神聖不可侵のクロスロード

とき

第1話

「パス、こっち!」

 彼はパスを要求すると、しつこくマークしてくる選手を振り払い、飛んできたボールに飛びついて、そのままゴールに向けてドリブル。そして放たれたボールは、さも当たり前のようにゴールへと吸い込まれていく。

 爆発的にふくれあがる熱気がコートを包み込み、黄色い歓声が体育館を埋め尽くす。

「また決めたよ! すごいすごいっ!」

 歓声を構成する一人である朱美は、とても興奮した様子で話しかけてくる。

「うん、そうね」

 私はこの場にはとても似つかわしくない、少し冷めた声で返してしまったが、朱美はそれに気づかないほどバスケの試合に熱中していた。

 ボールがシュートを決めた選手に再び回ってくる。

 そして、ボールはふわっと浮かび上がり、ネットをするっと通ると、歓声が再び巻き起こる。

「キャー! 見て見てっ! 先輩また入れたよぉ! すごーい!」

 見てる見てる。試合が始まってからずっとボールを追ってるって。

 朱美はうれしさのあまりに飛び上がり、つかんだ私の手を引っ張り回す。

 コートの周りで応援しているチームメイトや他の観客たちも、同様に飛び上がったり、腕を振り上げたりと盛大に喜んでいた。

 残念ながら私はスポーツについて詳しくなかったし、興味もそれほどなかった。一緒に盛り上がってあげられず、誘ってくれた朱美に少し申し訳なく思う。

 ボールをゴールに入れれば得点をもらえて、何度もシュートを決めているあの選手が一番うまいのというは分かる。彼はひときわ背が高かったし、誰よりも目立つ動きをしていた。チームメイトも彼を信頼しているんだと思う。ボールを積極的に集めて、シュートを決めさせようとしていた。彼もそれに応えるために、敵の厳しいマークをかいくぐり、ゴールに向かって走っていた。

 試合終了。我が校のバスケ部の圧勝だった。

 彼はチームメイト全員とハイタッチをかわしたあと、体育館にひしめく観客たちに向かって手を振った。

「わっ! 手振ってくれた!! 絶対、私たちにだよ! せんぱーい!!」

 朱美はこれでもかというくらいに手を振る。

「ほら、依子も振らなきゃ!」

 腕をつかまれ、強制的に手を振ることになってしまう。

 このおかしな様子を見てしまったのか、彼は少し微笑んだように見えた。



「めっちゃかっこよかった! すごいシュート決めてたし!」

 朱美はテンションが高い。試合はとっくに終わった帰宅途中なのに、興奮冷めやらぬようだ。

「そうね。うちの学校、あんな強いにバスケ強いんだ? それに、女子があんなに見に来てるなんてびっくりした」

「んー? 強いのかな? 知ーらなーい」

「は? なんで知らないの? バスケ好きなんじゃないの?」

「バスケなんて興味ないよー。好きなのは藤波先輩ー」

 あきれた。他校との対抗試合があるから応援しにいこうと誘われたけど、目的はその藤波先輩とやらを見ることだったのだ。おそらくあの一番活躍していた人のことだろう。

 背が高くてかっこよく、顔は少しだけ幼い感じがあって、そこが女子に人気なんじゃないかと思う。バスケもうまいし、朱美のタイプに違いなかった。朱美はけっこう可愛いほうだけど、あの体育館の様子を見る限り、ライバルは多そうだ。きっと応援に来ていた女子のほとんどは、藤波先輩目当てだったに違いない。

「それじゃあ、応援しにバスケはよく見にいくの?」

「え、いかないよ?」

「へっ?」

「藤波先輩、バスケ部じゃないから」

 バスケ部ではない? ではなんで試合に出てたんだ?

「あたしもバスケ全然分かんないしー。ってか、依子知らないの?」

「うん? 何を?」

「藤波先輩のこと。うちの学校の生徒会長だよ」

 生徒会長……。そりゃあ、誰かがやっているんだろうけど、それが誰だかはまったく知らなかった。私たちは高校に入学してまた一ヶ月足らず、生徒会の選挙に関わっていないのだ。選挙は毎年9月に行われ、生徒会の任期は一年らしい。

「へー。それで、なんで生徒会長がバスケに出てるの?」

「え、えっとぉ……ほんとに知らないの?」

 朱美は哀れむような目で私を見てくる。

 そんなに知らないとまずいことだった……?

