002
俺はファムと名乗る女の子と街へと向かい歩いているようだ。横に並ぶにはまだ信用ができないから俺はファムの少し後方をついて歩いている状態だ。
「御霊さまには想い人さま・・・とかいらっしゃるんですか?」
ファムが急に振り返り話しかけてくる。
「想い人?ああ、彼女のことか?・・・いない・・・と思うけど。」
別に誤魔化しているわけではなく、本当にわからないんだ。歩きながらも自分が何をしていたのか、どうやってここにきたのかを思い出そうとはしているんだけど、頭の中がモヤモヤとしていて・・・。
「想い人はいないんですね!!あぁー良かった。」
ファムはひときわ嬉しそうに声を上げる。俺に彼女がいないのがそんなに良いことなんだろうか・・・。
「・・・良かった?」
「あ、すみません。こっちのことです。」
ファムは少し照れたような感じで前を向く。・・・なんだか楽しそうだな。こんな感じの子なら俺になにか変なことをしようとは思わないの・・・かな!?・・・なんて簡単に考えてしまう俺は少し単純だろう。
「ファム、さん、ちょっと聞いてもいいかな?」
「はい!」
ファムは元気よく振り返る。後ろ歩きをしながら俺の顔を見つめる。その可愛らしい笑顔にドキっとする。
「ああ、えっと、・・・ああ、そうだ。ここってどこなんだろう?俺、本当に記憶が無くって、なんでさっきの所にいたのかとか、どうやってここに来たのかとかわからないんだ。簡単でもいいから何か知ってることがあれば教えてくれないか?」
俺はさっき同じことを聞いてみる。それに気づいてかファムはにっこりと微笑む。
「はい、もちろんです。この世界は御霊さまがいらっしゃる世界とは別の異世界だと聞いています。」
「え!?異世界・・・?」
「そうです。私も紀元とかはわからないんですが、あっちとこっちは裏と表で元々あったとかなかったとか?フフフッ。」
なんかすごく大切な所を笑って誤魔化すファム。
「それでそれで、何十年も前に魔王?みたいなのが現れて北の大地からこのアムルウスまでたま~に攻撃を仕掛けてくるんです。」
「・・・魔王・・・。」
「でもでも、安心してください。ここ何年も大きな争いになったことはないですし、街に魔王軍が入ってこれたことはないんです。今は強ーい騎士様がいらっしゃるので。」
「・・・なる、ほど。」
異世界に魔王に騎士か・・・。正直笑いを堪えるので精一杯な単語だな。
「フフフッ。だから安心していいんです。あ、ほらー、御霊さま!街が見えてきましたよ!」
なにを安心していいんだろう?まぁ、いいか。ファムが指差す先を見てみると大きな街が見える。この坂を降りていくと着きそうだが、まだ随分と距離があるな。
「街の正門まで、まだ距離がありますけど、他に聞きたいことはありますか?」
「あ、俺ってどうやってここにきたのかはわかるのかな?」
「あぁ、そうでしたね。ごめんなさい。フフフッ。それは神殿に着いたらお話します。直接見てもらった方がわかりやすいと思いますので。」
てへへっと可愛い仕草を見せる。・・・これは、これ以上聞いても今は教えてくれなさそうだ。そんな仕草を見せられたら追求できないしな。
「そっか・・・。じゃあ、ファムって何歳なの?」
「ええー、私の歳ですか?御霊さまに言うのはなんだか恥ずかしいなぁ。」
ファムはモジモジしながら困っている。俺の見立てでは、ぱっと見た目、俺とさほど変わらないような気がするが、30・40ってことはないだろう。15・6辺りかな?それにしても自分の歳を言うのが恥ずかしいって・・・。THE女の子って感じがして可愛いな。同い年くらいだったら、なんか嬉しいかも。
「私は今年で182歳です。えへっ」
ファム照れながら1、8、2と指でも数を表す。えっと・・・。182?いやいやいや、18歳と2か月の間違いだろう。不思議そうにしている俺を見てもう一回指で表す。
「ひゃく、はちじゅう、に、歳です。」
・・・ここが異世界というのは本当のようだな。
見た目はどう考えても同い年ぐらいだが、同年代と違うのは胸のサイズくらいか。やや大きめ・・・か!?。ローブの切れ目からチラチラと見えるインナーの曲線から想像するに、一般レベル以上なのは見てわかるところだ。
「ちょ、と。御霊さま?あんまり・・・そんなところばかり見られると。私、恥ずかしいです。」
「あ、ごめんごめん。ちょっとだけ気になったから。あはは。」
「もう!」
ファムはローブを引っ張って胸が見えないように隠している。
顔を見てもどう考えてもおばあちゃんというわけでもないようだ。182歳の証明は推定であの大きい胸のサイズ。いや・・・まてよ?
「・・・魔王、騎士、異世界。・・・魔法か!?もしかして、魔法を使えるのか!?」
突拍子もないことを言って少し恥ずかしいのだが、ファムは引くわけもなくむしろキョトンっとしている。
「はい、使えますよ。この世界では当たり前のことです。」
「・・・顔、変えてるの?」
俺は恐る恐る聞いてみる。
「フフフッ。変えてませんよ。もう、御霊さまったら意地悪。」
「あー、そうだよね、ははは・・・」
本当か!?182歳でこの顔はどれだけ童顔なんだよ。童顔なのにこの豊満な胸。キャラ設定おかしくないか?そもそも、人じゃないのか?普通の人間は魔法なんて使えないし・・・。使いたいと夢を見ることはあるけど。
「御霊さまは魔法が見たいのですか?」
「え!?見れるの?」
「はい。御霊さまが望むのであれば・・・。」
「見たい!見たい!正直、異世界っていう話もこの時点では半分しか信じてないから。魔法っていうのをこの目で見たら100%信じれるし。」
魔法が見れると思うと妙な不安も吹っ飛んでしまう。なんだかんだ言っても要は証拠がないと信じられないのは当然のことだろう。
「わかりました。でも、今は杖がないのであまり立派なものはお見せできませんが・・・それでもいいですか?」
ファムはピタリと止まって、俺をじっとみる。真剣なファムの眼差しに俺はゴクリと息を呑んでうなずいた。
「じゃあ、いきます。」
ファムは右手を俺のほうへ向けて、目を閉じて集中する。風でファムのローブがひらひらと揺れて、チラチラとファムの胸が・・・胸のラインが視界に入る。うん。これは良くない、良くないな。俺も男だからどうしてもチラっと見えるファムの胸が気になってしまう。ふくよかな胸がチラチラッと見える。俺はローブの揺れを追うように見る。もう少し、もう少し風が強ければしっかりと見てサイズを測ることができるのに・・・。ん?風!?さっきまで風なんて吹いてたっけ?
ファムが目を開けてなにかを唱える。その瞬間俺の体は、突風のような風に押されて数メートル吹き飛ばされてしまった。
「うぉあっと・・・あぐぅ。」
地面に思いっきり叩きつけられて背中が痛い。ファムがなにを唱えたのかはわからない。何かを言っていたけど、聞き取れなかった。これが魔法・・・なのか?なにも無かったところから風、いや、突風が発生した。・・・ていうか、そもそも見せて欲しいとは言ったのだけど俺に向けて使わなくてもいいのに・・・。
「いって・・・。ファム、急に・・・。」
ファムが俺に駆け寄ってきてニコリと笑う。
「ファムの胸ばっかり見ていた罰です♡」
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