樋口2

 ㅤいよいよ私はバイトに向かう。といっても今日は面接だ。昨日の夜に写真はバッチリ撮った。メイクは面接用に抑えめながらしっかり可愛い。


 ㅤ私は学校終わりに、寂れた公園のトイレで着替えとメイクを済ませ、一目散にコンビニへ向かう。ここで働くことがずっと夢だった。そんなわけねぇだろ。


「すみません、面接で来ました、樋口です」

「あれ、樋口?」

「げぇ、英世」

「いつもと何か雰囲気違うな、可愛いな」

「うるせえ、それより面接で来たんだけど」

「じゃあ合格」

「はあ?」

「オレ、ここのコンビニの店長の息子」

「は、マジか?」

「マジマジ」


 ㅤツいてるんだか、ツいてないんだか。もう、コイツが合否を決める権限あるなら、レジの金持っていこうとしても何とかなるんじゃねぇの。


 ㅤなんてな。さすがにそこまではしねぇよ。私も鬼じゃない。コイツと働くのはマジ勘弁だが、働いて働いてキッチリ金をしぼり取ってやる。


 ㅤそして、明日の私は今日より可愛い。ただコイツに惚れられたりしたら面倒だな。それで私は何度もバイト辞めてるからな。美しさって罪だぜ。英世の彼女を見つけてやらなきゃな。

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