 何かうまいこと取り繕うとしたが、何も言葉は出なかった。もっとトークがうまくなりたいものだ。

「うっそぉー……。なんで知らないの!? 女子なら誰でも知ってるのに!」

 女子じゃなくてすみませんでした。

「部活の助っ人をやってるの。スポーツ万能でなんでもできるんだよ! いろんな部活の試合に出て、いつも優勝! マジ神でしょ!」

「神?」

「そう、神! 神聖にして不可侵の生徒会長なんだよっ!」

「神聖不可侵っておおげさな……。絶対王政の王様じゃないんだから」

「それが王様なんだよ! 王子様だよ! 貴族様だよ! マイロードだよ!」

 どんどん位が下がってるし……。

 とにかく、スポーツができて、女子に人気のあって、とんでもない生徒会長であるらしい。

「好きな子いっぱいいて、ファンクラブだってすごい人数いるんだよ!」

「そ、そうなんだ……。朱美も入ってるの?」

「もち! 見て見て見てっ! ほら、ファンクラブナンバー111番!」

 ラミネートされたカードをお財布から取り出して、私に見せてくれる。

「111番? 1番じゃなくて?」

「それ言っちゃう? そりゃー1番がいいよ。でもさ、あたしたち、一年じゃん? 先輩はもう二年も前から高校生なんだよ。1番になれるわけないしー」

 確かにその通りだ。生徒会長は今年三年生だから、この三年間でたくさんのファンを獲得したのだろう。

「でも、すごい人数ね」

「でしょでしょ! まさに学園のアイドル! スーパー生徒会長だよ! 依子も入る? 今なら200番ぐらいにはなれるんじゃない!?」

 アイドル……? 王様でアイドルとは、なんか大変な生徒会長だ……。

「いや、遠慮しとく……」

「えー、入ろうよー。今なら特製写真立てもつくっぽいよー?」

 なんだそりゃ。

 でも、そこまで夢中になれるのはちょっとうらやましいなと思う。私はスポーツもよく分からないし、男子にそんな興味を持ったことがなかった。あこがれの先輩の応援に一生懸命で、彼の行動に一喜一憂している朱美はとても生き生きしていた。



 そんな王様でマイロードでアイドルな生徒会長が主催を務める定例会が開催される。

 年度の始めなので、おそらく委員会の年度方針などが話し合われるんだと思う。

 私はそれに参加しなくてはならない。

 なぜなら、それっぽいからという理由で、クラス委員に選ばれてしまったからだ。

 そういうのはいまさら気にしない。小学校の頃から、委員長っぽいと言われ、役職につかされているから、慣れっこである。

 それに、変な委員会の仕事に比べれば楽なものだと思う。本が好きなら図書委員、動物が好きなら飼育委員という選択肢があるんだろうけど、私は特にやりたいものがなかったから、無属性のクラス委員は悪くないと思っている。

「いいなあ、生徒会長と一緒にいられるなんてー」

 生徒会長大好き娘の朱美はそう言うが、何がそんなにいいのか分からない。放課後残って、あまり実りのない話し合いをするだけ。うれしいことなんて全くない。定例会が始まるまで、みんなが下校するのを眺める時間が一番哀しい。

「じゃあ、代わるけど?」

「遠慮しとくー」

 あこがれの会長がいても、面倒なのはやはり嫌らしい。

 人の前に立って指揮したり、話したりするのは、苦手な人はやはり苦手だろう。恥ずかしいし、責任あるし、お堅いし。

 面倒には違いないけど、私はそれほど苦ではなかった。クラスをまとめる重大な役目とはいうけど、別に何か特別なことをするわけじゃない。カリスマとか指揮力とか求心力とか必要なくて、“なんとなく”前に立って、それっぽいことを言えば、みんな“なんとなく”従ってくれるのだ。

 導く側も導かれる側も、余計なトラブルは起こしたくない、事なかれ主義なのだ。こうしてクラスの平和は“なんとなく”保たれている。



 さすが神や王とか言われてしまうカリスマだと思った。

 生徒会長のリーダーシップはすごいもので、これは一回では終わらないなと思えた量の議題がどんどん片付けていく。

 踏み込みにくい問題や解決方法が見当たらない問題でも、生徒会長が提案すれば一発で決まってしまう。

 しかし、確かに会長のすごさはあるんだけど、違った見方をすると、定例会出席者は自らは何も考えず、会長のいいなりになって媚びへつらう取り巻きどもになっている。

 なんだか嫌な世界だなあ。

 そんな大人じみた世界が受け入れられず、会議の発言内容も聞かないでプリントとにらめっこをしていると、私はミスを見つけてしまった。

 来月行われる体育祭の資料だ。

 うちの学校は応援に力を入れていて、クラス対抗の応援合戦がある。文化祭の出し物のように、クラスごとに知恵を絞り、様々な工夫を凝らした応援を行うのだ。衣装や工作のためにお金がかかるので、何にいくらかかるかを計算して、生徒会の承認を受けることになっている。その承認までのスケジュールが間違っているのだ。

