第4話

「ミツキは、ずっと自衛官をめざしてたの。家族に否定されながら、ずっと。」

放課後、ココノが話してくれた。学区にある小さな公園のブランコで揺れながら、僕とショウゴに。


「この歳になると、運動能力とか男女の差が出てくるでしょう。きっと悩み事も多かったんだよ、男子や先生には分からないような。」


うん、僕にはわからない。


「なんで私、相談に乗れなかったんだろう。知ってたのに…。」


それは…。


「ココノは何も悪くねぇよ!間違ってんのはミツキの方だ!」


は?ショウゴは何を言ってんだ?

ココノが悪くないのは同感。でも、ミツキだって…。


「夢諦めたらダメだろ!んなこと少年漫画読んだことある奴は全員知ってる常識だ!…それに。」


なぜ僕の方を見る…?


「こんな可愛げ無い魔法少女が存在する世界で、女の自衛官が否定できるわけねぇ!」


ですよね。…でも、可愛げ無いって傷つく。可愛いって言われたいわけじゃないけど。不思議、不思議。


「ココノ、ミツキの家ってどこ?」

「え?あの茶色のマンションの305号室…。」

近いじゃん。直接伝えてやりたい。




「ジュンヤ君?!」

示されたマンションの階段を3階まで登って、5個めの扉の横のインターホンを押す。

「同じクラスの広瀬です。ミツキいますか。」

「あ、逢坂さんならお隣の…。」

部屋間違えた!超恥ずかしい…。


隣の扉の前に移動してTake2。ちゃんと表札を確認してからインターホンを押す。

「広瀬です。ミツキいますか!」

「…ジュンヤ?」

良かった、ミツキいた。

「音楽の授業の時のことで謝りたいことがあって!」

「…ジュンヤ怒ってる?」

怒ってる。

「何?」


扉を開いて、ひょこっとミツキが出てきた。そこに変身するためのジュエルを押し付ける。

「ミツキが夢を諦めるなら、僕もヒーローやめる。

ミツキが夢を追いかけるなら、僕も戦うよ!邪魔なわけないもん。僕にしか出来ないことがある筈だから!」


「…たとえば?」

え。

「レモン汁だしたり…シャボン玉だしたり…?」

「弱そう。」

うるせぇ!

「ミツキだって強くないじゃん!せいぜい人を元気づけることしか出来ないじゃん!」



「ほんとに…?」


え、僕何か言った?なぜまた泣く?


「私も誰かを元気にできる…?」


「もちろんだよ!」


急に後ろから声がしてびっくりした。ココノ、いつからいたの?もしかして部屋間違えたのバレた?恥ずかしいから忘れてほしいな。


「ミツキはいつも私に元気をくれる。絶対だよ!」

「…そっか。」

はは、とミツキは笑った。

「くだらないことでクヨクヨしてたね。ごめん。」

おぅ…特別なことは何も言ってないのに、何か解決した…。

とりあえず、めでたしめでたし…?

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