農家の事情

水路も完成し、少しは楽になるかと思った。だが一難去ってまた一難。

今度は荒地を整地することに……

家から徒歩5分くらいの場所に農業をするのに最適な空き地があった。

まだ二人暮らしの身からしたら充分すぎるくらいだった。


「フレイ、野菜とか育ててみないか?」

「私運動神経悪いから鈍臭いわよ?」

「大丈夫、大丈夫どちらかと言えば僕もそんなにいい方ではないからね」


フレイは性格と家柄を考えてみればわかるけど自分自身は小さい頃体を壊してから運動がからっきしダメになった……


「そうね〜お買物するのには少し遠いし」

「毎回そんなんじゃ辛いもんね」

「簡単に育てれる野菜や果物ってあるの?」

「基本そういう野菜はないけど果物あるね、手始めにルルの実から育ててみようか」

「なんでルルの実なの?」

「街で仲良くなった農家のおじさんに貰ったんだよ、これは比較的かんたんだーってね」


街でたまたま出稼ぎ(掲示板依頼)を終わらせて一息ついてると、一人の麦わら帽子を被った白い歯が印象的なおじさんと相席になり話した。

最初は強面で自分から行こうとできなかったがそのおじさんは優しく声をかけてくれた。


「にーちゃん、なんだ仕事終わりか?」

「ま、まぁそんなところです……」

「若いのに偉いなぁうちの息子なんて女連れ回して豪遊だなんだで遊んでるわい!

「息子さんモテるんですね」

「いいや、金にものを言わせて女をひっかけてきてる」

「あ、そうなんですか」


おじさんは悲しそうな顔をしながらしみじみとお酒飲むらしきものを飲んでいた。


「最近、あいつが好きだったこの街で有名なアルファー家の娘さんに振られたんだそうだ……」

「……」

「理由はわからないが嫌だの一点張りだったらしいからな、あいつもお気の毒だな……」

「そうですね、またいい出会いあるといいですけど……」


この状況で実は、その娘さんと結婚してるんです!ってなんて言ったら……考えたくもない……

そのころ丁度話も終わり、罪悪感と申し訳なさが混ざり合いながらその席を後にした。


「あ、ちょっと兄ちゃん!」

「はい?」


おじさんに急に呼び止められ袋を渡された。


「これ、持っていきなこんなじじぃの話をなんの関係もない兄ちゃんは嫌な顔せず聞いてくれたお礼だ」

「え、いいんですか?」

「おう!その袋に入ってるのはルルの実って言って中身は黄色だけど外の皮は朱色でもの味はすごく美味いんだ」

「あ、ありがとうございます!」


この後おじさんは簡単にルルの実の育て方を教えてくれた。


「これがこれを貰った経緯かな」

「ルルの実って珍しくはないけど味の良さから好む人が多いから高いお菓子とかに使われてるらしいわね」

「さすがフレイ、よく知ってるね」


ふふんっと胸を張ってドヤ顔をしているフレイは気づいてないだろうけど実は、その情報はもう古く、今となってはお菓子には必要不可欠になっているほど主流になっている。

なぜ間違いを指摘しないか?それは、珍しくうちのフレイが胸を張ってドヤ顔したりうんちくを言ったりしないから見ててかわいい。ただそれだけ──────











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