 おそらく去年の資料を流用したから起きたミスだと思う。

 でも、それについて出席者は何も指摘しなかった。気づいていないのか、生徒会が作成した資料を信用しすぎているのか、それともミスなどなかったことにしているのか。

 間違いをそのままにして会議は進んでいく。

 みんなが気にしないならいいかと思う一方、これからゴールデンウイークとなり、少しのスケジュールのズレが命取りになりかねないんじゃないかと不安になってくる。このままやり過ごすことはできるけど、あとで本当の締め切り日を確認しなければならないし、何も気づかず勘違いしたクラスは大変なことになるかもしれない。

 好んでやりたいことではないけど、ここはみんなのために、一つ恥をかくことで解決を図ろう。

「あの、すみません」

 会議の進行をぶった切る言葉を発し、手を上げると、会議出席者の目すべてがこちらを向いた。

 こうなることは承知の上だったけど、ギクッと緊張してしまう。

 嫌な感じがするのはこの一瞬だけ……。今は耐えよう。

「何かありましたか?」

 進行を妨げる私に、生徒会長は優しい声で尋ねてくれる。

 さすがはみんなのアイドルだ。

「体育祭のプリントですが、スケジュールが間違っているように思います。予算承認のところです」

 これまで静かだった場が一気にざわっとする。

「え、間違い?」「何言ってるの?」「ミスなんてあるはずが」と、会議出席者たちはそんなことをつぶやいている。

 プリントに間違いなんてなかったんじゃないかと、急に不安になってくる。

 けれど生徒会長は「そうですね。これは間違いです。大変失礼しました」とすぐに訂正してくれ、私はほっとすることができた。

「スケジュールを修正したプリントを明日配布しますので、また明日取りに来てください」

 これで問題解決。恥をかいた甲斐はあった。

 あとはひっそりと地蔵のように会議を聞いていよう……と思ったのだけど、それは大きなトラブルの始まりだったらしい。

「生徒会長が謝った?」「誰がミスを?」「会長に恥かかせるなんて」「誰あの人」「感じ悪い」「鬼の首取ったみたいに得意げ」と、そんな声がささやかれ始めたのだ。

 会議出席者はみんな会長の味方のようで、プリントの記載ミスをした人を責め、それを会長の御前で指摘した私のことを気にくわないようだった。

 非常に居心地が悪い……。望むのはこの場から早く立ち去ること。

 これ以上目立たぬように、顔を伏せてプリントを凝視していると、突然、後ろから椅子を蹴られた。

 ビクっとしてしまい、長机に体を思いっきりぶつけてしまう。

 その衝撃で机がはね、上に載っていたものが散らばってしまった。私の筆箱の中身だけでなく、隣の人のプリントや筆記具も転落する。

「す、すみません……」

 冷たい目の中、 席を立ち、そそくさと回収して持ち主に返した。

 確実に悪意を持った犯人はいるのだけど、そんなのを気にする余裕はなかった。

 恥ずかしすぎる……。一瞬の恥だったはずが、長い長い恥となってしまった。一時間の会議が永久の時のように感じる。



 定例会が終わり次第、私は人波をかき分け、会議室を後にした。

 会議室を勢いよく飛び出し、廊下を早歩きで去っていく姿は、トイレに急いでいるか、悪いことをして逃げている人にしか見えないだろう。

 きっと顔も、相当惨めな表情になっているはずだ。

 でも、そんなことはどうでもいい、非常に些細なことだ。今一番の課題は、いかに一秒でも早く学校を出るかである。

「ちょっと待って」

 こんなときに声をかけられるなんて。私はすごくついていない。

 呼吸と表情を整えてから振り返る。だがその努力は一瞬で無駄になる。

 声をかけてきたのは生徒会長だった。

 なんで生徒会長が……。

 変な顔、焦る気持ちをなんとか持ち直し、平常を装って応対する。

「何かご用ですか?」

「忘れ物、届けに来た」

 忘れ物……? すぐに思い当たった。

「あっ……」

 筆箱を落としたときだ。中身を確かめる余裕なんてなかったから、気づかなかったんだ。

 顔が一気に紅潮する。

「このペン、君のでしょ?」

「は、はい……」

 会長の優しさが余計につらい、恥ずかしい……。

「手、出して」

 顔を覆ってしまいたいのを我慢して、手を出す。

 会長は私の手に左手を添え、もう片方の手でペンを握らせてくれる。私の手は、会長の手によって重ねられ閉じ込められてしまった。

「うわっ!?」

 思わぬ行動にびっくりして、会長の手を振り払ってしまう。

 いきなり何をするんだこの人は!?

「今度は気をつけてね。それじゃ、また明日」

 会長はニコッとイタズラな笑いをして、去って行った。

 胸がドキドキしている。かつて感じたことがないくらいに。

 わざと? わざとなの? それとも素でやってる?

