新たな災害

そして、今僕は謎の火花を散らしている嫁と妹を慰めている。


「ちょ、二人とも待ってくれいませつめいするから!」


「おにーちゃん私ね、納得できなかったらすぐ潰しちゃう癖があるの」

なにそれこわい……


「あらあら〜怖いわねぇそんな小さい体でなにができるのかしら」


うちの嫁もなぜか体をゆさゆさ揺らしながら挑発してる……微笑んでいるが初めて見る敵対する顔だ。


「アリスとりあえず俺の家にあがってくれ、話はそれからだよ」


「お兄ちゃんがそう言うならお言葉に甘えようかな」


「私は知らない人をあげたくないのだけれど夫の言うことだもの口出しはしないわ」


もう、仲良くしてください……フレイは性格が変わるくらい嫌なんだろうけど。

やりきれない雰囲気のまま我が家で話し合いが行われる。すると家に入るやいなや妹のアリスがはしゃぎ始めた。


「あはは!ものすごい変わったお家だね!こんな家建てるなんて感性疑うよ」


うぐっ……


「そうね、この家はそもそも最愛なる私の夫が将来の事も見越して、一からその【感性の疑う家】を建てたのよ?」


さらに追い討ちをかけてくるフレイに涙目になりながら見つめるが、あいにく目の前に獲物を見つけたウルフのような目になって妹以外見えていなかった。


「と、とりあえず僕の感性の議論はいいとして僕から紹介をしておくよ」


ようやく聞く体制になる二人に簡単な自己紹介と経緯を話した。


「と、いうわけでなにか質問ある?」


「妹となのはわかったわ。もうそこはいいとして、兄妹なのになんで差がこんなにあるの?」


「このひとがお兄ちゃんの奥さんなのはわかったんだけど…なんでこんな美人さんと普通かつ普通のお兄ちゃんが結婚できたの?」


とどちらも返答したくもない痛いところをついてくる。


「お二人、実は僕に隠して知り合いだった?」


「知り合いだったらもっとましな演技するわよ」

「そうだよー、話逸らしちゃダメー」


フレイの質問はともかく、アリスの質問は経緯について話したとき言ったよね?と喉まで出かかったが堪えた。


「まずフレイの質問だけど、僕の場合アリスと違って道場すら通ってない普通の普通なんだよ。剣や魔法、武術と言ったものとは無縁な生活をしてきた。ただそれだけ」


「なるほどね〜物作るのはうまいあたり普通の普通じゃなく、普通の人よ」


フォローかわからないけどありがとう!我が嫁よ!


「え?お兄ちゃんは才能なかっただけなんじゃなくて?」


「ちょ、フレイのフォローそこで潰す!?」

空気の読めない妹…


「じゃあさじゃあさ!フレイさんは私のお兄ちゃんにどうやって結婚申し込まれたの?」


「先に訂正しておくけれどあなたのじゃないわ、私の夫なのだから私のよ。そうね、特別なことをされたわけでもないし、別に普通だったわ」


だんだん人が物に変わってる気がして不安になる。


「私わかるよ!多分君と一緒に幸せになりたいんだ!でしょ?」

え、なんでわかるの?この人怖いよ


「そうだったわね、そもそも場所も裏路地だったし最悪だったわ」


「わ、悪かったよ……事実フレイは滅多に家に出ないからポーションの店から出てくるのを仮宿の窓から見つけた時は奇跡かと思ったくらいで———」


その時家の二階でものすごい轟音が鳴り響いた。フレイにここにいてと言うと、頷きアリスにも一緒にいてもらうように促した。

僕は、慎重に二階に続く階段を上って行く。上から何か降ってくるにしろ、またあのスライムのような魔物かもしれない。


上がりきったその先に広がっていた光景は、闇いや人が立っていた。

全身が凍るような寒さが僕を襲う。


「ん?そこの人間何故ここに来た?」


「そりゃ自分の家にこんな轟音が鳴れば誰でも駆けつけるでしょ」


そうか。と闇に包まれ人の姿しか見えないものがゆらゆらと近づいてくる。近づくにつれさっきの寒さは殺気だと気づく。


「転移しているときに制御するのを忘れていてな、暗殺家業の名が泣くよ」


「あ、暗殺!?それになんで僕の家なんかに転移してきたんだ?」


「あぁそれはな——」


とその刹那、闇がかき消えたのだ。


「いっやぁー本当ごめんね?ちょっと君の家壊しちゃったみたいなんだけど、許して?」


闇の中にいた者の正体は、男性。否女性?

姿格好は少し男っぽいが声や顔の丸みからみて女性にも思えた。そしてそれを見透かしたように話す。

「私ね、よく男の人って間違えられるんだよね。多分君が今疑問に思っていることを言ったんだけどどう?」


「たしかに、さっき言っていた暗殺家業ならその格好は納得がいく、そう暗殺なら姿を隠さなければいけない例えそれが変えられぬ性別であっても」


「ほほーん君なかなか詳しいね。見た感じ私の方が歳上な感じかな?まぁこれも何かの縁だしよろしくね!」


「まぁね、ちょっと昔に本で読んだから。そうだねよろしく……とはならないよね」


そう、闇は消え陽気な可愛い殺し屋みたいな雰囲気の子だが未だに感じている殺気が残っている。


「あちゃーやっぱ隠しきれてないかーこの殺気。私の名前はハザード・アナ、暗殺家業で有名なハザード家の一人娘なんだけどなんせ両親がねー……」


「え、殺気を隠しきれないとか暗殺家業向いてないんじゃ?」


するとハザード・アナと名乗る少女は腰についている小さな袋から見たこともない石を取り出し地面に投げつけた。パリンと音を立てると同時にさっきまで隠しきれていなかった殺気がなくなっていく。


「そうなんだよね〜そのせいで私は追い出されてこの石使ってまたやり直そうと思ったんだけどこれを使うと暗殺者としての資格を失うんだってわかんないけど」


えへへと笑いながら言う彼女がなぜか一瞬のうちに表情が変わった。


「殺気は隠せないけど気配は探れるんだけどなんで【四神】の一人がいるの?」


「へ?しじん?誰それ?」


「剣、弓、魔、武を極めた者の事を指す言葉で、その中の武がなんでいるのかって聞いてるのよ」


武といえばうちのアリスが武術を極めているはず。だけどフレイも、一貴族の娘だけど極めるほどまでは至ってはないだろう———


「武を極めているのは者の名はアルファーフレイ。」


「ッッ!?」


まさかのまさかだった。


「あなた〜どうしたのー?」

一階から聞こえるフレイの声に身構えるハザード・アナ。

これはまずい状況。ここでもしこの子を行かせてしまえばフレイが狙われるかもしれない。それに一緒にいるアリスも。


「どうしたんだ?そんなに身構えてフレイが何かしたのか?」


「……」


ハザード・アナはそのままうつむいて小刻みに震えている。

この子は危険だと判断し、行動しようとした直後。


「あれ?ハザアナちゃん?」


いつのまにか後ろには僕の背からひょこっと顔を出すフレイがいた。


「ちょ、フレイ!ここは危ない!下に降りてて!」


「なんでよぉ〜ハザアナちゃんは……」


フレイが言葉にする前に目の前にいたはずのハザード・アナが消えた。が目の前から消えただけで目的は!


「フレイ姉様ぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


「久しいわね〜ハザアナちゃん」


僕のが振り返るとそこにはキラキラと輝くお花畑が咲いていた。

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【異世界夫婦】 あーや @A-ya21

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