樋口3
「あ、いらっしゃいませぇ」
ㅤサロペットはないだろ。サロペットを着る女に、ロクなやつはいない。田舎以外でサロペット着ていいのは鶴◯師匠だけなんだよ!
ㅤまぁ、私は着るけどな。私は着てもいいだろ。私以外が着たらダメだろ!ㅤ なんてな。まぁまぁ、似合ってるじゃん。私の方がダントツに可愛いけど、こういう女を英世と付き合わせることができたらなぁ。私もバイト辞めなくて済むかもな。
「ねぇねぇ、あの子、可愛くない?」
「バイト中は私語を慎むように」
ㅤうるせぇよ! ㅤ偉ぶってんじゃねぇよ。お前はアレか?ㅤ 私の上司か? ㅤうるせぇよ!
ㅤそれにしても、何だ、あの子。コンビニの中をまるで蛇行運転しやがって。他に客がいないから目立ちまくりだっつうの。ちょっと、注意してやろうか。ついでに、英世をあの子に接近させてあげようかなぁ〜。
「あの子、何買いに来たんだろうね」
「だから、私語は……ん?」
「なんかさ、おかしいよ。もしかして、万引きかな?」
「いや、それはないと思う」
「じゃあ私が、確かめてくる」
ㅤ万引きかどうかなんてどうでもいい。この店の商品がちょっと盗まれたくらいじゃ、私の給料変わらないっしょ。それより、英世お近づき作戦決行だ。
「いらっしゃいませ〜、お客さん、こういう店初めて?」
「は、はじめてではありません……」
ㅤ声ちっちゃっ! ㅤそれに意外とアニメ声なのね。ちょっとうざいけど、私嫌いじゃないよ。
「お客様、何をお選びですかぁ?ㅤ どういったご用件でしょうかぁ」
「あ、あの、ええと」
ㅤうわっ、可愛い。オドオド系女子か? ㅤ急に抱きしめたくなってきた。
「ちょっとちょっと、樋口さん。お客様を困らせてはいけないよ」
「ハァ?ㅤ 困らせてねぇし」
ㅤやっぱり来たな。私がアパレル業界で磨いた接客術で、ちょっと騒がしくしたところにやって来て、さっきのデキる上司みたいなの気取ってみろよ。
「すみません。あたしが悪いんです。あたしが、挙動不審なばっかりに……」
「いえいえ、お客様は何も悪くありません。どうぞごゆっくり」
ㅤおいおい。お前アレか。ビビってんのか。せっかく、お近づきにさせてやろうと思ったのに、ごゆっくりじゃねぇよ。あと、気安く腕触ってんじゃねぇよ!
ㅤハァ。コンビニエンスラブストーリーは突然に作戦は失敗か。と思ったら、何だ?ㅤお茶一つの会計に時間かけやがって。
「金を出せぇぇぇぇぇぇぇっっっっ」
「いらっしゃいませぇ」
ㅤ金なんか、いくらでもくれてやるよ。私に金がキチンと入ってくるならな。
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