 わざとなら相当のタラシだ。女慣れしてるに違いない。世間では人気の会長も、私の中ではとてつもなく評価ランクがダウンする。

 動揺を抑えきれずその場に立ちすくんでいると、注目を浴びていたことに気づく。

「なにあの子」「会長と手をつないでたよ」「また明日って何?」と、いぶかしむ声、批難する声。

 な、なに言ってんの……!? 会長が勝手に手を握ってきたでしょ!? 見てないの、ねえっ!?

「あ……ち、違うんです……これは……」

 説明など求められていないのに、私はその場にいる不特定多数に弁明をしようとしてしまう。

 そこに救世主が現れる。

「ちょっと、依子!」

「え、朱美?」

 朱美に手を引っ張られるがまま、注目の輪の内から抜け出した。



「何やってんの! めっちゃ見られてたよ!」

「何もやってないよ……」

 ほんとに何もやってない。人に見られ、敵意を抱かれるようなことは絶対。

「ダメだよ、会長に近づいたら」

「近づいてないって。向こうが勝手に近づいてきて……あ、忘れ物を届けてくれて……」

 会長は別に悪くないと思い、言い直した。

 元はと言えば、筆箱をばらまけ、ペンを置いてきてしまった私が悪いのだ。

「だから言ったじゃん。誰も会長の50センチ以内には入っちゃいけないんだよー」

「なにそれ? そんなの初めて聞いたよ。なんで50センチ?」

「えっとー、なんだっけな。……ほら! 交差点は車を駐めちゃいけない、っていうじゃん?」

「うん。交差点のそばに車を駐めると、他の人の邪魔になるからね。5メートルぐらいかな、範囲?」

「それそれ! 会長のそばに止まってると、人がいっぱい集まっちゃって邪魔になるでしょ? だから、50センチは離れることになってるのよ!」

「えー……よく分からないんだけど……」

「ああ、もうなんで分からないのかなー。神聖不可侵! 生徒会長はみんなのものだからだよ!」

 なんだそりゃ。神聖不可侵うんぬんって、ただのすごそうに見せるための形容詞じゃないの?

「んん……。えーと、つまり、交差点はみんなものだから5メートル離れるように。それで、生徒会長もみんなものだから50センチ離れるように、ってこと……?」

「ザッツライト! ようは気安く会長に近づいちゃダメ、ってこと! よい子のみんなのお約束っ!」

 分かったような、分からないような……。私は悪い子なんだね……。

「50センチって何なの?」

「あー、そういえばなんだろー。人の幅?」

「ああ、人間一人分を離れろってことね」

「そうそう! クラス委員で生徒会に関わるからって、生徒会長には近づいちゃダメだからね!」 

「あんな目に遭ったんだから、もう近づかないって……」

 会長を崇拝する人たちはトラブルを避けるために、暗黙で抜け駆け禁止令を布いてるみたいだった。事前策としてはよいんだろうけど、知らない人には、勝手に地雷をまかれているだけのつらい法律だ。



 無用なところで恨まれ妬まれなんて、シャレにならない。今までも近づいたことなんてなかったけど、これからは会長に絶対近づかないことにした。

 しかし翌日、生徒会室にプリントを取りに行かないといけないことを思い出す。私が余計なことを言ったせいで修正することになったプリントだ。

「朱美、ちょっとお願いが。生徒会室にプリント取りに行ってくれない?」

「えー、めんどいー」

「そこをなんとか! ね、お願い! プリント1枚もらってくるだけだからさ」

「イチゴパフェ」

「へ?」

「イチゴパフェおごってよね、今度」

 どう考えも割りに合わない気がしたけど、嫌なことから一回避けられるんだから、この条件を飲まないわけにはいかない。

「ジャンボはダメだからね」

「スーパーデラックスにする!」

 てひひ、と笑うと、朱美は生徒会室に走って行った。

 そんなイチゴパフェ、あったっけな?

 たぶん存在しない。朱美は私のことを気遣ってくれたんだと思う。

 朱美に感謝して、無事プリントを受け取った。スケジュールがちゃんと修正されていることを確認する。いろいろあったけどこれで一件落着だ。

 部活には入ってないので、クラス委員の仕事が終われば学校にいる理由がない。さっさと帰ろうと思ったとき、私の意志なんか軽くねじまげてしまう強制力が働いてしまう。

『1年3組、本沢依子さん。1年3組、本沢依子さん。 至急生徒会室にお越しください』

 校内放送で生徒会に呼び出されたのだった。

 わざわざ放送で呼び出すとは何事だろうか。プリントを取りに行った朱美が何かしでかした?

