第55話 意思が全く通じねぇ...

 






「ちょっと長くなるから、ちゃんと逃さず聞きなさいよっ

 え~っと...そう言えばあんたの名前は?」


「おい、名前も知らんとは、どーゆー事だ?」


「むっ、仕方ないでしょ、魂と状況で選んでるだけなんだから」


  --魂と状況?


「それはどう言う...「あーそこは後で説明するから、ほらっ...先に名前を言いなさい」」



 う、ぐぐ...殴りたい。殴ってもいいかな?

 見た目幼女だけど女神だし、俺よりずっと歳上なんだろ?



「ねぇ、黙ってないで名前を...」


「く、銕(くろがね) 竜也(たつや)だ」



 クッソ、見た目が幼女のせいで殴るのに戸惑っちまう...。



「ふむふむ...竜也ねぇ、変な名前ね」


「ああん?」



 名前教えろっつえから教えたらこの言い草かよ。

 いや、確かに苗字は厨二っぽくて変わってるけど。

 そんな言うほどか?



「私としてはもっとこう...ジョンって感じの顔なんだけど」


「おい、どんな顔だよそれ...」



 って、俺の名前が変だって言ったのは日本名だったからか?

 西洋風じゃないから変だって言ったのか?


 こいつ、言い方が下手すぎるだろ。



「さて、じゃあ説明するわよジョン」


「いや、ジョンじゃねーから」


「あー...竜也か、まぁどっちでも良いわ」


「どっちでも良いって...」



 なら何で聞いたんだよ。



「えーっと、まず異世界に飛ばす理由なんだけど...

 向こうの世界で魔王が復活しそうなのよね、それで勇者召喚が行われるらしいわよ」


「...はぁ......もういい...

 それで何だって? 魔王に勇者召喚?

 何ていうか面白みのない王道な展開だな...」


 そこに俺が勇者として召喚されるって?


  --本気(マジ)か?


 此処でそんな神展開が来るのか!?


 ラノベやらファンタジーゲーム好きな俺にとって、その展開は大好物だぞ!!


 いきなり意味不明な幼女が女神だとか言い出してテンションが下がってたけど、この展開は流石にテンションが上がるぞっ!



「いや、待って待って、竜也が勇者で召喚されるわけじゃないからね?」


「......は?」


「私は勇者召喚に関わる方の女神じゃないから」


「おい、どう言う意味だそれ?」



 異世界で魔王が復活しそうだから勇者召喚で俺が呼ばれたって話じゃねーのか?


 なんだよ『勇者召喚に関わる方の女神じゃない』って...。


 オマエからその役目取り上げたら何も残らないだろ?

 え、マジでオマエ駄女神なの?



「んー...掻い摘んで話すとね

 異世界へ召喚された勇者に能力を付与する女神がいるんだけど

 それが、何があったのかは忘れたけど、力を使い果たしたらしくてね」


「へ...へぇ......」



 なんだろう、こいつの『まったく、駄目な女神ね...』って表情が凄ぇムカつく。



「んで、このままだと勇者にロクな能力が付与出来なくてね

 それでなんか召喚する人数を増やすとかなんとか言ってて


 けど、そんな事しても付与できる能力が更に落ちるだけじゃない?」


「お、おう。そりゃ、一人に付与する力を分散させるわけだしな」


「そうそう、だから弱い勇者がいっぱい召喚されるから...

 それで......

 ええ~っと...あー.....うん

 そ・こ・でっ 竜也の出番なのよっ」


「......は?」


「だから頑張ってねっ!」


  --アレ?


 何か一番大事な部分の説明が無かった気がするぞ?



「あー...いやオマエさ。今、おもいっきり説明飛ばしただろ...」


「あぁー、バレちゃった?」


  --イラッ


 あー...もう、殴りたい。

 いいよな?

 俺、頑張って我慢したよな?



「おいっ」


「あーはいはい、ちゃんと説明するって」


「いや、さっきからしてねーだろ」

「じゃあ続き話すわねー」



 クッソうぜぇ。



「まー、あれですよ...

 実は私、どちらの世界の女神でも無いのよね」


「はあ?」

  --唐突に何だ?


「神々の同盟みたいなものがあってさ、そこの取り決めで助けに来てるだけなのよね。今回はその仲介役ってやつ?」


「あ、ああ」


「で、私が竜也に力を付与するから、向こうで量産される勇者に武器とか作ってほしいのよ」


「は? 武器?」



 んなもん作ったことねーぞ?



「ほら、ドラゴンテイルズ...だっけ?

 あれで色々作ってたじゃない?」


「いや、まぁ、だけどあれゲームだぞ?」


「げーむ? まぁ何か知らないけど、アレと似たような感じで作ってほしいのよ」


「いや、ちょっと待てって」



 似たような感じって言われても、ゲームのスキルが無いと何もできねぇぞ?



「ほら、一人の勇者に強い装備渡したところで、能力がショボかったら勝てない可能性が高いワケじゃない?」


「お、おう」


「けど、沢山の勇者召喚して強い装備つけさせたら、一人くらいは魔王たおせるんじゃない? って話になったのよ」


「え、それだと勇者召喚する必要なくねぇか?」


「......え?」


「いや、強い装備量産して現地人につけさせれば」


「ああ、それね。無理なのよ」


「何でだ?」


「魔王...もとい、魔族はね。魔力を捕食して生きてんのよ」


「へぇ...」


「で、現地人だとその捕食に耐えられないんだけど。アンタの世界だと魔力とか殆ど無いから耐性があるのよね」


「そうなのか?」


「そうなのよ。

 それでね。あっちの世界は魔力で保ってるからね

 魔族がでしゃばり過ぎると滅んじゃうワケ」


「ほぅ...」


「だから、強いのは間引いて世界を安定させる必要があるんだけど

 そこで勇者召喚ってわけで......ねぇ、あんた。ちゃんと聞いてる?」


「ああ、聞いてる聞いてる」


「......ホントかしら? 怪しいわね」


「聞いてるから、続きを話せ」



 単にオマエが急にちゃんと説明始めたから警戒してるだけだ。



「それで?

 俺に武器を大量生産してこいと?

 悪いが無理だ」


「大丈夫大丈夫、ちゃんと私が能力を付与してあげるから!

 こう見えても女神族になる前はドワーフだったのよ」


「ドワーフ?」



 いや、それ以前に女神族てなんだ?



「そうよっ!

 だから、鍛冶の事なら任せなさい」


「お、おう...」



 ......。


 え、えーっと......うん。


 こいつの話し相手として、俺は十分頑張ったよな?

 もう語るだけ語りきっただろうし......。

 


「なぁ、話しは聞いたし、その申し出には断るから

 そろそろ帰りたいし元の世界に戻してくれねぇか?」


「じゃあ早速、能力を付与するわよっ」

「おいっ、勝手に話を進めんじゃねぇよ!!」


 

 

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