第57話 えっ、おまっ、どうしちゃったの?


 


 浮遊感がっ、きもっ、気持ち悪いっ。


  --タマがひゅんってする


 しかも背中から落ちてて、向きが変えれないしっ。

 落ちてる先が全く見えないの超絶恐いんだけどっ!?


 おい駄女神は...って、まだ気絶してやがる。

 起きろよっ、こんな距離落ちたら死んじまうぞっ。


  --おいっ!!



「こんな時くらい何とかしろや駄神ぃぃぃ


  ぃぃぁぁぁ


 ぁぁぁ


   ぁぁ

  ァ


    ぁ

  ぁ


   ァ

    」




  --ドフッ

「ふぐぉっ」



 痛ってぇ、くそがっ、っつつ... どこに落ちた?

 って、ぬぁぁぁぁっ!!

    --ゴフッ


「ぐはッ...」


  --ごほっ

 --げほっ


 い、息がっ......。死ぬ、マジで死ぬ。


 よりによって俺の腹の上目掛けて駄女神が降ってきやがった。

 しかもわざわざ鳩尾(みずおち)に直撃しやがって。


 駄女神(コイツ)にトドメさされるとかシャレになってねぇぞ。


   --しかも見た目よりなんか重いし...


 この幼女......中に何が詰まってんの?



「はぁ......」



  --ザザ...


    --ザザザザ...



「......ふぅ」



 風が木の葉を揺らす音がする。

 鳩尾(みずおち)の痛みも若干だが引いてきた。


 ......。



「あぁ...

    生きてる...」



 ちょっと頭が冷静になってきた......。

 どうやら落下死するのはうまく免れらたみたいだな。


 背中には地面の感触があって、木々の隙間からは夜空が見えてる。

 これは、取り敢えずどっかには辿り着いたって事だろう。


 なんか安心したら気が抜けて...。


   --スー

  --スー


「......」



 人の上で気持よく寝やがって。



「はぁ~...

 ......よいしょっと」


  --ベシャッ

「ふぎゅっ」



 取り敢えず駄女神はそこら辺に捨てておくとして。



「しかしいったい何処だ此処?」



 周りは森みたいだし、何かちょっと肌寒いぞ。


  --それに...


「月が3つもありやがる...」



 確実に日本じゃねぇなコレ。

 そうなるとやっぱり魔物とか居るファンタジー的な世界だったりするのか?


 あー...ゲーム知識なんだが。

 今居る夜の深い森とか、どう考えても危険だと思うんだけど。


 何か対策とかした方が良いのか?


  --スー


    --スー


 肝心の説明役は、まだ寝てやがるし。



「おい、起きろや駄女神」

  --むにぃーーー


 おっ? おぉ、こいつのほっぺ、むっちゃ伸びる。



「んぅ...いだっ、いだだだだだだだだっ」


「おっ、起きたか」


「たっ、たひゅひゃ、なにひへんのひょっ!?」


「おぉ、悪い悪い」



  --キッ


 手を放したら凄(すっげ)ぇ睨まれた。



「私の可愛い顔が伸びたらどうするのよっ!?」


「あー...悪かったって」



 そうだよな、こいつの女神っぽいとこって顔だけだもんな。



「むー......む?」



 駄女神は頬を撫でながら顰めっ面で周囲を見渡して......そのまま急に凍りついて動かなくなってしまった。



「どうかしたのか?」


「そ...と?」


「は?」


「たっ 竜也ぁ~...」


  --ガバッ

    --ぎゅっ


 

 えっ? は? 何で急に抱き着いてきてんだ?

 ど、どうしたんだ...おいっ。


 さっきまでと全然雰囲気が違うぞ?


  --豹変されると、めっちゃ恐いんだが...



「え、えっと、大丈夫か?」


「むり...」


「ぉぅふ」



 無理か...そうか、無理かぁ。


 うん。

 俺もそろそろ無理...。


 いや、そんな分かりきった事じゃなくて。



「おい...どうしたんだ?」



 青い顔でぷるぷる震えてるし、本当に調子が悪そうだぞ。

 俺の頼みの綱はお前なだけなんだから、此処で死なれるとガチで困る。



「..とは...なのよ」


「ん?」


「お外は...ダメなの...」



 あー...良く分からん。良く分からんが、こんな状態の駄女神(こいつ)とか調子が狂っちまう。


  --はぁ~...



「ダメって何だよっ!?」


  --ビクッ

「あっ、窖(あなぐら)の外は危ないから...恐いからダメなのっ」



 あー...。もしかしてこの症状、ドワーフ的ななんかか?


 しかし、言葉の最後に『怒鳴らないでょ...』とかボソッと言われるとだな。

 何だか俺が悪い事をした気分になるじゃねぇか。


 かえしてっ! 自分勝手で滅茶苦茶する駄女神を俺にかえしてっ!!



「あ~...もしかして、今まで外に出たこと無いのか?」


「......ある...けど、無理なのよ」


「んー...そうか」



 こりゃ、頼りにはなりそうにねぇや。

 ドワーフ的なもんだと俺には解決策がわかんねぇぞ。


 もしかしてずっとこのままとかじゃねぇよな?

 流石に時間経てば慣れたりとかするよな?


 んー......。


 まぁ兎に角、コイツが復活するのを待ってみるにしても、まずは周囲の安全を確保しねぇとな。

 かと言って無闇に夜の森を歩きまわるわけにもいかんし。


  --どうするか


 .......。



「あっ」



 収納(インベントリ)に何か使えそうな物とか入って無いか?


   --んー これは鉱石か


    --こっちは、錬に作ってやった裝備の余りだな


 ああ...。あのワールドランク装備が作れたのは感動したなぁ...。


 ......。


 っと、それどころじゃなかった。



「おっ これは...」



 『火炎岩』だ。

 よし、これがあれば簡単に火が起こせるぞ。


 この場所の知識は皆無だから確信は持てないけど、火を焚いとけば獣の類は近づいて来ないだろ。


  --まずは焚き火だ


 そうと決まればまず薪を集めないとな。



「よいしょっと...うぉぉっ ととっ」

「竜也っ、もうちょっとだけ、側に居て...」

   --ぎゅっ



 うあー......何か可愛い生物が涙目で抱き着いてきてる。

 何だこれ...。


 ちょっときめぇし、動けん...


 どうする?

 薪が無いと火が起こせねぇぞ......。


 あーいや。

 確か...収納(インベントリ)に木炭とか薪とか入ってなかったか?



「おぉ、あったあった」



 しかもこりゃ、昔狩った獣の肉まであるじゃねーか。

 ゲーム内のアイテムだけどリアルに出せるんだし食えるよな?


 腹も空いてきたし丁度いい、ついでに焼いて食っちまおう。


  --あー......


「おい、駄女神」



 返事がねぇな...ったく。



「おいっ そこの駄女神様、聞こえてるか?」


「えっ... もしかして、私の事? えっ? 駄目? ...神...駄目......女神...」



 あっ、しまった。つい。



「ふふ...ふふふ......」


「あー...いや、その... そう、名前っ、名前をまだ聞いてなかったから」


「名前?」


「そ、そうだ 名前はあるんだろ?」


「......シビス」


「シビ?」


「シビスが私の名前よ」



 

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