 それにしても、放送で呼び出されるのがこんなに恥ずかしいことだったとは。

 クラスメイトが私の顔を見て笑っている。あいつ、何かやらかしたなと。



 急いで生徒会室に行ってみると、しょうもない用事だったことがすぐに分かった。

「本沢さん、部活入ってないようだけど?」

 全校生徒の名簿を見ながら会長が言う。

 会議のときはお堅い感じだった生徒会長だが、今日はとってもラフな口調だ。

 普段はこういう感じなのかもしれない。この親しみやすさも人気の秘密なんだろう。

「本校では部活に入る入らないは自由ですから」

 けっこう不機嫌な声で答えてしまったと思う。

 こんな用事でわざわざ校内放送を使うのかとイラッとしてたのだ。部活は生徒が自由に決めることだし、会長に指摘されるところじゃない。

「そうだね、正解だ」

 正解だ、じゃないし。

 もしかすると、プリントを取りに来たときに、部活について言及するつもりだったのかもしれない。代わりに朱美が来てしまったから校内放送をしたと。

「それだけでしたら、私帰ります。部活に入る気はありませんので」

「何かやりたいことないの?」

 会長はこっちの言うことは無視して話を続けようとする。

「ありません」

「じゃあ、何かやらない? それがやりたいことになるかもよ」

 会長は何が何でも部活に入らせたいようだ。なんで私にそんなことを言うのか、まったく見当がつかない。会長だって部活に入ってないというではないか。

「やりません」

「なんで?」

「なんでって……」

 横暴でなんか嫌な感じだ。こんなこと言われる筋合いなんて絶対ないのに……。

「部活に入っても、ちゃんとやれるものなんてありませんから」

「ふーん。できないからやらないんだ? なんで、うまくいかないと思うの? やってもいないのに」

「不器用なので……」

 ムカムカする心をなんとか抑えながら答える。

「そうかなー。案外それがすごく好きになって、とてもうまくなるかもしれない。もしかすると、人生の分岐路になったりして!」

 会長は私とは対照的で、とても楽しそうに話す。

「そんな馬鹿な……」

 意図の分からない問答が続いてすごく疲れる。神経も変にすり切れてくる。

 万能で人望のある会長だけど、私はこの人との相性がひどく悪いみたいだ。

「それじゃあ、生徒会なんてどうかな? 昨日の定例会すごかったよね、だから……」

「嫌です」

 即答。

 生徒会長の目的はこれか。生徒会に誘う気だったのだ。

 本校では生徒会の活性化のために、一年生は選挙を経ずに、生徒会メンバーの推薦によって、生徒会に加わることができる。体験させることで興味を持たせ、生徒会や学校行事に積極的に参加する人を増やそうというのだ。

 それならなおさら、会長の話に乗るわけにはいかない。

 生徒会に入れば毎日のように生徒会長と会うことになる。だが、生徒会長は神聖不可侵。なぜわざわざ厄災のそばに近づくことをしないといけないのか。

「きっぱり言うね」

「わざわざ目立つようなことはしたくありませんので」

「でも、この前目立ってじゃん」

「それは……」

 嫌なことを言うな、と思う。誰も好きでやったわけじゃないのに。

「あれは……必要があると思ったからです」

「ふーん、そっかあ」

 会長はどういうつもりで、こんなことを言ってくるんだろう。

「ところでなんだけど、なんかよそよそしくない? 避けられるようなことをした覚えがないんだけど」

 頭脳明晰な会長がそれを分からないなんて。会長にはないかもしれないけど、私には避ける理由がいっぱいあるのです。

「あなたが神聖不可侵の生徒会長だからです」

 王様に従わない者だっているのですよ?

「ああ、それね……。俺はそういうつもりないんだけどな。近づいてきてもらって全然オーケー」

 こっちは全然オーケーじゃないんです。

「遠慮しておきます。会長も、私なんかに構わないで大丈夫ですから」

「えー、気にしないでいいのに」

 こっちが気にする。会長のそばにいるとろくな事がないんだから。

「とにかく、生徒会に入る気はありません。私みたいな一般人じゃ、人をまとめることなんてできませんし、会長の迷惑になるだけです」

「そんなことないでしょ。依子さん、成績はすごくいいし、クラス委員になるほど人望があるわけだし」

 急に下の名前で呼ぶのか……。

 この間の詰め方、どう対応していいのか、私には見当がつかない。他の人ならうれしく思うところなんだろうか。

「勉強なんて自慢になりませんよ。ちょっと頑張れば成績はよくなります。それにクラス委員だって、押しつけられてるだけですから」

「そうかなあ。頑張れるってだけでも、相当すごいと思うんだけど」

 本人には悪気はないんだろうけど、なんか刺さる……。会長にそれを言われると、見下されているように感じてしまう。

「会長には凡人の気持ちなんて分からないと思います。頭がよくてスポーツが得意で何でもできて、自分の周りにはいつも人がいるんだから。気まぐれで凡人に施しをしようとか、思い上がりもいいところです」

