだろう。
「なんだかおにいちゃんをどくせんしちゃってずるいなぁー。ファムちゃん。」
リーナはじーっと、ファムを見つめる。その視線に慌ててなにかを誤魔化すようにファムはアタフタしている。・・・んー、なんなんだろう。
「リーナ!!こんなところにいたんですね!」
「あ、やば。おねえちゃんだ。」
そこにいたのはとても綺麗な女性。まさに女神様とでもいうのか気品があって神々しささえ感じられる。リーナがおねえちゃんと言うってことは姉妹か・・・。確かにリーナと似ているような気がするな。・・・ってことはリーナも大きくなったらこうなるのか。・・・想像ができんな。
「もう、アカデミーが終わったらちゃんと1回は家に帰ってきてって言っているでしょう。」
「だってー。おにいちゃんがー」
ファムはにこやかにやり取りを見ている。リーナがおねえちゃんと呼ぶ女性がこっちに気づいたようだ。
「あ!?ああ、御霊さまですね。この前はリーナを助けてくださってありがとうございます。初めましてお目に掛かります。私はリーナの姉のフィリアと言います。」
「あ。やっぱりリーナの、お姉さん、ですか・・・」
うーん、どうみてもリーナが将来こうなるとは思えないな。キャラが違いすぎる。
「フィリアさま、お身体は大丈夫なのですか?あの・・・その。」
ファムが不安気にフィリアへと近づき、手を取る。
「ファム。私は大丈夫です。それに、この身体は私が選んだことです。ファムが気にすることはないのですよ。」
「・・・はい。」
ん?なんかあったのかな?さっきまで明るかったファムがまた沈んでいるような気がする。ファムとフィリアが挨拶から世間話にシフトチェンジしていると、リーナが小声で俺に話しかけてきた。
「ねぇ、おにいちゃん?」
「ん?」
「ファムちゃんと、たまものぎしきをさきにするってほんとう??」
「えーと、そう、だね。確か、そんな話になってた、かな?」
「そっかぁ・・・。」
「どうした?」
「ううん。なんでもない。それより、ごしんのほうとうをもらうなんてファムちゃんもおもいきったよね。・・・おにいちゃん、だいじょうぶなの?」
リーナは心配そうに言う。
「え?あー、いや、俺はその辺の話は一切わからないんだ。ファムが大丈夫っていうんだから大丈夫なんじゃないのかな?」
「えええ!!?・・・そうなんだ・・・。」
「え!?なになに??なんかやばいの??・・・おい、リーナ。」
「・・・・・・なるほどねぇ。」
「ちょっ、勝手に納得しないでさ、教えてくれよ。すっげー不安になってきただろ。」
「なにが不安なんですか?」
ファムが急に話に入ってきた。いつの間にか声が大きくなっていたようだ。キョトンとした様子でこちらを見ている。
「いや、その、ほら、リーナがさ・・・。」
リーナはニヤニヤとしながら俺を見ている。
「ファムちゃん、おにいちゃんってなんにもしらないの?」
「あ・・・。」
ファムはリーナが何を聞いているかを察したようで少し戸惑っている。すぐには答えられないようで返事に困っているようだ。
「こら!リーナ!!おにいちゃんとは誰のことを言っているのですか?ちゃんと御霊さまと呼びなさい。」
「あ、はぁい。」
「申し訳ありません。御霊さま。リーナにはしっかりと言って聞かせますので。今日の所はお許しください。」
「あ、いや、俺は全然・・・。」
「それでは、私達はこれで失礼します。お時間があれば私たちの家にも立ち寄ってください。」
「まったねー。」
リーナとフィリアは行ってしまった。リーナは結局なんのことかは教えてくれないし、ファムの様子はおかしいし。わからないことだらけだ。まあ、ファムの家にいったらゆっくりと聞けばいいだけか・・・。
「ファム、家に着いたら、色々と聞きたことがあるんだけどいいかな?」
「はい。もちろんです。私も御霊さまにお話ししたいことがたくさんあります。」
ファムはにっこりと可愛らしい笑顔を向けてくれる。
「そっか。じゃあ、・・・帰ろっか?」
「はい。」
俺たちは二人並んでファムの家に帰ることにした。傍から見れば恋人同士、に見えるのだろうか。でもそんな甘い想像をしているのは俺だけ・・・かな?
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