災難はつきもの──

二人で育て始めたルルの実は適した地なら数週間後すぐに成長するというもので、その代わりルルの実が適さない地で育てると一向に芽を出さない。

「あなた、ここの土地はこの実育つの?」

「あぁ事前に種を埋めてみたらすごい勢いで育ってくれたよ」

ルルの実は酸味がやや強く、そのまま食べると顔のパーツが真ん中に寄ってしまうらしい。

そのため、少し煮込んでパンなどのジャムにしたり砂糖を加えてほかの柑橘系と合わせたりする。


「へぇ、ルルの実って食べるとお肌が良くなるってメイドさん達が話してたわね」

「まぁ実際効果はわからないけどね、食べてもいいしこんなに土地が広いんだし売ってもいいと思うよ」


二人で住むには広すぎる土地に未だ家と生活の生命線、川しかない。人が来るような場所でないため人の交流もない。


「フレイ今から僕はルルの実を植えるため少し大きめの畑を作ってくるよ」

「わかったわ、頑張ってね」


そう告げて玄関にかけてあるクワを手に家を出た。ルルの実を貰った後、農具専門の出店で購入したクワは少し特殊な構造になっていて近頃頻繁に現れるようになった魔物のスライム。

昔は、狩りが主流だった頃狩人(ハンター)達が狩りすぎていなくなってしまったという噂がたつほどパタリといなくなってしまったらしい。

それほど強くもなくしかしスライムから取れるドロドロの液体は加熱してサラサラにするとポーションにもなるためお金にもなった。

それでこのクワはそんなスライムを撃退するために農家の人達が考え作り出した農具【パナタ】これは普通の人でも少しの魔力を込めると農具から武器に変わるという便利な機能がついてる。

「えーっとたしかこうかな?」

手しているクワに力をグッとこめる。

「うーん何も反応しない……か。まぁでもこんな所じゃスライムも出てこないだろうしいいか」

変形を諦め畑作りを始める。今どき魔力を感じれるのは魔法使い。剣で戦うのは傭兵と決まっているがそんな人達でもこんな平和な世界じゃ仕事もなく、副業になっている。

「少しでも勉強しとけばよかったかな────っ!?」

目線を少しあげるとそこにはドロドロとした大きい魔物らしきものが目の前に現れた。

スライム──昔、狩りすぎでいなくなったとされたスライム。緑色のドロドロとした気持ち悪い魔物。それほど強くもなく、その素材は色々な面で活用される。

だが今目の前にいるスライムは想像していたものとはかけ離れていた。

「ちょ、でかすぎないかい?聞いた話ではゴブリンすら一撃で倒してしまうって聞いてたけどこれだけでかければ納得だよ……」

このまま放置して逃げるわけにもいかず、戦闘態勢をとる。時間は昼前に近くフレイがフラッと外に出てきては危ないので「フレイ!危ないから家から出てきちゃダメだよ!」と声をかけておく。すると「は〜い」と呑気な返事が返ってきた。

「よーし、魔物と戦うなんて初めてだけど大丈夫かなでかいし、」

「やぁぁぁぁあッッ!!!」

遠くから聞こえてきた叫び声と共に視界が真っ白になる。

「なっ!なに!眩しくて見えない!」

しだいに謎の発光がおさまり視界が戻る。すると目の前にドロドロとした魔物は姿を消していた。

「えへへ!おにーちゃん!どうだった?私の雷脚迅」

そう言って消えた魔物に変わって立っていたのは妹のアリスだった。

「え、お前がやったのか?」

「そうだよ?こっそ……たまたま通りがかったらスライムがいたから倒しちゃった!てへ!」

「てへ!じゃなくてな、なんだ?今のやつ」

「あー【雷脚迅(らいきゃくじん)】かな?これはね〜友達の訓練施設に通っている時に習ったんだけどスライムやゴブリンくらいなら一撃で倒せる技なんだよね!便利でしょ?」

「いつのまにそんな技を……」

「ん?チョー簡単だよ!閃光玉をあらかじめ持っておいて自分は目をつぶりながら投げるのすると、地面に着いた瞬間発光するからそこから一定の距離を置き飛び蹴りをするだけだよ!」

「いや、消し飛んでるじゃん……」

「そこは応用として【火炎脚(かえんきゃく)】を足に纏っておくの、するとあら不思議!」


そう簡単そうに説明する妹のアリス。

「も〜なにあの光眩しすぎてカップ落としちゃったわよ」

眩しそうに家からこっちに向かってくる嫁フレイ。

二人には説明していない事が今目の前で対峙した。

「だれー?この女の人」

「あなた、このちっちゃい子どうしたの?」

「あはは……」

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