B.初めてのクエスト
魔法少女はクエストを達成か、魔獣を退治しないと、新しい魔法を覚えるための容量を手に入れることができない。
咲代と初めて会ってから7日後。毎日魔法発動の練習をしていた咲代はクエストに挑戦したいと邦夫に言った。
「もう実践できる感じなの?」
「もちろん!早くクエストに挑戦して、容量増やさないと。」
最初に挑戦したクエストは、Lv.2の魔獣を倒すクエストだった。もらえる容量は20だった。
「力試しのつもり?」
邦夫は目の前の美少女の意図を聞く。
「そう。魔法使うのだいぶ久しぶりだから、弱い相手とのバトルで少しずつ感覚を取り戻そうかなーって。」
「魔法を使うのが久しぶりってどういうこと?」
「あ、いや!なんでもないなんでもない!」
邦夫は時々昔を思い出すような発言をする咲代の発言が気になっていた。
―――この子には、何か裏があるような気がする。
そんなことを思いながらクエストに向かう準備をしている咲代を見ていると
「どうしたの?そんな深刻そうな顔をして?」
と言ってきた。
「いや、君さ、時々変なことを言うじゃない?」
「変なことって?」
「その、なんていうのかな、昔を懐かしむ、じゃないけど、そんな感じの発言。その理由が気になって・・・」
すると、咲代はステッキを眺めながらこう言った。
「人間さ、知らないほうがいいってことあるでしょ。恋人同士になったからって全てを話す?誰にだってずっと秘めておきたいことってあるじゃない。そういうたぐいのものよ。だから、あまり気にしないで。大丈夫、邦夫くんにとって不利益になることでは決してないから。ただ、知らないほうがいいってだけのことだから。」
「そっか。わかった。」
これ以上、この件について探りを入れるのはやめようと邦夫は思ったのだった。
Lv.2の魔獣なんて、たいしたことないだろうと思った邦夫にとっては、今目の前にいる獣がとてつもなく大きく見えた。
全長約5mはくだらない大きさである。高さはおよそ3mほどだろうか。
「可愛いレベルね。私もこんな程度になり下がったか。」
そういいながら、咲代は「じゃあ、いってくるね!」と笑顔で魔獣退治に向かった。
咲代の魔獣退治の方法は邦夫が想像していたのとは少し違った。
まず、自身にバリアをはりながら、魔獣の様々な箇所に攻撃を加える。魔獣はその攻撃をかわそうとするのだが、そのかわし方を彼女は見るのだ。
今、目の前にいる魔獣は人間でいうところの胃袋辺りに来る攻撃を必死にかわそうとしていた。つまり、そこが目の前の敵の弱点である可能性が高いのだ。
「神よ、そして全能なる白銀の書の主よ、この私に力を与えたまえ。アタック!」
咲代は、その弱点と思われる胃袋辺りに強烈な一打を与えた。
見事命中、あっさりと相手は倒れた。
「ま、Lv.2の魔獣なんてそんなもんね。」
あっさりと最初のクエストを達成し、邦夫の元に戻ってきた。
「お疲れ様!すごいじゃないか!」
「ま、この程度の魔獣は朝飯前よ。」
咲代にとっては、この程度はどうってことなかった。
魔獣が目の前から消えると、邦夫のもとに通知が届いた。容量が20追加されたことの通知だ。
「これで20追加されたんだね。こうして容量を稼いでいって、魔力を増やしていくんだね。」
「めんどくさいけどね、でも今はそういうルールだから仕方ないね。」
「今は、って。長く生きてきた人みたいな言い方するんだね。」
咲代はふぅーと息を長くはくと、邦夫の方を見てこう尋ねた。
「邦夫くん、私どのくらい容量稼げばいい?」
「え、いやー別に具体的な数は考えていないけど・・・無理しない程度には。」
「今はあまりライバルがいない。そして、ゲームも始まったばかり。今しっかり稼いで、つけれる魔法はいろいろつけておいた方がいいわ。邦夫くんはこういうゲーム初めて?」
「うん、あまりやったことはないかな。」
「なら、今の私のアドバイスは忘れないで。こういうゲームはたいてい後半になるとたくさん制約が付く。最初はユーザーを引き付けるために柔軟にいろいろできるゲームに見せる。だけど、利用者が増えればそれだけずるする人も増えるから、細かくめんどくさいルールがどんどん増えるのよ。だから、今のうちに頑張って稼ぎましょう!」
真剣なまなざしで邦夫を見ながら、咲代はそういった。
「これからもよろしく!」
咲代は邦夫と握手をするために、手を差し出した。
邦夫は咲代と固い握手をした。まさか、自分が魔法少女とこんな固い握手をする日が来るとは思いもせず、感無量であった。
「じゃあ、僕はこれで帰るね。明日から学校に通う準備をするから、少しインできなくなるけど、大丈夫?」
「大丈夫。今の私の魔法でできるクエストをたくさんやって、容量を稼いでおくね!」
「オッケー、じゃあまた今度!」
そういって、邦夫は帰って行った。
咲代は、空を見上げた。
「私は・・・もう一度神になって見せる。絶対に、誰にも負けない!」
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