 ついに言ってしまった。

 言ってからじゃ遅いのに、猛烈に後悔する私。

「す、すみませんっ! 何でもないです! これで失礼します」

 ドアを開けるが、気持ちが焦って力が入りすぎる。ドアは反対側にぶつかり、大きな音を立てる。

「待って!」

 生徒会室から完全に抜け出したつもりだったが、会長は私のすぐ後ろにいて手首を捕まれてしまう。

「放してください!」

「落ち着いて! 俺は気にしてないから!」

 たとえ会長が許してくれたって、私はここにいられない。

 あれはさすがに人に言っていいことじゃなかった。

 それに、私はイラっとして暴言吐いてしまうような人間だ。生徒会にはふさわしくないじゃないか。

「イヤっ! やめてっ!」

 金切り声に手が放される。

 もう逃げるしかなかった。私は会長の顔をほとんど見ずに頭を一回下げて、その場から逃走し始める。

「し、失礼しますっ!」

 会長にひどいことを言ってしまったのは分かってる。でも、どうしようもなかったのだ……。

 会長がどんな顔をして、私の逃げる姿を見送ったのか想像して、私は何度も何度も心の中で謝った。



 これは罰?

 会長に近づいた罪?

 私がいったい何をしたというんだ。

 いや、最終的にはしてしまったかもしれないけど……。

 これは明らかに粛正という名のいじめだった。

 教室においてはプリントが回ってこない。廊下を歩いていれば肩をぶつけられる。外にいればボールを投げられる。

 会長の家臣たちの忠誠心も見上げたものだと思う。下々の存在である私に構うなんて。

 でも、何も反応せず、じっと我慢していれば、すぐに私のことなんて忘れるだろう。

 なんたって、私はあの人とは何も関係がないのだ。私から近づいたわけじゃないし、私がルールを破ったわけじゃない。

 しかし……粛正はエスカレートする一方だった。

 今日は鞄がない。

 小突かれたりするくらいなら大丈夫だけど、鞄がないのはさすがに困る。鞄には教科書もあるし、何よりサイフがないと帰れない。

 と言っても、こんなイタズラをする人たちは、これを盗難事件とするほどの度胸はないはずだ。盗んだり破棄したりはしてないと思う。

 一番オーソドックスな隠し場所である下駄箱周りを探してみたものが、見つからなかった。

 今回は面倒なところに隠されたのかもしれない。

「一緒に探すよ」

 幻聴だろうか、疫病神の声が聞こえる。

 間違いなくこの者は、神聖にして侵すべからず。決して近づいてはならない。

「結構です」

 誰のせいでこうなってるんだ。ここでまた関わられたら、さらに面倒なことになってしまうじゃないか。

 会長にはひどいことを言ってしまったが、もう十分にその罰は受けていると思う。

「いじめ?」

「違います」

「鞄探してるんでしょ?」

「そうですけど、どこかに置き忘れただけです。だから、私のことは気にしないでください」

「そっか。じゃあ、探すの手伝うよ」

 王様は人の話を聞かない。いつの時代も、どこの国でも、王様はそんなものかもしれない。

「勝手にしてください」

 今は彼の相手をしている場合じゃない。一分でも一秒でも早く、鞄を見つけ出して家に帰るのだ。嫌なことはお風呂に入って、全部洗い流してしまおう。それで明日もちゃんと生きられる。



