第5話 最終兵器

目を覚ました時…周りは瓦礫だった。

いや、最初は落石した洞窟の天井の残骸だと思った。

俺は目をこすりながら起き上がる。


ゆう「…ってぇ…」


そして俺は気を失う前のことを思い出そうとしたが落石が頭にぶつかったのかボケやけてすぐには思い出せない。

しょうがないからゆっくりと思い出すことにする。


ゆう「ここは…そうだ。ここは洞窟で…でも落石して…?」


だめだ…思い出せない。

誰かが…そうだ。あいつらだ。明日香に、龍に翠…!


ゆう「どこに行ったん__」


俺はゆっくりと顔を上げ、その目の前の風景に言葉を失う。

目の前には村がある。いや…村"だった"もの、か。

村の周りの木は燃え続け、俺がさっきまであの3人を待っていた御神木ですら大きな炎を上げている。

木造の家は燃え尽きてすすしか残っていない。

人も燃え尽きていて、辺りを嫌な臭いが漂う。


ゆう「嘘だろ…?っ!明日香!龍!翠!どこに行った!?無事なのか!?」


俺は震える足をなんとか動かしその残骸の中を3人を探して歩き回る。

気を失う前…あいつらの様子もおかしかった。

…嫌な予感がする。早く見つけないと…。


と、曲がり角を曲がろうとした時…明日香の声が聞こえる。


明日香「この村には何も無かったねー。全員死んじゃったし」


龍「…でもこれを見つけた。それだけでいいんじゃないか?」


これ…?もしかしてあいつらが持ってた見覚えのないアクセサリーのことか…?

って、アクセサリーなら俺もつけてたか…。

と、俺は右腕に通したブレスレットを見る。少し汚れてはいるものの割れたり欠けたりはしていないみたいだ。


翠「…俺たち、ほんとにここに住んでたのかな」


明日香「何言ってんのー?現に俺らの名前が書いたもの、あったじゃん」


龍「ま、俺たちはそのことを覚えていないわけだが」


覚えていない…?

そうだ…明日香が言ってた。俺やこの村のことを忘れるって…。


翠「…でも俺たちの"恩返し"は終わった。さあ。国を作りに行こう?」


龍「あぁ?なんで国なんだよ。普通に旅とかでよくね?」


明日香「いや、いいんじゃない?国なんて面白そうじゃない」


明日香がそう言って笑顔を見せる。

龍はまだ不満そうな顔をしながらもしぶしぶ頷く。


翠「…うん。俺が国王するから、2人は執事か大臣ね!」


龍「じゃー俺大臣ー。執事なんて柄じゃねえし」


明日香「じゃあ俺が執事か!」


3人が楽しそうに会話をしながら歩き始める。

俺は角に隠れたままそれを見送る…。

そのまま出ていっても何もできない気がした。


俺はその後隣町に行ってブレスレットのことを調べた。そこで一冊の本を見つける。その本には俺のブレスレットの他に3人がつけていたネックレス、指輪、ピアスのことも書いてあり、それは『最終兵器』と書かれていた。

何の最終兵器なのか。それは分からず仕舞いだがこれが武器に変わることや、時に人を狂気に落とすということもわかった。

そして狂気に落とされた者はそれ以前の記憶を忘れるということも…。


俺はそんな3人を助けたかった。

俺との記憶や山探検の約束を忘れたとは言わせない。俺は村を転々とし、情報をもらい、ここまで…『赤羽の国』までやってきた。

そしてやっと見つけたんだ。

どうやって助けるか?そんなの知らない。だけど…助けてみせる。


俺は目の前にいる3人を見て改めて決意をする。


明日香「お茶入ったよー」


翠「よーし!じゃあ話の続きね!」


龍「世間話、のな」


ゆう「…ああ」


俺はその決意をもっと心の奥底に流し込むように入れたばかりのお茶を飲んだ。

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