庭
ここに引っ越してきてかれこれ1週間経つ。
案外悪くない暮らしだな、とは思いつつも不便なところもある。例えば────
「あなた〜お風呂入るから水組んできて〜」
「わかったよ〜」
そう、お風呂を入るのに水がいるためその度に川から水を組まなくてはいけないんだ。
家の横に川があるからといっても何往復するのは流石に腰にくる。
「ねぇ、思ったのだけれどここのお風呂って真横に川が流れてるでしょ?」
「確かに真横だねそれがどうしたんだい?」
「だから、あの止まっている風車から何とか水をこっちに流せないかしら?」
「そうだね、1度試してみるよ」
翌日、隣に付いている風車を動かすため、手前にあるレバーを引く。すると風車が少し降りて川の流れに任せて回り始める。
「さてとここまではいいんだけど、風車を利用して水汲みかぁ……」
暫く考え込みながら回っている風車を眺める。
「んー、この木材使って出来るかもしれないね」
コンコンコンとリズミカルに鉄槌で釘を打っていき水路をつくる。
そしてふと後ろに気配がし、振り返ってみる。
「どーお?順調?はい、冷たいお茶」
「お、ありがとう。まぁ結構歪な形になると思うけど頑張るよ」
「うんうん、じゃあ私は夕飯の支度して待ってるわね〜」
フレイは鼻歌混じりにキッチンに向かった。
水路の件は順調かと思われたが難航し、まさかの釘が無くなるという事件が発生した。
「フレイー、ちょっと街まで釘を買いに行ってくる」
「あ、大丈夫よあなた、釘なら私が閉まっておいたの」
「え、どこに閉まったの?」
「倉庫の中〜」
ふぁーと眠そうな声を漏らしそのまま家の中にもどるフレイ。
温厚な性格だけど危ないものなどはきちんと整理できているらしい……
本人曰く僕が怪我をして欲しくないためだとか。
とりあえず釘の件は解決したため、水路が完成した。
「わぁ!やっとね〜、おつかれさま〜」
「これで楽にお風呂の水を組めるね」
フレイの家柄的にこういう、一から何かを作るなんてことは見たこともなかっただろう。
けどフレイの顔を見る限り驚きと嬉しさが出ているしいい経験なんじゃないかな。
「よし、疲れたし早速お風呂に入って寝ようか!」
「お風呂の前にご飯にしましょう?できてますよ」
「なら晩御飯が先でいいか」
夫婦二人、手を繋ぎ家に帰る。
フレイの両親に報告する前はよくデートとかに手を繋いだりしていた。
だけど結婚して以来一緒にいることが多く繋ぐことがなかったため、結婚初手を繋いであるいた。
「懐かしいなぁ……」
「そうね〜……」
その日の夜は特に何もなく終わった────
「おにぃ……やっと見つけたから……」
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