 植木の茂みに隠されているのではないかと、今度は校舎の外を探し始める。

「ごめん、俺のせいだよな」

「えっ?」

 急に謝ってくる会長に、無視するつもりが振り向いてしまう。

「こんなことになるとは思ってなかった。本当にすまない」

 会長は深く頭を下げた。

「そ、そんな、会長が謝ることじゃ……」

 らしくない会長の姿に、こっちも悪いような気分にもなる。

「野放しにしてた俺が悪いんだ。これはあまりにも行きすぎてるよな……」

 犯人は王に忠実な家臣たち。

 王はその忠心のために心を痛めていらっしゃるぞ。

 しかし、生徒会長にしてみたら、家臣を召し抱えたつもりもないだろうし、王と呼ばれる覚えもないのかもしれない。

「それに生徒会に誘ったことも。ちょっと強引すぎたと思う。君の気持ちを考えてあげられなかった」

 これに関しては私にも反省すべきところがある。私こそすみません、と心の中で謝った。

「……君に興味があっただけなんだ」

「はあっ!?」

 さらなる予測不可能な発言に、思わず大声を出してしまう。

「な、なな、何を言ってるんですかっ!?」

「え? そんなに驚かなくても」

 会長はごく真面目に答えている。

「そりゃ驚きますよ。私みたいな地味な女のどこに興味が湧くっていうんですか。周りには綺麗な子とか可愛い子とかいるじゃないですか!」

「んー、いろいろ? あっ、全部?」

 全部って……適当だな……。

 でも、いつもの調子を取り戻したそのあどけない顔から発せられる言葉は、なんか憎めない感じがする。

「何度も言ってますけど、私はたいした人間じゃありません。とりあえず、会長が気に留めるような人間でないのは確かです」

 会長に暴言を吐いてしまうような人間なんです。

「俺だってたいした人間じゃないよ。できないことはいっぱいあるし。……ほら、朝起きるの苦手だし、洗濯物たたむの苦手だし」

「それ、ダメなうちに入りませんって」

「え、そう? けっこう気にしてるんだけどなあ……」

 会長は本当に分からないふうに首をかしげてみせる。

 それがダメだったら、私はどれだけダメ人間か。まったくこの人は凡人のことを分かってくださらない。

 ちょっとあきれはするが、前ほど嫌な感じはしなかった。



 結局、鞄は生徒会室にあった。

 灯台もと暗しとはこのことだろう。鞄を取っていった犯人も、落とし物を拾ったと嘘を言い張れる場所だったのかもしれない。

 目につきにくいロッカーの上に置かれた鞄を、長身の会長が取ってくれる。

 背高いのっていいなと、ちょっと思ってしまう。

「ありがとうございます、助かりました」

 何はともあれ、鞄探しの旅はお仕舞い。心を揺さぶられまくったけど、会長との付き合いもこれでようやく終わりだ。

 礼を言って手を伸ばすが、鞄は引っ込められてしまう。

 会長のいたずらだ。

「え? ちょっ、返してください」

「返して欲しければ、取り返してみれば?」

 会長は口をほころばせながら、私の鞄を背に隠してみせる。 

 子供かっ!

 なんとか会長から鞄をもぎり取ってやろうとするが、高身長とバスケ仕込みのフェイトで、鞄に触れることすら叶わない。

 何度も挑むが、まったく歯が立たない。そもそも運動神経皆無の私にどうにかできるわけなかった。

「もういいです……」

 意味不明! 付き合いきれない!

 さすがにイラっとした私は会長など無視して帰ろうとするが、そこを後ろから腕を捕まれてしまう。

「ダメ」

 何がダメ、だ。人を何度も引き留めて。

「放してください。私、帰ります」

「嫌だ」

「嫌とかじゃなくて! もう遅いから帰ります! 鞄も返してください!

 これじゃただの甘えんぼじゃないか。神聖不可侵で人望を集める、優等生の生徒会長はどこへ行った。

「……ごめん。ちょっと気を引きたかったんだ……」

「ふあっ!?」

 私の怒りに反応してなのか、急に会長のテンションがダウン。神妙な声に対処なんてできない。

「君には俺のそばにいて欲しいんだ」

「え、ええーっ!? なんですかそれっ!?」

「君みたいに異見してくれるような人が、俺には必要なんだ」

「え、え、え……?」

 そんな告白じみた発言に頭がついていかない。

「あの定例会、俺はちょっと嬉しかったんだ」

「え? 私、会長に恥をかかせただけですよ……?」

「それが嬉しかった」

 あー、王様の考えることは庶民には分かりませんわー。

 恋愛ポンコツ頭は考えることを放棄した。

「みんな、俺の言うことをただ聞いているようで、何も聞いてくれないんだよ。なんなんだろうな、あれ。……でも、君は違った。ちゃんと俺に間違いを指摘してくれたんだ」

「はあ……」

 王ゆえの孤独、というやつなんだろうか。

 完全無欠であるはずの会長の、隠された弱点なんだろうか。

 これに関しては会長の言うことも分からないでもない気がする。みんなは会長をパーフェクトな人間だと勝手に祭り上げて、会長個人のことより、会長のカリスマとか役職とかを利用して、楽をしようとしてるいるだけなんだ。

 面倒なことは避けたい。だから、考えるのはすべて捨ててしまい、会長の好きにやらせてしまおうって。全権限委譲しても、会長がわざわざ問題起こすようなことをするまいと思って。きっと期待に応えようとすごい政策を考えてくれるだろうって。


