第54話 駄女神と、もう1つのプロローグ

 


 ◇ ◆ クロガネ視点 ◆ ◇




「ぱんぱかぱーん、貴方は異世界へと旅立つ事になりましたぁっ!!」


「は? はぁぁっ!?」



 えっ、なに此処、白っ。


 気が付けば俺は、見渡す限り真っ白な空間に一人ポツンと突っ立っていた。


 そして目の前には...。



「いやいやいやぁ、あんた好きでしょ異世界?」



 なんか凄い馴れ馴れしい幼女が、『あらあら奥さん』みたいなノリで話し掛けてきてるんだが。



「いや、ちょっと待て、何だ此処っ」


「ここ? ここは世界と世界の中間にある空間よ?」



 いや、そんな『知らないの?』みたいに小首を傾げられても知るわけねぇだろ。


 こいつアホか?



「全っ然わかんねぇんだが?」


「むぅー...。その辺りの説明は難しいからしたくないのよねぇ」


「おい、どう見ても御前が元凶だろうが! 説明を放棄すんじゃねぇ!!」


「えぇ~......」



 くっそ駄目だ、なんだこの幼女は。

 全く会話になんねぇぞ...。


 仕方ない、コイツはアテになんねぇから、他に状況が掴めそうなものを探すしか...。


 って、おい...。


 幼女と俺以外何もねぇじゃねぇか!?


 待て待て待て、慌てるな。

 慌てるにはまだ早い...よしっ。


 こうなったらもう自分の記憶だけが頼りだ......。

 思い出せ、何でこんな事になってやがる!?



 確か、帰り道で...そう、『刀』を拾ったんだよ...。

 俺が長年やり込んでた『ドラゴンテイルズ』っていう、VRオンラインゲームの超レア武器と同じデザインの凄(すっげ)ぇカッコイイやつ。


 それで思わず拾い上げて...んで、正面を向いたら...この真っ白な空間だった、と。


  --わっかんねぇぇぇぇっ



「あーキミキミ、多分『どうしてこんな事にー』って感じで悩んでるんだろうけど、考えるだけ無駄よ」


「おい...どーゆー意味だよそれ」


「いや、だってもう異世界に行く事は決まっちゃってるし」


「何でだよっ!?

 っていうか異世界ってなんだよっ!」


「いやー、そっちの世界の神様と契約してあってさー、スワップ契約って言うの?

 あっちの世界に問題があったら、そっちの世界と色々交換できるって感じのヤツよ」


  --意味わかんねー


 それに神様とか言われても......んっ?



「えっ、待て、もしかしてオマエも神様なの?」


「むっ、失敬な、どうみても女神様じゃないのよっ!」



 何も無い胸を付き出して、ドヤ顔で幼女が言ってくる。


 このちんちくりんが? は? 女神様? 本気(マジ)で?



「ねぇあんた、何か失礼なこと考えてるでしょ?」


「いや、だって...ほら、普通は女神様って言うともっと胸があって、それで美人で優しくて...」



 こいつはどうだ? 金髪ロングで碧眼なのはとても良いとして、胸は絶壁で性格は残念ときてる。

 身長なんて俺の胸より下じゃねーか。


 唯一神様っぽい部分と言えば、身に纏ってる純白のローブだけだろ。



「なっ、私だって美人よっ!? 胸は...胸は確かに無いけど...。

 そ、それに、優しく接してやってるじゃないのよっ」


「あー...わかったわかった、百歩譲って女神だとしてだ

 それなら優しくとかいらんから、もっとちゃんと説明してくれ」



 正直頭が混乱を通り越してしまって、この滅茶苦茶な状況を無条件で受け入れてるくらい説明が不足してる。

 もうこの際コイツが女神とかはどうでもいい、今の状況を的確に詳しく教えてくれ。



「ぬー.......なんか納得いかないけど...仕方ないかぁ」



 いや、仕方ないって...もしかして俺が渋(しぶ)らなかったら、そのまま異世界に送り飛ばすつもりだったのかコイツ?


  --危なすぎるだろ



 

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