第3話「迫られて、放課後」
「ねぇ相野君。あたしと付き合ってみない?」
「いや俺はいいよ。そういうの」
また和人が言い寄られている!
放課後、人のいなくなった教室で、和人はクラスの女の子と二人っきりだった。私は教室のドアに隠れ、廊下から様子を窺う。
相手は
……明らかに和人を誘っているのがわかった。
「いいじゃん。あたし、魅力無いかな?」
「そういうことじゃないっていうか……」
ああもう、きっぱりその気は無いって言っちゃえばいいのに。
和人は告白されたり迫られたりしても、自分から断ることは少ない。
一晩経てば、治まるから。だからとりあえず放っておく。そういうスタンスだ。
でもだめだよ和人。愛ちゃんはそれじゃ引き下がってくれない。
「そういうことじゃないって、どういうこと? なにか問題あるの?」
「問題は……まぁあるけど。とにかく、今日は帰ろう。明日また、な」
「ダメ。今返事してよ」
グイグイ行くなぁ。さすがの和人も困った顔になる。
ていうか……体寄せすぎじゃない? なにあれ、ぴったりくっついて!
「ねぇ……それとも、相野君ってさ……」
愛ちゃんの声が聞こえなくなる。さすがに
「ななななななっ! なんでそこであいつが?! 俺は別に、そういうんじゃなくて!」
突然、ずさささささっと和人が壁に激突する勢いで後ずさった。
ぽかんとする愛ちゃん。私も、教室の入口で固まってしまう。
「ふぅん。じゃあいいや。あたし帰るね」
「えっ? あぁ……」
愛ちゃんがこっちに来る。ばっちり目が合い、隠れるタイミングを失った。
「あ、知奈っち。あとよろしく」
「よ、よろしくって?」
「ばいばーい」
愛ちゃんはあっさり私の横を通り抜け、教室を出て行ってしまう。
「おまっ、知奈……見てたのかよ」
「た、たまたまね。和人、まだ帰ってなかったみたいだから。一緒に帰ろうと思って」
「そ、そうか……」
なんだか気まずい。
告白シーンなんて何度も見てるのに、今回のは、なんか……いつもと感じが違った。よくわからないけど愛ちゃんすごいと思った。
でも最後、どうして和人はあんなに勢いよく離れたんだろう? 愛ちゃんはあっさり引き下がったんだろう?
「……ねぇ和人。最後、愛ちゃんになんて言われたの? 聞こえなかったんだけど」
「えっ?! な、なんでもない。なんでもないぞ。それより早く帰ろうぜ」
「待って、なんでもないことないでしょ? あんなに慌ててたじゃない」
「そう、慌てたんだ。見てただろ? すげー近付かれて……さすがにやばいって思ったんだ」
「確かにやばかったけど……。でも愛ちゃん、なにか言ってた気がするんだけどなぁ」
「なんでもないって。忘れろ」
結局、和人はこの時のことを話してくれなかった。でも……。
『ななななななっ! なんでそこであいつが?! 俺は別に、そういうんじゃなくて!』
あいつって、誰のことなんだろう?
まさか…………。ううん、まさかね。
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