「気持ちは……分かります……」

「わかるっ!?」

 急に生気を取り戻した会長は、私の両手を掴み、目をルンルンと輝かせる。

「ま、まあ、ちょっとは……ですが……」

「じゃあ、生徒会入って!」

「ちょっ! いきなりそれ! 私が生徒会入る意味ってあるんですか……?」

「あるよ。君を逃がさないために」

「ええーっ!?」

 ストーカー発言にちょっと身震いしてしまう。

「あ、そうじゃなくて。君が君からに逃げないようにだよ」

「私が? 私から、ですか?」

「そう。君はすぐ逃げるから。自分はダメな人間だー、できないー、って遠くから見ていようとする」

 確かに逃げている自覚はある。表舞台にいる人間だと思ったことがないから。

「これは俺のワガママ発言だけど、君はもっとできる人だと思うんだ。自分を見て、相手を見て、ちゃんと向き合えば、どんな問題だって越えられる。できる自分になれる」

「そんなこと……」

 できるわけない。

 私はつまらない人間だから、“なんとなく”やれることをやって、“なんとなく”生きているぐらいが合っている。

 それに、前へ踏み出す勇気なんて出てこない。どうせうまくいかないんだ。分不相応なことをやったところで、誰の得にならない。

「できるよ。今、こうして君の嫌いな生徒会長と立ち向かってる」

 会長は私よりも私のことを知っているのかもしれない。

 そう、私は会長を嫌いなんだと思う。

 それは嫉みだ。

 イケメンで頭脳明晰、スポーツ万能。なんであんなに優れた人間がいるんだろう。一方、私はあまりにも平凡すぎるだ。可愛くないし、特に何ができるってわけでないし、興味があるものもない。

 パーフェクトな会長を見ると、惨めな気持ちが湧いてくるのだ。

 会長が、私とは違う別の世界に住む人間であれば、その存在を許せたのかもしれない。

 私が会長に近づきたくなかったのは、近づくなと言われたからというよりも、惨めな思いをしたくなかったからなんだ。

「だから、大丈夫さ。大嫌いな俺と戦って、強い自分になればいい」

「大嫌いって、会長、自分で言ってどうするんですか……。強い自分になんて、なれますかね……?」

「なれるなれる。誰も俺と戦わないけど、君には俺と戦う勇気があったんだから。さあ、ここが分岐点だ。前に進もう」

 会長はよく微笑んでくれる人だけど、これ以上はないんじゃないか、というくらい優しい笑顔で、私に笑いかけてくれた。

 プリントのミスを指摘しようと思ったのは、今思えば、この戦いの始まりだったのかもしれない。そこには神聖不可侵の生徒会長に一泡吹かせてやろうという気持ちも、もしかするとあったのだろうか。


「15センチ」

 会長が突然つぶやく。

「15センチ……? それが何か?」

「君は俺の15センチ以内にいること」

 近っ! そんな近くにいろって? どういうことなの?

「な、なんで15センチなんですか? 50センチでなく……?」

「手、出して?」

 経験上、嫌な予感しかしないが、言われるままに手を出すと、会長もまた手を出し、私の手を握ってくる。

 この人に何度手を捕まれたことだろう。

「これが15センチ。いつでも相手の手に触れられる範囲」

 手の大きさがだいたい15センチ。会長は、手を伸ばせばすぐ届く広さを言いたいみたいだ。

 いやいや、その距離おかしいでしょ……。

「15センチなんて近すぎますっ! こんな距離で並んで歩いてると、通行の邪魔になっちゃいますよ!」

 絶対不可侵の領域は50センチ。それは通行の妨げにならない広さだ。

 生徒会のメンバーとして、生徒会長の話を聞く分には50センチで十分のはず。

 50センチに入るだけであれだけのバッシングを受けるのに、15センチなんて近すぎる。それに、その距離にいるべき人は……。

「それは大丈夫。こうすれば、ほら」

 腕をぐいっと引き寄せられ、私は会長との距離を失ってしまう。

「ちょっ、ちょっと! やめてください! それって……」

 会長の拘束から逃げようとするが、逆に強く抱きとめられてしまう。

「これで0センチ。ほら、誰の邪魔にもならないだろ? それにここなら、君にぶつかってくるものがいても、俺が守ってあげられる」

 私はとんでもない道に迷い込んでしまったみたいだった。

 この分岐路クロスロード、私はどっちに進めばいい……?







「けっこうです」

「え?」

 私の答えはノー。

 会長はひどくびっくりした顔をする。今のは断られるわけなかったのにという顔。

「どうして?」

「私、会長のこと好きじゃありませんし」

 嘘なんか言ってない。それは会長が自分でも言った通りのことだ。

「……そっか。それもそうだよな。俺の勝手が過ぎたかもしれない……」

 落ち込んでる、落ち込んでる。

 これでちょっとうれしいと思ってなんて、私は女だ。

「私は会長が好きじゃありません。……なので、まずは50センチでお願いします」

 意気消沈し影の落ちた顔から一転、希望にあふれた顔へ。

「それって、オーケーってこと!?」

「はい、よろしくお願いします」

 喜びにあふれた会長が勢いに乗って手を掴もうとするのを、私は容赦なく払いのける。

「え?」

「それはダメです。手が届く範囲は15センチですから」

 私は、神の領域でくr進むべきでない交差点クロスロードへと進むことにしたのだった。

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神聖不可侵のクロスロード とき @tokito

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